米韓首脳会談は終わりましたが、アメリカ合衆国と韓国の交渉はまだまとまってはいません。一応15%で妥結した――とはなっているのですが、それでFIXしたという確認がとれません。
文書化もされていないのですが、韓国大統領室は「文書化する必要もないほど素晴らしい妥結だったということだ」と「ナニ言ってるんだお前は」な世迷言を述べています。
米韓の貿易条件がFIXしないと(不透明なママでは)、貿易黒字1本で食べている韓国経済が安定などするわけがありません。
2025年09月01日、『韓国銀行』が興味深い論文を出しました。
「合衆国の貿易政策の不確実性がわが国の成長に及ぼす影響」というタイトルです。
あくまでも筆者の想像ですが、これは『韓国銀行』李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の「政治家は何をやっとるんじゃ」という怒りの表明です。
外交交渉は中央銀行の寄与できるところではないので、「お前らが合衆国と交渉してうまく結果を出さないと、ウチの国は傾くんだよ」と怒鳴りつけたい気持ちではないでしょうか。
念のために書きますが、もちろんこの論文は李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が書いているわけではなく、経済モデル室の手に成るものです。

↑2025年09月01日にリリースされた「合衆国の貿易政策の不確実性がわが国の成長に及ぼす影響」という論文。『韓国銀行』公式サイトの「BOKイシュー」のコーナーに上がっています。
注目したいのは(結論めいた部分は)以下です。
(前略)
3.合衆国の関税政策の不確実性がわが国の成長に及ぼす影響合衆国の貿易政策の不確実性ショックがわが国経済に対して及ぼす影響の分析結果を見ると、実際の関税賦課の有無とは別に、関税政策の不確実性ショックは、わが国のGDP成長率を2025年0.13%ポイント、2026年に0.16%ポイント程度低下させる効果があると推定された。
GDPの構成項目別では、純輸出の場合、不確実性ショックが発生した初期には、将来の関税引き上げに備えた前倒し出荷(front-loading)に支えられてわが国の輸出が一時的に増加するが、合衆国の輸入需要が次第に鈍化するにつれて、不確実性ショックの否定的影響がタイムラグを伴って可視化される様相を示した。
企業投資は、今後の関税賦課による期待資本収益率の低下および不確実性による意思決定の遅延などによって減少することが示された。
家計も高い対外不確実性に直面して予備的動機が強化され、消費を減らすことが示された。
(後略)『BOKイシューノート No.2025-23』より引用
重要なのは「関税が賦課されるかされないかにかかわらず」という部分です。
関たとえ税が課されなくても、政策の不確実性によってマイナスの影響が出るといっています。

GDPを構成する、
・純輸出:タイムラグを伴うが否定的影響が出る
・企業投資:低下する
・家計:消費を控える
3つの要素が低下します。「決まらない」「先行き不透明」というのが一番駄目なのです。
損の金額が明確になった会社の株価がそれによって上昇したりするのは、「これだけ膿を出せばOKってことね。なら後は上がるしかないでしょ(本業は大丈夫なんだから)」といった判断が成立するからです。
残っているのは「政府支出」だけですから、李在明(イ・ジェミョン)さんの「728兆ウォンの政府支出だー!」という無茶苦茶なプランにも、ある程度は「理」があります。
何度もご紹介しているとおり、民間で金が回らないときは、政府が支出を増やして金を回す――というのは間違っていません。
韓国の場合、どの政権でもそうですが、「ここだ!」といってお金を突っ込んで成功したことが、ついぞないことです。
李明博(イ・ミョンバク)の「海外で資源開発だ」、朴槿恵(パク・クネ)の「グリーン革命だ」、文在寅の「クリーンエネルギー政策だ」などなど、巨額を突っ込んでは、バットとボールが30cm以上離れていました、かすりもしませんでした――みたいな話ばかりなのです。
李在明(イ・ジェミョン)さんは「AIだー!」といっています。
この韓国大統領の思い込んでは都度都度外す――はひとまず置くとしても、今回の『韓国銀行』の論文が絶叫しているのは、「合衆国との交渉をFIXさせてくれ」です。
これこそ政治家がしなればならない仕事です。
李在明(イ・ジェミョン)さんも韓国内相手なら「姿勢を示す」だけでガラがかわせたかもしれませんが、残念なことに相手はあのトランプ大統領です。
姿勢を示すだけでは納得などしません。韓国に対しては、結果が出るまでぶん殴ればいいのだ――ぐらいの扱いをしています。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁こそやきもきしているかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)






