こういうところが李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁率いる『韓国銀行』の「良き」ポイントです。
韓国でも暗号資産への投資が熱くなっています。しかし、2025年10月27日、『韓国銀行』がPDFで157ページにも及ぶ「デジタル時代の貨幣、革新と信頼の調和:ウォンステープルコインの主な問題と対応策」という文書を公開しました。

↑『韓国銀行』が公表したうんざりするほど長い文書の表紙。
ずいぶん前にご紹介したことがありますが、ステーブルコインというのは、法定通貨(ドル、ユーロ、ウォンなど)や資産(金など)に常に1対1で連動することを企図して設計された暗号資産です。
代表的な暗号資産「ビットコイン」のような価格乱高下を避け、決済や送金で安定した価値の移転手段を提供すること――を目的としています。
普通は、発行主体が準備資産(銀行預金・国債など)を保有して投資家がコインと法定通貨をいつでも交換できるようにする――のですが、目論見どおりうまくいくとは限りません。
裏付け資産まったくなしで発行された(アルゴリズム型)ステーブルコイン「ルナ」がどのような事態を引き起こしたのかを知れば、懸念しすぎということはありません。
2022年05月09日に暴落が始まった「ルナ」は、12日にはその価値がほとんどゼロになったのですから。

現在、ウォンと連動したステーブルコインも登場しています。例えば、2025年09月には韓国企業『BDACS』が「KRW1」というステーブルコインをローンチすると発表。
この「KRW1」は、五大銀行の一つである『ウリィ銀行』が保有するウォンで担保される――としています。
問題なのは、韓国にはステーブルコインに対する法的規制がまだ明確ではないことです。
さらには韓国大統領に成りおおせた李在明(イ・ジェミョン)さんが、「デジタル金融の時代における金融主権を強化する」(意味不明な主張です)として、ウォンに連動したステーブルコイン市場の形成を支持している――という点です。
李在明(イ・ジェミョン)と愉快な仲間たちによる独裁が進む韓国で拙速にステーブルコインがどんどん発行されるようなことになったら……。
『韓国銀行』が大部の文書を公開したのは「規制しないとマズいぞ」と表明したものと見られます。
『韓国銀行』はこの文書の中で以下のように指摘しています。
1.技術より「信頼」が大事だ!
ウォン建てステーブルコインは「技術の問題」ではなく「通貨への信頼の問題」と評価。したがって、非基軸通貨であるウォン基盤のステーブルコインが広く使われるには本質的な限界がある、と指摘しています。2.発行直後の「高収益」を警戒!
市場の期待が高いほど初期発行量が膨らみ、準備資産(主に銀行預金・国債)運用益や発行手数料が発行主体に集中しやすい。実例として「テザー」の高収益性を引用しています。3.利用面での必然性は極めて限定的である!
韓国は24時間決済インフラや相対的に低いカード手数料が既に整備済みで、国内決済の効用面でステーブルコインの上乗せメリットは小さいとの見立てています。4.「ドル置換」論を否定!
一部でステーブルコインはドルに置き換わる存在になるのでは――という期待が語られますが、『韓国銀行』はきっぱり否定しています。インフレが極端な国で生じる「通貨代替」の特殊な事例を過度に一般化すべきでない――ということです。5.市場構造の現実はウォン建てコインを否定する
世界のステーブルコイン市場は圧倒的に米ドル建てが主流で、ユーロすら極小シェアという事実認識を前提に、ウォン建ての国際的普及には非常に懐疑的――としています。
指摘はどれももっともで、さすが李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁率いる『韓国銀行』というところです。
『韓国銀行』は去る06月の『金融安定報告書』でも、ディペッグ(連動の崩れ)の頻発やステーブルコイン由来のリスクを整理しています。今回の報告書はその論点をウォン建て発行の是非・設計論につなげ、より明確に具体化したものといえます。
簡単にまとめると、『韓国銀行』は「ウォン建てのステーブルコインなんか発行しても発行体がもうかるだけでリスクばっかだぞ。ニーズもないし」と言っているのです。
さあ、李在明(イ・ジェミョン)と愉快な仲間たちはそれでも前進するでしょうか。
韓国にはもったいないほど切れ者の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の言うことは、素直に聞いた方がいいと思われますが……。
※アンカーが「やめようよ」としていますが正確には「やるなら条件を極めて厳しく」といえます。現在の韓国ではそれが整っていないので「やめようよ」という提言だともいえます。
(吉田ハンチング@dcp)






