韓国政府が輸出企業を呼んで「頼むからドル売り・ウォン買いを行ってくれ」⇒ ウォン安を止めるため。

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2025年11月18日韓国の企画財政部が興味深いプレスリリースを出しました。

「輸出企業懇談会を開催した」という文書で、普通なら「あ、そう」で済むのですが、この中に見過ごせない文章があります。

一応以下に全文和訳しますが、面倒くさい方は次に小見出しまで飛ばしてください。注目ポイントを強調文字にしましたので、そこだけご覧ください。

<主要輸出企業懇談会 概要>

日時・場所:’25.11.18(火)15:00~16:00、政府ソウル庁舎 光化門ホール
出席者:
(企画財政部)副首相兼企画財政部長官、次官補、国際経済管理官など

(企業)『サムスン電子』、『SKハイニックス』、『起亜・現代自動車』、『ハンファオーシャン』、『ポスコホールディングス』

具潤哲(ク・ユンチョル)副首相は、今年の厳しい対外環境の中でも、企業の努力のおかげで全体的輸出が回復の流れに入ったと評価し、関税協商に伴う対米投資*推進の過程でも企業と緊密に疎通し、国益と企業に役立つ方向で投資が行われるよう努力すると述べた。

11月14日、相互関税および自動車品目関税引下げ、今後の半導体・医薬品関税賦課時の優遇措置など、合衆国側との合意内容を明文化した共同ファクトシートを発表し、3,500億ドル規模の対米戦略投資に関する覚書(MOU)に署名
⇒2,000億ドルの対米投資のための基金新設に関する特別法制定を推進中

具潤哲(ク・ユンチョル)副首相は、最近、構造的な外貨需給改善のため、主要需給主体である輸出企業と協議しながら為替レート安定を推進する計画であるだけに、出席企業に今後の緊密な協力を要請した。

出席企業もまた、為替市場の安定が円滑な企業活動に役立つという点で意見を同じくし、今後行われる協議に積極的に参加することにした。

出席者らは、最近の厳しい対外環境にもかかわらず輸出企業が善戦している状況の中で、我が国経済の競争力維持のためには、輸出利益を国内へ還流・投資し、生産性向上へとつなげる好循環構造が円滑に機能するよう力を合わせるべきだという点でも意見が一致した。

最後にク副首相は、輸出企業の競争力強化のため、来年度の輸出支援予算を大幅に拡大(’25年1.6兆 ⇒ ’26案4.3兆ウォン)し、FTAネットワーク拡大およびグローバルサウス協力強化など輸出多角化方案も用意する予定であり、自由な企業活動のために規制合理化方案も関係部処と共に積極的に推進すると述べた。

⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「輸出企業懇談会を開催」

輸出企業に要請した「協力」は何を意味してるか?

問題は「構造的な外貨需給改善のため、主要需給主体である輸出企業と協議しながら為替レート安定を推進する計画であるだけに、出席企業に今後の緊密な協力を要請した」――となっています。

ふんわりした文章で、「何を」要請したのか、具体的な中身がよく分かりません。

「構造的な外貨需給改善のため、主要需給主体である輸出企業と協議しながら為替レート安定を推進する計画」とは何なのでしょうか。

これは先にご紹介した「韓国通貨危機時に迫る水準でウォン安が進行している」ことと関係しています。いや、関係しているといった生易しい話ではありません。直結しています。

何を輸出企業にいっているのかといえば、

輸出企業よ、ドルをもっと国内へ持ってこい。
 ドルをウォンに両替しろ

――です。

つまり、輸出代金として入手したドルをウォンに両替して(ドル売り・ウォン買いを行って)、ウォン売りの結果のウォン安進行に対抗しろ――という要求です。

要求というか恐らく「命令」だと思われますが、それだけウォン安進行に抵抗する手段が必要な局面だというわけです。

だからこそ輸出でもうけている大企業ばかりを呼んで懇談会を開催したのです。

ちなみにドルが入ってこないとウォン安が進行する理由はこうです。

1.韓国はドル需要の多い経済構造
2.ドルの主な供給は輸出企業
3.企業が外貨を国内へ持ち込まない=市場にドル供給が減る
4.ドル不足が発生
5.為替市場で「ドルが高く、ウォンが安く」なる(需給の結果)
6.さらに韓国銀行の介入が必要になり、外貨準備が減る
7.市場は韓国のドル不足を懸念し、またウォン安へ
⇒ この構造によって悪循環のスパイラルが発生する。

経済大国みたいなド偉そうな態度をしますが、実は全然そんなことはなくて――韓国というのは金融的にはとてももろい国なのです。

(吉田ハンチング@dcp)

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