2026年08月19日、中国外交部の部長、王毅さんが訪韓し、中韓外相会談が行われました。

以下に韓国の外交部が出したプレスリリースを全文和訳します。
韓中外相会談および夕食会の結果
― 11月の深圳APECを前に、韓中関係の全面的な回復の成果履行を点検 ―
【関連国政課題】119.国益中心の実用外交による周辺4カ国との関係増進趙顕(チョ・ヒョン)外交部長官は08月19日(水)18時15分から22時15分まで、韓中修交記念日(8月24日)を前に韓国を公式訪問した王毅(WANG Yi)中国共産党中央政治局委員兼外交部長と会談および夕食会を行い、韓中関係や朝鮮半島問題など、相互の関心事について意見を交換した。
趙長官は、両国首脳の相互国賓訪問を通じ、韓中関係の全面的な回復の流れが確固として定着したと評価し、こうした関係発展の流れが両国国民の暮らしに実質的に寄与できるよう、各分野の後続措置を着実に履行していこうと述べた。
また趙長官は、韓国政府が昨年のAPEC議長国として、11月の深圳APEC首脳会議の成功裏の開催を積極的に支持するとし、APECを機とするハイレベル交流に向けた準備も本格的に開始していこうと述べた。
王部長は、両国首脳の相互国賓訪問を通じて首脳間で共通認識を形成し、これを基礎として韓中関係が安定的かつ持続的な改善・発展傾向にあると評価した。また、中国側としても、大統領が今年11月の深圳APEC首脳会議に出席する際の首脳間会談を積極的に検討しているとし、そのために共に努力していこうと述べた。
また、王部長は趙長官の中国訪問を招請し、趙長官はこれに謝意を表し、双方にとって都合のよい時期に訪中する案について外交ルートを通じて協議していこうと述べた。
趙長官は、両国間の政治的信頼を強固にし、韓中間の水平的な経済協力を引き続き発展させていくと同時に、今年、両国間の人的交流規模が1,000万人を突破すると予想される状況において、両国国民の友好的な接点を拡大するための努力も引き続き傾注していこうと述べた。
特に両長官は、来年の中韓修交35周年を共に意義深く記念し、両国関係が飛躍する契機としようとした上で、
▴中韓FTAのサービス・投資交渉
▴サプライチェーンの安定化
▴パンダの導入
▴人的・文化交流
▴中国国内の独立運動史跡の管理・保存などの分野における協力を強化していくことで意見が一致した。
趙長官は、黄海問題などの事案について韓国側の原則的な立場を伝え、双方の主要な関心事に対する相互尊重が重要である点を強調するとともに、中国国内にいる韓国国民の安全および権益保護に向けた中国政府の努力も要請した。
一方、趙長官は、韓国大統領が光復節の祝辞を通じて明らかにした朝鮮半島の平和共存に向けた青写真を紹介し、朝鮮半島の非核化と平和実現に向けた韓国政府の努力について説明するとともに、北朝鮮の早期の対話復帰に向けた中国の建設的な役割を要請した。
王部長は、中国の朝鮮半島政策は一貫性・安定性を維持しているとし、朝鮮半島の平和・安定に向けた建設的な役割を引き続き果たしていくと述べた。また、南北が平和共存の道を歩むことを願っており、朝鮮半島の持続的な安定と発展を祈念すると述べた。
さらに両長官は、最近の地域および世界情勢についても幅広く意見を交換した。趙長官は特に、域内諸国が政治・経済的に緊密につながっている状況において、互いに尊重し協力しながら、共通点を見いだすための努力を重ねていく必要がある点を強調した。
趙長官は、最近の朱鎔基・元中国国務院総理の逝去について、遺族と中国国民に深い哀悼と追悼の意を表した。
⇒参照・引用元:『韓国 外交部』公式サイト「中韓外交長官会談と晩餐結果」

この時期にわざわざ王毅さんがなぜ朝鮮半島くんだりまで出張?――なのですが、韓国外交部の説明によれば、11月に中国・深センで行われるAPEC首脳会議の露払い――ということになっています。
「パンダの導入」なんて項目も挙げられていますが。
中国側のプレスリリースではこうなっている
一方、中国外交部が出したプレスリリースには何と書かれているでしょうか? 同じように全文和訳します。
2026年8月19日、中国共産党中央政治局委員、外交部長の王毅はソウルで韓国の趙顕(チョ・ヒョン)外交部長官と会談した。
王毅は次のように述べた。
中国と韓国は海を隔てて向かい合っており、本来、頻繁に交流し、相互信頼を増進し、協力を深化させるべきである。
昨年末以来、習近平主席と李在明(イ・ジェミョン)大統領は相互訪問を成功裏に実現し、中韓関係の今後の発展について重要な共通認識に達し、両国関係に戦略的な方向性を示した。中韓関係は現在、両国首脳が示した方向に沿って、引き続き改善・発展している。
現在、世界では100年に一度の大変動が加速しており、特に今年に入ってから国際情勢は激しく動揺し、局地的な紛争が激化・拡大している。
これは世界の産業チェーン・サプライチェーンの安全に打撃を与えているだけでなく、地域の平和と安定にも悪影響を及ぼしている。
中国と韓国は、永遠の友好的な隣国、長期にわたる協力パートナーとして、戦略的な視野を示し、両国の長期的な発展と両国国民の根本的利益を見据え、二国間関係の健全で安定した持続可能な発展を確保するよう努め、両国国民により多くの幸福をもたらし、地域の平和と発展により多くの貢献をすべきである。
韓国側が自国の根本的利益に立脚し、独立自主の立場で、相互に矛盾することなく対外関係を発展させることを希望する。
あと数日で、中国と韓国は国交樹立34周年を迎える。
中国側は韓国側と手を携えて努力し、初心を忘れず、時代とともに前進し、中韓戦略的協力パートナーシップを新たな段階へと押し上げ、新たな展望を切り開くことを望んでいる。
双方はハイレベル交流を維持し、来年の中韓国交樹立35周年記念行事を成功させ、中韓関係に新たな内容を加えるべきである。
王毅は次のように述べた。
中韓の経済・貿易協力は良好な基盤を有し、すでに深く融合した利益共同体となっている。
中国の超巨大市場は韓国に「水辺の楼台は先に月を得る(近い者ほど先に利益を得られる)」という巨大な機会を提供している。
双方が協力のパイを絶えず大きくし、従来型の生産能力協力を高付加価値協力へと高度化させ、人工知能(AI)、グリーントランスフォーメーション、デジタル経済、ハイエンド設備、シルバー経済など、新たな協力の成長分野を開拓し、中韓自由貿易協定(FTA)第2段階交渉を加速させ、互恵・Win-Winの構図を深化させることを希望する。
青少年、メディア、スポーツ、シンクタンク、地方などの分野における交流を引き続き着実に実施し、両国関係を支える国民感情の基盤を絶えず改善していく。
国際・地域問題における協調・連携を強化し、地域の平和と安定を守り、より公正で合理的なグローバル・ガバナンス体制の構築を推進する。
中国側は、今年、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳非公式会議を主催することを契機として、韓国を含む各国・地域と手を携えてアジア太平洋共同体を構築し、国際社会に前向きなシグナルを発し、アジア太平洋、さらには世界の平和と発展に新たな原動力を注入することを望んでいる。
趙顕(チョ・ヒョン)は次のように述べた。
韓中両国首脳による相互訪問の成功により、韓中関係の全面的な回復の勢いが強固なものとなった。
韓国側は、国交樹立以来堅持してきた「一つの中国」政策を一貫して堅持しており、中国側とハイレベル交流を緊密にし、韓中関係があらゆる分野で絶えず改善・発展するよう推進することを期待している。
李在明(イ・ジェミョン)大統領が今年11月に深圳を訪れ、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳非公式会議に出席すること、および来年の両国国交樹立35周年を契機として、ハイレベル往来をさらに緊密にし、経済・貿易、先端技術、人工知能(AI)、青年などの分野における交流・協力を深化させ、自由貿易協定(FTA)第2段階交渉を加速させ、両国国民の友好感情を増進し、中国側と多国間問題における意思疎通と協調を強化し、韓中戦略的協力パートナーシップをより高い段階へと発展させることを期待している。
双方はまた、共通の関心を有する国際・地域問題について突っ込んだ意見交換を行った。
王毅は質問に応じて朝鮮半島情勢についての見解を紹介し、中国側の一貫した原則的立場を説明した。
その上で、中国は責任ある大国として、外交政策の一貫性と安定性を維持しており、常に朝鮮半島の平和と安定のために建設的な役割を果たすことに尽力していると強調した。
また、韓国と北朝鮮という二つの国家が徐々に平和共存へと向かい、最終的に朝鮮半島の長期にわたる平和と安定が実現することを歓迎すると述べた。
⇒参照・引用元:『中国 外交部』公式サイト「王毅同韩国外长赵显会谈」
面白いことに、こちらには「パンダの導入」は書かれていません。
「中国側は、今年、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳非公式会議を主催することを契機として、韓国を含む各国・地域と手を携えてアジア太平洋共同体を構築し……」などと書いていますが、要するにアメリカ合衆国の動きに対する牽制です。
合衆国サイドに立つなと言っており、「中国と韓国は、永遠の友好的な隣国、長期にわたる協力パートナー」と虚言を弄しています。中国と韓国は、古田博司先生のお言葉を借りれば、歴史的には「なさぬ仲」というのがホントのところ。
平気で裏切りますし、その後も平気で関係が継続します。
トランプ大統領が「2026年中」に北の金ちゃんファミリー三代目と会う――と言い出していますので、中国・韓国ともに衝撃に備えています。
王毅の08月19~20日の訪韓については、07月30日の段階ですでに中韓両政府が日程を最終調整していることが報じられていました。
そのため、そもそもこの会談は「深圳APEC」についてを主題として設定されたものでしょうが、トランプ大統領の発言が揺さぶりました。
両国共に「合衆国 – 北朝鮮」のダイレクトラインで物事が決まってほしくないわけです。これはもちろん日本も同じですが……。
中国が知りたいのは、恐らく次のような点です。
1.トランプ大統領は韓国政府に何を伝えているのか
2.米韓演習縮小は一時的措置なのか、米朝交渉のための本格的譲歩なのか
3.李在明政権はトランプ―金正恩直接交渉をどこまで把握しているのか
4.米朝会談が実現した場合、韓国はどのような役割を務めるのか
5.11月深圳APECと米朝首脳会談が結び付く可能性があるのか
現在は、米韓の溝が深まっている状況ですので、トランプ大統領および政権の動きを韓国政府がつかんでいるとも思えませんが、中国としては「何か知っているなら教えてくれ」と確かめざるを得ないでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)







