2019年07月01日、日本政府は韓国に対しての輸出管理強化を打ち出し、「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」という半導体産業にとって重要な素材となる3品目について包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め、輸出審査を行うこととしました。
明日が07月01日で、輸出管理強化1年となることから、韓国メディアの多くで「韓国は日本の輸出規制に負けなかった」と自画自賛の記事を掲載しています。
果たして本当でしょうか?
「フォトレジスト」は日本の世界シェアが9割に達する
管理強化された1品目「レジスト」――フォトレジストについて見てみましょう。個別輸出審査になったのは、半導体の微細加工工程で使われるEUV(極端紫外線)向けのフォトレジストです。日本では、『JSR』『東京応化工業』『信越化学工業』などの企業が開発・製造・販売を行っており、世界的なシェア9割を占めるといわれています。
韓国貿易協会(KITA)のデータベースから2019年01月~2020年05月までのフォトレジストの輸入金額・輸入先国をピックアップして、日本からの輸入金額、日本のシェアをグラフにすると以下のようになります。
⇒データ引用元:『KITA.ORG』
http://kita.org/
2019年01月の日本からの輸入金額は「3,048万2,411ドル」、シェアは「87.6%」でした。輸出管理強化が発表になった2019年07月には日本からの輸入が急増しています。これは恐らく駆け込み需用でしょう。その流れがあって08月も「3,757万4,656ドル」と輸入金額は多いですね。
その後は、確かに日本からの輸入金額は減り、日本のシェアも80%を割っています。
ところが、2020年に入ってから再び金額も増え、2020年02月にはシェアが「90.7%」を記録。直近の05月では「2,983万2,332ドル」、シェア「82.6%」となっています。輸出管理強化前の2019年05月「3,059万9,048ドル」と金額ベースではほとんど変わりません。
また面白いデータがあるのです。
なぜベルギーからの輸入が増えたのか? 実は……
日本のシェアが落ちた(?)分をどの国がカバーしているかです。実は、日本以外の国からの輸入金額は一桁落ちるので、ほぼ日本からの輸入といってもいいのですが、とりあえず以下の日本以外の輸入先の金額推移を見てください。
注目していただきたいのは、グレーのラインの「ベルギー」です。ベルギーは、輸出管理が強化された2019年07月に急に「フォトレジスト」の輸入先として金額が急騰しています。
韓国はベルギーの『EUV RMQC』という企業から「フォトレジスト」を輸入しているのですが、実は同社は日本の『JSR』が現地の『IMEC』という研究機関と一緒につくった合弁会社なのです。
⇒参照・引用元:『JSR』公式サイト「デジタルソリューション事業」
つまり、韓国メディアでは輸入先の多角化なんていってますが、急増したベルギーからの輸入は日本の技術を基にしており、日本企業の手の中にあるといってもいいわけです。
輸出管理強化に触れた『京郷新聞』の2020年06月29日の記事では以下のような箇所があります。
(前略)
一方、今年初めから5月までにフォトレジストとフッ素ポリイミドの輸入額は1億5,081万ドル、1,303万ドルで、前年同期比それぞれ33.8%、7.4%増加した。特にフォトレジストは、ベルギーからの迂回輸入が昨年と比較して18倍も増加したものの、日本からの輸入の割合は91.9%から88.6%の小幅減少にとどまり、まだ日本の依存度が高い項目として調査された。
(後略)⇒参照・引用元:『京郷新聞』「全経連は『日本の半導体素材・部品・機器の輸出規制1年、まだ韓日協力時の利益の方が大きい』」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
「迂回輸入」というフレーズが泣かせますが、ベルギーのシェアは2020年01-05月の平均で4.4%あります。(乱暴ですけれども)日本のシェアと足すと……さあ何パーセントになるでしょうか? 本当に輸入先を多角化できたなんて言えるでしょうかね――というわけです。いかがでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)