アメリカ合衆国が中国に半導体を渡さない戦術を取っており、中国最大の半導体メーカーである『SMIC』(Semiconductor Manufacturing International Corporation:中芯国際集成電路製造)も制裁対象に指定する可能性がある、と『Reuters(ロイター)』に報道が出ました。
これが実現すると中国は大きな打撃を受けます。
『Reuters』の報道が出た後、香港株式市場の半導体セクターから20%の資金が流出したと推計されています。株式市場はすでに『SMIC』が本当に制裁対象となることを織り込んで動き始めています。
『SMIC』が制裁対象となると、同社に対して合衆国の技術が25%以上使用された製品の輸出が制限されます。そのため、『SMIC』が必要とする半導体製造装置の入手が事実上できなくなるかもしれません。
そうなれば工場などただの箱です。
もし『SMIC』が陥落した場合には、中国の有力な半導体製造メーカーは『ホア・ホン・セミコンダクター』(Hua Hong Semiconductor:華虹半導体有限公司)ぐらいといわれています(代替になるかどうかは怪しいのですが)。
浴びる返り血はどこまで増えるか
輸出が困難になると推測されるのには合衆国企業も含まれます。
例えば、半導体製造装置大手の『アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)』、エッチング装置の大手である『ラムリサーチ(Lam Research)』、検査装置大手『KLA』といった企業には影響があるでしょう。
また、日本では『東京エレクトロン』は影響が避けられそうもありません。先にご紹介したオランダの『ASML』も同様です。
これらの企業からの製品輸出がなければ『SMIC』は立ち枯れするでしょうが、返り血をかなり浴びることになるでしょう。
また、素材の分野にまで、それこそ「レジスト」「フッ化水素」「フッ化ポリイミド」などにまで合衆国の追求が及べば、日本企業の出血量はもっと多くなります。
日本政府はここを中国共産党に突かれるかもしれません。そのため、日本政府は半導体関連企業への保障について、今から視野に入れ、手を打っておく必要があります。
焦点は「25%以上合衆国の技術を使っている」という点になりますが、先にご紹介したとおり、オランダ政府は合衆国の圧力を受け、『ASML』に対して中国への輸出を許可しておりません(少なくとも輸出確認はされていない)。『ASML』の半導体製造装置が「25%以上合衆国の技術を使っているとはいえない」と判断された(らしい)にも関わらずです。
ですから、合衆国の圧力は日本企業にも理不尽なものとなる可能性が大といえます。
合衆国の戦術は効果的ですが、実施に当たっては自国企業、同盟国企業への配慮を伴ったものでなければなりません。中国企業と共倒れなど誰も望まないですから。
(柏ケミカル@dcp)