造船業は、韓国の輸出の一角を支えてきましたが、韓国輸出産業のご多分にもれず弱体化を続けています。
2020年末には「○○船を○隻受注!」などの見出しが次々と踊りましたが、先にご紹介したとおり、これは無理をして薄利で受注をした結果なのです。薄利どころか採算割れの可能性もあります。
韓国造船大手3社といえば、『サムスン重工業』『韓国造船海洋』『大宇造船海洋』ですが、合算した業績は以下のようになっています。
売上高:21兆8,902億ウォン
営業利益:-1,277億ウォン
※受注ラッシュとなった第4四半期の結果が入っていないことに注意してください。
前年同期が「-1,431億ウォン」だったので赤字幅は縮小しましたが、赤字なのです。
問題は、「韓国は船舶発注量のシェアで世界一」なんて言ってることです。考えてもみてください。世界一のシェアを取っても赤字――その商売に意味はあるのでしょうか(第3四半期までの結果ですのでご注意ください)。
タイムリーにご紹介し損なったのですが、2021年01月25日、『亜州経済(日本語版)』に興味深い記事がありました。「造船業は薄利多売だけど仕方ない」と告白した内容です。
面白い部分を記事から一部引用します。
(前略)
造船業界の関係者は、「仕事が不足している状況で、造船所を運営しながら、人件費などの固定費を果たすためには、低価格での受注を継続するしかなかった」とし「今年は環境規制などで高価な船舶の需要が増えると考えられる。そのため全体的に業績は上方修正されると見られる」と述べた。
薄利多売状況を維持するしかなかった、という話を正直に語っています。
同記事では船舶の価格が下がっているという現状も明らかにしています。
スエズマックス級:6,150万ドル(前年同期比:8.9%下落)
アフラマックス級:4,850万ドル(前年同期比:5.2%下落)
VLCCは「Very Large Crude oil Carrier」の略。20~32万トン級
スエズマックスは14~15万トン級 スエズ運河を航行可能な最大サイズ
アフラマックスタンカー:8~12万トン級
このような価格の下落が薄利の商売をさらに危うくしています。韓国の造船業はもはや斜陽フェイズなのです。単価のたたき合いになったら中国の方が強いですからね(中国企業に倫理観があるとは思えませんし)。
(吉田ハンチング@dcp)