日韓の正面衝突を決定付けた、いわゆる徴用工判決がいよいよ日本企業に実害を及ぼすことが明確になりました。
読者の皆さまもすでにご存じのことでしょうが、2021年08月18日、韓国の水原地裁安養支部は、日本『三菱重工業』が韓国『LSエムトロン』に対して持つ債権の差し押さえ、強制取り立ての命令を決定しました。
極めて雑な判断で日本企業に実害が発生することが決まった
韓国メディア『中央日報』『朝鮮日報』『毎日経済』その他の記事によれば、差し押さえられた債権は「8億5,319万ウォン」(約8,020億円)。
すでに差し押さえ決定となった商標権・特許(誰がいくらで買うのかも分からないもの)とは異なり、これはすぐに現金回収できるものです。
なぜなら日本企業が支払わなくても、韓国企業から徴収できるからです。
韓国企業は日本企業に対する支払い(韓国企業からすれば8,020億円の債務)の支払いを行わず、その分を裁判所の命令に従って原告に支払うことになります。
日本企業は売掛金の回収ができないことになります。
実際、韓国メディアの報道によれば、原告の弁護士側は「もし『三菱重工業』が判決の履行を拒否した場合、差し押さえ債権の回収命令に基づいて『LSエムトロン』から直接債権を回収する予定だ」(韓国メディア『毎日経済』記事より)としています。
この『LSエムトロン』はなんといっているかというと、「裁判所の判断を尊重する」「『LSエムトロン』と取引する会社は『三菱重工エンジンシステム』という別の会社であり、事実関係を確認した後、裁判所の判断に従う予定」としています(引用元は同上)。
そもそもなぜ『LSエムトロン』という企業から日本企業の債権を回収することになったのか分かりませんが、標的となった『三菱重工業』ではなく、『三菱重工エンジンシステム』からでもいい、という雑な判断をしたわけです。
※『三菱重工エンジンシステム』は『三菱重工業』のグループ会社です。
この雑な判断によって、『三菱重工エンジンシステム』は8,020億円もの売掛金が回収できなくなります。
日本政府は報復発動の準備を始めなければならない
まだ実際に『LSエムトロン』から原告への支払いは行われていませんが、もし行われたら、あるいは『三菱重工エンジンシステム』への支払いが遅延するようなことがあれば、それで日本企業への損害が発生したことになります(商習慣からいえば支払いの遅延も損害と見なせます)。
日本政府はこれまで、このいわゆる徴用工判決について、「日本企業に損失が発生したら報復する」と明言してきました。
いよいよ報復発動の準備を行わなければならない時が来ました。
「Tit for Tat」戦略からいっても報復は絶対に必要です。また、報復を行わなければ、日本政府は国民からの指示を失うことになるでしょう。
官房長官は原則論を繰り返す
2021年08月19日午前の記者会見で、官房長官は記者から本件について質問され、以下のように答えています。
記者の質問略
まず、一つ一つ韓国内の動きについてコメントは差し控えておりますが、旧朝鮮半島出身者問題に関わる韓国大法院判決および関連する司法手続き、これは明確な国際法違反であると申し上げているところであります。
その上で、仮に現金化いたることになれば、ですね、日韓関係にとって深刻な状況になってしまう。これは避けなければならない。
これは韓国側に対して、日本側から繰り返し指摘しているところであります。
韓国側が早期に日本側にとって受け入れ可能なですね、解決策を示すようさらに強く求めていきたい。このように考えて下ります。
――判決が第三者の持つ債権にまで拡大したことについてはどう考えているのか?
判決の中身について、これは別途、我々として分析していかなければならないと思っておりますが、ただ、第三者の前に行くか行かないか、その前として、そもそも先に申し上げたように、この旧朝鮮半島出身者問題についてはですね、もうすでにこれまでの日韓の協定等含めて、これはすでに解決されているわけでありますから、それが我々の立場、前提であるわけであります。
官房長官は原則論を繰り返したに過ぎません。
すでに解決済みな問題というのはもちろんですが、今回重要なのは、より現金化しやすい判断・決定を韓国裁判所が下したという点にあります。
また、韓国の裁判所は雑な判断を下し、『三菱重工』に関係のある企業同様の目に遭う可能性が高いということが判明したという点も重要です。
このような国とまともな貿易ができると考える方がどうかしています。
(吉田ハンチング@dcp)