韓国政府の無茶な方針についに韓国の電力会社が叛旗を翻しました。
韓国のクリーンエネルギー政策についてです。文在寅大統領は「2050年までにカーボンニュートラルを達成する」と宣言し、政府からはそのためのタイムライン、シナリオが提示されていますが、Money1でも何度かご紹介してきたとおり、これが無茶なものです。
例えば「風力発電施設の電力生産量を2030年には現在の100倍にする」といった、およそ不可能だろうという目標などが入っているぐらいです。
「脱原発」ありきの無茶な政府方針
政府の「カーボンニュートラル委員会」は、「2050年までに既存の原発を順番に廃炉とし、現在は25%の電力生産を担っている原子力発電所の割合を6~7%に縮小する」としています。
文大統領は「脱原発」を公約として当選していますので、脱原発が金科玉条。これまでにご紹介したとおり、月城原子力発電所の「1号機」をひと声で決め、原発の整備期間を意図的に長くするなどを行ってきました。
しかし、現実問題として原発抜き・再生可能エネルギーを利用することで韓国の電力需要を満たすことは不可能なのです。これは韓国の識者も繰り返し指摘しています。
特に夏場・冬場のピーク時の電力需要において、再生可能エネルギー発電が原発を代替することはできません。実際、今夏にはブラックアウト懸念に対して慌てて原発3基を再稼働するという、非常に見苦しい対応をしています。
「脱原発は不可侵」という態度を撤回せよ
これまで電力会社も表立っては政府の方針に異を唱えはしませんでした。
しかし、08月に行われた「カーボンニュートラル委員会」の意見収斂(しゅうれん)会合において、『韓国水力原子力発電』(『韓国電力公社』の子会社)は、政府シナリオの見直しを要求したのです。
「9基の原発だけ残す」という既存の政府シナリオに対して、これを「9基+α」とし、「再生可能エネルギー一辺倒ではなく、エネルギーミックスへの転換が必要」と強く主張しました。
達成できないと分かっている目標に向かって走ることは徒労です。『韓国水力原子力』の提言は極めて現実的なものといえるでしょう。
しかも、政府側が飲みやすいように「+α」と柔軟に対応できる余地を残しています。
ところが、2021年09月14日、政府は「2050年カーボンニュートラル目標」のシナリオをそのまま盛り込んだ「気候の危機対応のためのカーボンニュートラル・グリーン成長基本法」を閣議で可決しました。
支離滅裂な上に達成不可能なシナリオの基に走り出している「韓国のエネルギーインフラ行政」の行方が懸念されます。
(吉田ハンチング@dcp)