2008~2009年の「韓国通貨危機」前夜に比べればずいぶんマシですが……。
外貨準備高が3カ月連続で減ったせいなのか、韓国メディアで急に「韓国経済に警報」といった記事が目立つようになりました。
例えば『中央日報』は「韓国経済、『双子赤字』非常灯がついた」という記事を出しています(2022年02月07日付け)。
この双子の赤字というのは、「政府財政の赤字」と「貿易赤字」(ただし通関ベース)を指しています。
両方ともMoney1では政府機関から公表があるたびにご紹介しておりますが、確かに両方とも赤字です。
韓国政府の統合財政収支は2019年に赤転!
まず政府の財政収支は以下のグラフが分かりやすいです(企画財政部が公表した現時点での最新版)。
「統合財政収支」は、単純に政府収入から政府支出を引いたものですが、赤丸で囲んだポイントにご注目ください。その年の12月末時点での累計の収支です。
上掲のとおり、韓国政府の統合財政収支は2019年から赤字に転落しました。2020年はコロナ禍もあってさらに赤字額が大きくなり、2021年についてはまだ11月末時点でのデータしか出ていませんが、12月に黒字になることは不可能です。
そのため、韓国政府の財政収支は3年連続で赤字になります。これまた文在寅政権の行ったことです。
3カ月連続の貿易赤字になるかもしれない!
次に貿易赤字(くどいですがあくまでも通関ベース)ですが、これはMoney1で何度もご紹介しているとおり、2021年12月、2022年01月と2カ月連続で赤字を記録。
2021年12月:-4億5,200万ドル
2022年01月:-48億8,900万ドル
※関税庁、産業通商資源部の公表した「通関ベース」でのデータ
赤字になったのは、資源価格の急騰によりますが、このトレンドはまだ止まっていません。そのため2022年02月も赤字になる可能性があります。
もしそうなれば、3カ月連続の貿易赤字です。
韓国の場合、貿易でのもうけが十分に大きくなければ経常収支が赤転します(こっちは国際収支統計での話)。日本のように第1次所得収支が莫大なもうけをもたらすので貿易収支が赤字でも大丈夫という国ではないのです。
また、韓国の場合、外貨準備を積んでいく元になるのは貿易でのもうけですから、貿易収支の赤字というのは全くシャレにならないのです。
もはや韓国に財政的余力はない
『中央日報』双子の赤字の記事から一部を以下に引用すると、こんな具合です。
(前略)
双子の赤字は1980年代からアメリカ合衆国が慢性的に経験している問題で、経済活力を深刻に毀損する原因に挙げられている。まして、私たちは合衆国と違い基軸通貨国ではない上、天然資源もない。
貿易で食べていくという経済体制の立場では極めて危険な状況になるしかない。
1997年の為替危機(アジア通貨危機:筆者注)の時も貿易収支赤字が重なったが警戒心を持たず、結局国家破綻の直前までいった。
それでも当時救済を受けられた決定的な背景は強固な財政だった。
国内総生産(GDP)に対する国家債務の割合は11.4%だった。この割合は今年50%を上回った。
単純な収入・支出の収支とはいえ、政府の財政収支が2018年まで黒字だったのは大したものです。しかし、この韓国政府の財政を一気に赤字に持っていったのが文政権だったわけです。コロナ前から統合財政収支が赤字だったので、コロナのせいという言い訳もできないでしょう。
これが何を意味するかといえば、国の財政的体力を大いに喪失したのです。
何かあったときに国に財政的余力がないというのは危険です。今まさに韓国はそのような状態で、ここに衝撃が加わったら……。
(吉田ハンチング@dcp)