2022年02月14日、韓国最大野党である『国民の力』統一大統領候補・尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが興味深い公約を打ち出した――と報じられました。
検察総長に対する法務部長官の捜査指揮権を廃止し、検察と警察も高位公職者腐敗を捜査できるようにする
⇒参照・引用元:『韓国経済』「尹錫悦『法務部長官の検察総長捜査指揮権廃止』公約」
これは、尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが検察総長時代に「煮え湯を飲まされた」ことへの復讐です。
そもそも尹錫悦(ユン・ソギョル)さんは文大統領から「大統領府でも政権与党でも権力に不正があれば、厳正に捜査せよ」と発破をかけられて検察総長の地位につきましたが、その後がいけませんでした。
文大統領が直接の後継者と目していた曹国(チョ・グク)さんをも捜査の対象とするなど、尹錫悦(ユン・ソギョル)検察総長は文字どおりどんどん「やる男」だったのです。
当時の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官は、「いかんこの男を止めねば!」と尹検察総長の手足となって働いていた検事を次々と左遷。尹検察総長を懲戒委員会にかけました。
結局、尹さんは検察総長を辞めざるを得なくなり、とうとう大統領候補になるに至りました。
それだけでは止まず、「高位公職者犯罪捜査処」が動き尹さんを立件に及びました。このような経緯があるので、尹さんは上記のような公約を言い出したのです。
尹さんの気持ちは分からないではないですが、ただ、法務部長が指揮権を発動できないというのはいかがなものでしょうか。司法の暴走を政府が止めることができないのは、それはそれで問題があります。
高位公職者犯罪捜査処は大統領に優しい機関である
「高位公職者犯罪捜査処」についてはいささかの説明が必要かもしれません。
この「高位公職者犯罪捜査処」は文在寅大統領になってから作られた組織で、その名のとおり、高位にある公職者の犯罪を捜査、訴追するための機関です。この高位公職者犯罪捜査処の捜査は検察、警察の捜査に優越する建て付けになっています。
また、この捜査処のTopである処長は、「犯罪捜査部長候補推薦委員会」が推薦する人員の中から大統領が選ぶことになっています。「犯罪捜査部長候補推薦委員会」は政府が組織します。
つまり、この組織は政府、大統領に優しい組織で、悪く取れば、大統領また政府の意を汲んで高位公職者を思うさまに捜査対象にすることができるというわけです。
その証拠に、他ならぬ尹錫悦(ユン・ソギョル)さん自身が高位公職者犯罪捜査処に立件されました。
この「高位公職者犯罪捜査処」は、鈴置高史先生の表現を借りるなら「大統領のゲシュタポ」です。文大統領は、韓国の強すぎる検察の力を弱めるために同組織を作った――というのですが、逆から見れば大統領の司法に対する優越を実現した組織でもあるのです。
というわけで、ここにきて尹錫悦(ユン・ソギョル)さんはかつて自分が煮え湯を飲まされたことについて文政権に落とし前をつけさせるような公約を繰り出しています。
まあ韓国の大統領選挙らしいといえば、それまでですが、この決着はどうなるでしょうか。ご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)