韓国では05月21日に、尹錫悦(ユン・ソギョル)新大統領とアメリカ合衆国のバイデン大統領による米韓首脳会談が行われる――と期待感が大きくなっています。
韓国メディア『ソウル経済』に、この首脳会談で手に入れなければならないものを列挙した記事が出ました。
以下の4つが挙がっています。
①米韓通貨スワップ
為替の安全弁を確保する②新しい通商
IPEF、経済安全保障③強力なサプライチェーン構築
米投資半導体洗剤の恩恵を受ける。バッテリーは「素材サポート」を引き出すべき④エネルギー安全保障の強化
原発輸出のための協力なども必要⇒参照・引用元:『ソウル経済』「①「通貨スワップ」締結で為替安全シートを作成し、「緊縮ショック」に備えなければならない」
真っ先に例のやつが挙がっています。以下に同記事から一部を引用してみます。
(前略)
専門家たちは、バイデン大統領の訪韓と関連して韓国政府が得なければならない成果で、米韓通貨スワップ協定の締結を真っ先に挙げている。対内外の悪材料で天井知らずに上昇するドルウォンレートを安定させるには、基軸通貨国である米国との通貨スワップ協定しかないということだ。
実際、2008年のグローバル金融危機(韓国通貨危機のこと:筆者注)当時も、米韓通貨スワップは韓国経済の安全弁の役割を果たした。
コロナ19事態以降3回延長された米韓通貨スワップは昨年末終了した状態だ。
米国が来月から攻撃的な通貨緊縮行動を予告した状況で、米韓通貨スワップ協定が締結されれば、米国発の金利引き上げの衝撃を減らすことができる。
(後略)⇒参照・引用元:『ソウル経済』「①「通貨スワップ」締結で為替安全シートを作成し、「緊縮ショック」に備えなければならない」
「米韓通貨スワップの締結」を米韓首脳会談の成果として得なければならない――と主張しています。『朝鮮日報』『毎日経済』に続いて『ソウル経済』もこんな記事を出すようになりました。
ウォン安がドボン寸前だった2020年03月の水準を超えてしまったので無理もありませんが、このように韓国メディアが総じてわいわい言い出すと本当に危ないのです。
専門家がどんなことを述べているのかも記事内にありますが、まあ虫のいい言葉ばかり並んでいます。以下に引いてみます。
(前略)
チョン・インギョ『仁荷(インハ)大学』国際通商学科教授は「現在、韓国が通貨スワップを締結した国の中で力強い国は事実上中国が唯一であるという点で、合衆国との通貨スワップ締結は必須」とし「鉄鋼輸出クォーター拡大のための貿易拡大法232条のような各種の問題で、合衆国側から得られる部分が大きくないだけに、通貨スワップ部門で可視的な成果を必ず出すべきだ」と強調した。(中略)
カン・サムモ『東国大学(トングク)』経済学科教授は「通貨スワップは外国為替市場の不安心理を安定させる最も効果的な手段」とし「特に最近米韓関係が再び良くなる兆しを見せているだけに、バイデン大統領訪韓に合わせて経済省を中心に米韓通貨スワップ締結を試してみる努力が必要だ」と助言した。
⇒参照・引用元:『ソウル経済』「①「通貨スワップ」締結で為替安全シートを作成し、「緊縮ショック」に備えなければならない」
中国と締結した「通貨スワップ」はあくまでも通商用で、そもそも人民元はハードカレンシーではありませんから、通貨危機の際には役に立たないと思われるのですが、チョン・インギョ教授は「強大な国」なので……という話になっています。大丈夫ですか、という気がしないでもないですが、とりあえず合衆国との「通貨スワップ」締結は必須といっています。
カン・サムモ教授も「有効な手段」と「通貨スワップ」を評価していますが、「最近米韓関係が再び良くなる兆しを見せている」のでいけるかも……としている点に危うさを感じざるを得ません。
韓国は「合衆国側にいい顔をすれば、韓国が望むものはなんでも手に入る」と考えている節があります。果たして本当にそんなにうまくことが運ぶでしょうか。
韓国が本当に合衆国側に立って行動するかどうかが問われているのではないでしょうか。
この後に及んでまだ「戦略的曖昧性」を主張
同記事には以下のように非常に虫のいいことを述べている箇所もあるのです。
(前略)
ますます大きくなっている中国の影響力を勘案して「戦略的曖昧性」が必要だというアドバイスも耳を傾ける必要がある。イ・シウク『韓国開発研究院』(KDI)国際政策大学院教授は「現在、韓国の地政学的位置と経済現況を見ると、米国と中国の間で悩みを繰り返すしかない」とし「現状況では合衆国との協力を公告化しなければならないが、中国を大きく刺激しない形のポジションをとるべきだ」と明らかにした。
(後略)⇒参照・引用元:『ソウル経済』「①「通貨スワップ」締結で為替安全シートを作成し、「緊縮ショック」に備えなければならない」
この期に及んでまだ「戦略的曖昧性」が必要――などと述べています。
つまり、中国からすごまれたらまた反米に回転する可能性があるというわけです。このようないい加減な覚悟でありながら、合衆国から「通貨スワップ」をはじめ4つを手に入れるべき、などといっているのです。
毎度のことながら厚顔無恥な態度といえるでしょう。
合衆国と韓国の思惑がかみ合わないのでは……
日本ではほとんど報道されていませんが、バイデン大統領が訪問する前の地ならしとして、エドガー・ケーガンNSC(ホワイトハウス国家安全保障会議)東アジア・オセアニア上級部長が訪韓しています。
つまり合衆国が主に議論したいのは安全保障面であって、韓国が通貨安に見舞われていることではありません。この齟齬がどのようになるかが見物です。
「せっかく親米政権ができたのに合衆国が何もしてくれない」として、反動で中国側に全力で走っていくというシナリオが十分あり得ると考えます。
同盟を維持するためには、「相手側から見た自分の価値を高める努力」をお互いにしなければなりません。韓国はこれを理解しておらず、「こっち側にいてやるからなんかくれ」という国ですから。
(吉田ハンチング@dcp)