尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の「暴言」が韓国で大きな騒動に拡大しています。政争の大きな具になったわけです。
ここぞとばかりに「暴言をはきやがって」と大声で大統領を非難している野党『共に民主党』に対して、政府与党側からは大統領を擁護する陰謀論のような話が出ています。
大統領側の反論は「左派勢力の策謀である」
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が朴振(パク・ジン)外交部長官に話しかけた言葉が「バイデン大統領を侮辱したものである」と報道されたのですが、大統領自身、政府、与党『国民の力』は、これを歪曲された報道であるとしています。
他局に先駆けてこの件を報道したのは『MBC』です。
大統領擁護側からは――左派放送局になってしまった『MBC』が、野党に転落した『共に民主党』と結託し、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領を引きずり下ろそうとしてこの報道を仕組んだ――という主張が出ました。
時間経過がその証拠だというのです。主張によれば、
09月22日06:28 『MBC』が録画データを現地から韓国に送る
09月22日09:33 国会で『共に民主党』院内代表が尹大統領が暴言を吐いたと非難
09月22日10:07 『MBC』がYouTubeに動画を公開※韓国時間
となっています。これが正しいのだとすれば、YouTubeに上がったのが「10:07」ですから、それより前の「09:33」に『共に民主党』の院内代表がその情報を知ることができるわけがありません。
では、なぜその時間に国会で非難ができたのか?
『MBC』が喜々として先に『共に民主党』の院内代表に情報を流したとしか考えられない――というのです。しかも、もしそうなら『MBC』は政府との約束を守らなかったことになります。
このレセプション開場での取材は『MBC』でしたが、取材した素材については政府とNGや公開時間について協議し、これを守って行うこと、となっているのです。そもそも問題になった動画の部分についてはNGとされ、韓国時間の09:39までは撮影した素材を公開しないという約束をしていた――と政府側は主張しています。
大統領擁護側の主張が正しく、『共に民主党』の院内代表に先に動画を提供していたとすれば、『MBC』は何一つ約束を守らなかったことになります。
ともあれ、大統領、与党『国民の力』は「これは政治策謀だ」と反撃に転じました。
この大統領擁護側の陰謀論のような話に対して……。
メディアとの癒着などない!と主張
野党『共に民主党』側は「そんなことはない」としています。
『MBC』がYouTubeに上げる前にSNSで、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が暴言を吐いたという情報が流れていたので、『共に民主党』の院内代表はそれを見て国会で発言したのだ、主張しています。
これが本当なら、上掲のような時間経過になってもおかしくはなく、『共に民主党』とメディアが癒着しているとは言い切れません。
詰まるところ、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が本当はなんと言ったのかが焦点のはずです。
公開された動画を見ても、正直筆者などにはよく聞き取れません。韓国の皆さんの「確かにバイデンと言っている」といった声は多いのですが、先にご紹介したとおり、『タモリ倶楽部』の「空耳アワー」のようにテロップに引きずられることは多分にあり得ます。
この先どうなるかですが、大統領側は「歪曲報道を行った『MBC』を追及する」、また真相究明のためのTFを作るといった声を上げてしまいましたので、振り上げた拳の下ろしどころを探さなければなりません。
一方の『共に民主党』側では、「大統領はそんなことは言っていないと思う」と述べた朴振(パク・ジン)外交部長官の解任決議案を国会に提出しました。『共に民主党』は国会で過半数を占めていますので単独可決することが可能です。
しかし、このような対応を進めれば、どつき合いが深刻化するばかりです。
冒頭で「陰謀論のような」と書きましたが、現段階では何が本当なのか分かりません。陰謀論と決めつけることもできません。かつて捏造報道をやらかしたことのある『MBC』ですから、左派の『共に民主党』を支援するために、確信犯的にテロップ芸を行った可能性を否定できないのです。
韓国の場合、いったん「捏造でした」なんて報道が出ても、そこにまたうそが含まれていたりしますので、懐疑的でないと何が起こるか分かりません。
真実は明らかになるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)