韓国の不動産市場については「いよいよバブルが崩壊する」といった言説があります。
これは本当でしょうか。2023年03月23日に『韓国銀行』が公表した金融安定報告書の中に面白いデータがあるのでご紹介します。
直近の韓国不動産市場がどのようになっているのかを示すデータです。
まず、住宅売買価格の上昇率の推移です。
住宅価格は上昇を続けてきたのですが、上昇率もマイナスに転じ、下げました。しかし、直近では戻しています。これは韓国メディアにも報じられている「今が買いどきですよ」の声が反映されたものと見られます。
次に、住宅売買の取引量を見てみます。
住宅の取引量は右肩下がりを続けて、激減している状態です。2021年07月には「8.9万戸」もあったのですが、2023年01月には「2.6万戸」と往時の29.2%に過ぎません。
最後に、未分譲の住宅の量です。
造ってはみたものの未分譲という住宅が激増しています。2021年07月には「1.5万戸」だったものが、2023年01月には「7.5万戸」まで増加しました。未分譲が5倍になりました。
確かに、住宅価格の下落にはいったん歯止めがかかったように見えますが、この未分譲の増加具合を見ると、本当に底を打ったのかは、もう少し様子を見ないと分からないのではないでしょうか。
実際、『韓国銀行』も同リポートの中で「価格上昇期待の弱体化などで住宅市場の様子見が強 ま り 、住宅売買取引量が減少し、未販売物量が累積」と書いています。
つまり、みんな様子をうかがっているのです。
しかし、これだけ未分譲住宅が増加すると、例のPF(プロジェクトファイナンス)の債務の方が気になります。
PFというのは、簡単にいえば、将来のキャッシュフローを担保にしてお金を借りる手管です。「分譲マンションが完成して売れればお金返せますので、お金貸してください」というわけです。
それが銀行だろうが、ABCP(Asset-Backed Commercial Paper:資産担保コマーシャルペーパー)を発行しようが同じことです。融資を受けるか、紙を発行して投資家にそれを買ってもらうかの違いだけで、実際に分譲して、購入者からお金を受け取って返すという点に変わりはありません。
これだけ未分譲が積み上がっていて、PFの償還は大丈夫なのでしょうか。
レゴランドではないですが、政府(地方政府含む)が関わった不動産PFで、また未償還などという事態が発生すると、韓国の資金調達市場がまた梗塞を起こすことになります。
不動産バブルの崩壊だけではなく、不動産PFもまた韓国の時限爆弾であることを忘れてはならないでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)