日韓首脳会談は大山鳴動して鼠一匹な結果となりましたが、韓国大統領室の強引な公表によって外交部の威信も傷つく結果となりました。
日本の林芳正外務大臣、韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官の外相会談においても、外交部はミソをつけたのです。
先にご紹介したとおり、韓国の外交部が出したプレスリリースには、肝心の「いわゆる徴用工」問題について、朴振(パク・ジン)長官の意見に「林外相が共感した」という記載は一切ありませんでした。
「これからも日韓は協議を続ける」的な原則の話については「両国が合意する」と書かれていたものの、「日本側が韓国側に歩み寄る」といった記載は微塵もありませんでした。外交部が出すプレスリリースは公文書ですから、それが日韓外相会談の真実と見るほかありません。
また、日本国外務省の「林外相の記者会見内容」プレスリリースでも、朴振(パク・ジン)長官に対して「日本の一貫した立場について話した」と書いてあるだけで、つまりは門前払いです。
「いわゆる徴用工」問題では、韓国の空回り状態です。
「かつて河野外相が一蹴したのと同じようなプランを持ってきやがった。ナニ考えてんだ!」とは外務省もさすがに書きはしませんが、態度の意味は同じです。
――で、外交部は定例ブリーフィングで「日本側は全く譲歩する気配がないじゃないか」と記者から吊し上げを食っています。
以下の外交部が出したプレスリリースをご覧ください。該当部分を和訳しました。
(前略)
<質問>
今回の「日韓外交長官会談の結果」の報道資料を見ると、徴用問題(原文ママ:以下同/引用者注)に言及しながら日本側の誠意ある措置については漏れていました。それで、今回の大臣会談で徴用賠償に関連してどのような議論がなされたのか、もう少し具体的にお話しください。(『メディアペン』キム・ソジョン記者)<回答>
今回の外交長官会談での強制徴用についてお問い合わせいただきました。ご存知のように09月19日月曜日、ニューヨークの現地時間で午後4時から約50分間マンハッタンのあるホテルで今回の大臣会談が友好的な雰囲気で開催されました。私の記憶が確かなら、今回で両国長官間で4回目の会談です。
両国長官は多国間会合を契機に会合を持ち、緊密なコミュニケーションをしていこうという共感帯に基づき去る08月、カンボジアで開催された「ASEAN地域フォーラム」(ARF)会談に続き、1カ月ぶりに今回の会談を持ちました。
今回の会談では、強制徴用問題についても議論がありました。
朴振(パク・ジン)長官はわが国の外交長官として初めて強制徴用被害者たちに直接会い、原告側の声を聞き、過去四回にわたって行われた官民協議会などきっかけに聴取した国内各階層の多様な意見を、具体的に日本側に伝達し、誠意ある呼応を促しました。
これに対して、日本側も真剣な態度を見せながら、わが方と深く意見を交換しました。
<質問>
先の記者の質問に続く質問です。先ほどスポークスマンがおっしゃったその「聴聞」が意味を持つのでしょうか。実際に強制徴用被害者に対する謝罪などにおいて、日本側のどんな変化を感知できるのか、それとも既存の日本側の一貫した立場で変わらないのか説明お願いいたします。(『YTN』イ・ギョジュン記者)<回答>
私たちが聞いているのは、50分間にわたって行われた両国外交長官会談、この会談中には、強制徴用問題だけでなく、両国間の主な懸案、それだけでなく朝鮮半島状況などを包括的に議論をしたことです。強制徴用件については、ある具体的な事案について話したのではなく、強制徴用という両国間の懸案が両国関係改善のためには解決されなければならないという認識を共にして、その点について韓国長官が国内のさまざまな意見、これまで民官協で提起された意見について説明した、と聞いています。
<質問>
その言葉だけ聞けば――既存の日本側の姿勢にはあまり大きな変化はない――私たちはこう判断してもいいのでしょうか?(『YTN』イ・ギョジュン記者)<回答>
まだ明確に日本側の姿勢に変化があったとは言いいません。これまで4回にわたって両国で長官会談をしながら私たちが感知した日本側の姿勢、そして態度は、私たちの意見を聞いてより一層真剣になった、その点を再度申し上げます。<質問>
聴聞によってさらに真剣になったとしたら、多少の変化、兆しやシグナルを少しは捉えることができるのではないか、予見もできるのではないかというのは行き過ぎの判断でしょうか?(『YTN』イ・ギョジュン記者)<回答>
私は今回の会談の具体事項についてこれ以上の言及は控えます。今日、もし他に質問がなければ、これで終わります。ありがとうございました。終わり。
⇒参照・引用元:『韓国 外交部』公式サイト「スポークスマン定例説明(9.20)」
まず、日韓外交会談の結果についての「外交部が出したプレスリリース」には、「日本の誠意ある対応」についてなんら書かれていない――と記者に突っ込まれています。
これは確かにそのとおりで、朴振(パク・ジン)長官が「過去史懸案関連の望ましい解決策を早急に導き出すために、真正性をもって共に努力していこうとした」と書いてあるだけです。
上記のとおり、これに対して林外相がなんと答えたのかは記載ナシです。日本の外務省が出したプレスリリースでは「日本の一貫した立場」を繰り返した、となっているのですが。
仕方がないので、報道官(スポークスマン)が「誠意ある呼応を促しました」と答えています。
面白いのは、「『朴振(パク・ジン)長官が徴用工問題の原告に実際に会い聴取した結果』を日本に伝えたというが、日本側に何か変化はあったのか?」という質問です。
恐らく日本側になんら変化がないのでしょう、報道官は「変化があったとは言い難いが、日本はわれわれの意見をよし真剣に聞くようになった」と苦しい逃げを打っています。
さらに記者が「真剣に聞くようになったのなら、何か変化がありそうなもんだ」と不満げに突っ込んでいるのですが、「もう具体的な話はしません。はい、おしまい」と一目散に逃げる始末。
韓国の外交部は、今回の日韓首脳会談、外相会談において、かなり傷ついたといえるでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)