「日本の演歌は韓国起源である」というウソ。

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土曜日なので読み物的な記事を一つ。

読者の方から「日本の演歌は韓国起源ですか?」という質問をいただきました。このような言説がいまだに流通していることに驚きますが、もちろん根も葉もないウソです。

このウソの震源地がどこであったのかも分かっています。

これについては、古田博司先生や松本厚司先生も著書の中で同じことを指摘されていますが、つい先日、ちょうどいいことに山本浄邦先生が『K-POP現代史』という本を出していらっしゃいます。

同書は、朝鮮半島における流行歌の歴史を追ったもので、どのようにK-POPが生まれ『BTS』につながったのが概観できる良書です。

この中にも「日本の演歌は韓国起源」というウソがどこから広まったのかを指摘した箇所があります。山本先生の著書から該当箇所を以下に引用します。

(前略)
ロックやフォークソングが優勢になり、アイドル歌手も登場した七〇年代の日本において、韓国から来た二〇代の歌手は日本人の郷愁を誘う演歌歌手として受容された。

李成愛の登場で、日本で「演歌の源流は韓国」という言説が登場した。

その直接のきっかけとなったのは、李成愛の日本初アルバム『熱唱』のキャッチコピー「演歌の源流を探る」である。

当時、李成愛のプロモーションを担当していた岡野弁おかのべんらはこれを話題づくりのための宣伝用フレーズとしか考えていなかったが、このフレーズをみた人々によって、「演歌の源流は韓国」と語られるようになった。

さらには「朝鮮に住んでいた古賀政男が(朝鮮の民族楽器である)伽耶琴カヤグムの音色に影響された」という俗説も登場した。

だが第1章でみたように、韓国の大衆音楽は日本による植民地支配のもとで、日本のレコード会社の朝鮮進出を通して、日本の流行歌の影響を受けつつ成立したものである。

そのため、このような言説は韓国や在日韓国人の論者から批判され、現在では根拠のないものと考えられている。
(後略)

⇒参照・引用元:『K-POP現代史 韓国大衆音楽の誕生からBTSまで』著:山本浄邦,ちくま新書,2023年04月10日 第一刷発行,pp103-104


↑確かにオビに「演歌の源流を探る」と書かれています。

そもそもは、韓国から日本上陸した歌手にシンパシーを抱かせるために、その時に考えられたキャッチコピーだったのですが――これが「そうなのか!」と一人歩きをしたというのが本当なのです。

ですので、「日本の演歌は韓国起源」はウソです。

山本先生は「現在では根拠のないものと考えられている」と書かれていますが、いまだに信じている人もいるようです。

日本人はすっかり忘れていますが、そもそも「演歌 = 日本人の心を歌う」という認識が形成されたのは最近のことで、これまた売り出し戦略によるのです。そのため、「日本人の郷愁に訴える演歌」に擬して韓国人歌手を売り出そうとした――というのは「屋上屋を架す」が如くというか、奇妙にねじれた話なのです。

この件は『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』に詳しく書かれています。

(吉田ハンチング@dcp)

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