中国とEUの関係も怪しくなっています。
欧州委員会が訪中して習近平総書記との会談を行いましたが、会談前にすでに以下のような鍔ぜり合いがありました。
「中国は意図して貿易黒字を追求していない」と主張
『AFP』記者:
今週、中国とEUの首脳会談が北京で開催されます。昨日、ウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、EUは中国との貿易において長期的な不均衡を受け入れないと述べ、また、EUは自国の市場を保護する手段を持っているが、交渉によって解決策を見出すことを好むと発言しましたが、これに対する中国の反応は? 中国は、将来EUと貿易戦争になる可能性を心配しているのでしょうか?
汪文斌:
まずお伝えしたいのは、中国は意図的に貿易黒字を追求したことはないということです。それどころか、中国国際輸入博覧会や中国国際サプライチェーン促進博覧会を積極的に開催し、対外開放を高いレベルで推進し続けてきました。
14億人を超える中国のメガマーケットをよりよく共有するために、各国は歓迎されている。
中国と欧州の現在の貿易状況は、マクロ経済環境、国際貿易条件、双方の産業構造の共同影響の結果である。
貿易データは、グローバルな産業チェーンとサプライチェーンの深い統合の下での中国とEUの貿易の利益の分配を反映していない。
中国に進出している欧州企業の輸出の3分の1以上は欧州に還流している。
表面的には中国は黒字だが、実際には利益のかなりの部分は欧州側が享受している。
売買は双方の問題であり、もし欧州側が一方では中国へのハイテク製品の輸出に厳しい制限を設け、他方では中国への輸出を大幅に増やすことを望んでいるのであれば、それは常識に反すると言わざるを得ない。
中国は、欧州が直面する未解決の問題を解決する上でも、グローバルな課題に効果的に対応する上でも、EUにとって信頼できる不可欠なパートナーである。
対話と協議を通じて相違を解決することは、中国とEUの関係発展における重要な経験である。
われわれは、欧州側と中国側が協力し、中国・EU首脳会談の成功に向けて好ましい雰囲気を作り出し、中国・EU関係の健全で安定した発展のために共同で努力することを希望する。
汪文斌報道官は必死に中国はEUとの関係を現在のママ維持しようと取り繕っています。
ライエン委員長が指摘する「貿易の不均衡」は重要なポイントです。『BBC』の報道によれば「(中国と欧州の)貿易不均衡は日に日に拡大していると見ている。過去2年間で貿易不均衡は2倍となり、現在は4,000億ユーロ近くに達している」と述べているのです。
4,000億ユーロですから、欧州の対中国貿易赤字は「約4,317億ドル」にも達しているのです。欧州委員会が補助金を当て込んだ「中国産電気自動車の急増」の調査に乗り出すのも無理ないことです。
しかし、汪文斌報道官は「中国は意図的に貿易黒字を追求したことはない」「表面的には中国は黒字だが、実際には利益のかなりの部分は欧州側が享受している」とかわしました。
この後、実際に会談が行われました。
「いつまでも不均衡は許さない!」
↑なぜ習近平さんはいつもつまんなそうな顔をしているのでしょうか。
以下は欧州委員会が会談後に出したプレスリリースですが、中から貿易に関する部分を和訳して下掲します。
(前略)
EUと中国は、1日当たり23億ユーロの物品貿易を行う主要な経済パートナーである。しかし、EUの貿易赤字は4,000億ユーロ近くに達しており、この関係は危機的かつ構造的に不均衡である。
EUは、デカップリングや内向き志向をとるつもりはない。
そのためEUは、中国経済における根本的な歪みと製造業の過剰生産能力による悪影響について懸念を表明した。
EUは中国に対し、公平な競争条件と互恵性を備えた、よりバランスのとれた経済関係を実現することの重要性を強調した。
EUは同様に、EUの中核的な利益と長年の要求(ビジネス環境の透明性、予測可能なサプライチェーン、産業補助金を含む貿易の歪み、特定分野の貿易障壁など)への対応における進展の必要性も強調した。
EUは、中国がEUの投資家および輸出業者のための市場アクセスおよび投資環境を改善するための具体的な行動をとることへの期待を表明した。
EUは、世界貿易機関(WTO)の規則を完全に遵守した上で、特定の分野における重要な依存関係に対処することにより、レジリエンス(resilience:回復力/引用者注)を強化することを目的としていることを提起した。
(後略)⇒参照・引用元:『欧州委員会』公式サイト「24th EU-China Summit: engaging to promote our values and defend our interests」
欧州委員会は、「デカップリングや内向き志向をとるつもりはない」としながら、習近平総書記に対して当然の要求を突きつけました。
ビジネス環境の透明性
予測可能なサプライチェーン
産業補助金を含む貿易の歪み
特定分野の貿易障壁
を解消しろ、としています(しかも長年の要求)。傑作なのは「中国経済における根本的な歪み」がある――したことです。
この根本的な歪みは、経済と法律の上に中国共産党と習近平がいる――という構造からきていますので、中国には解消できません。解消するときは中国共産党政権が倒れたときです。
先にご紹介したとおり、技術と資金が流入しなくなったので中国経済が傾き、習近平さん自身が「世界水準に開放を進める」などとおだを上げていますが、できません。そんなことをすれば体制崩壊への一歩になるからです。
ですから、欧州と中国の関係は好転するわけはないのです。中国の横暴と無法な行為に欧州川が我慢し続ける――という構図が続きます。どこかで欧州はキレる必要があります(もうキレているという見方もできます)。
(吉田ハンチング@dcp)