2023年12月13日、韓国の産業通商資源部が「サプライチェーン安定品目特定国依存度 2030年まで50%以下に下げる」という無茶なプレスリリースを出しました。
先にご紹介した、中国が尿素の輸出を急きょ制限し、それがまた韓国で尿素大乱を引き起こすのでは?と懸念されたことに対する反応です。
2021年に起こった尿素大乱の際に、先の政府は「サプライチェーンの多様化を図る」としていたのに――今回の尿素懸念が起こって調べてみると――逆に当時より中国依存度が上がっていることが分かった※ことに対する回答でもあります。
※2021年の尿素大乱のときには中国依存度「71%」だったのですが、2023年今回では「91%」に上昇していたことが分かりました。そのため韓国メディアからも「無能」「何やってんだ」と罵詈雑言が浴びせられています。
今回産業通商資源部が出したプレスリリースが以下です。
サプライチェーン安定品目の特定国依存度、2030年までに50%以下に下げる
-産業サプライチェーン3050戦略発表、185個のサプライチェーン安定品目を選定
-サプライチェーン安定品目の特定国依存度を’22年70%から’30年50%以下にする
-10大移行課題および8大産業サプライチェーン先導プロジェクトを推進(中略)
輸入依存度、産業への影響などを考慮して半導体希少ガス、グラファイト、希土類永久磁石、尿素など185個のサプライチェーン安定品目を選定し、これらの品目の特定国依存度を2022年平均70%から2030年までに50%以下に下げる計画だ。
このため、産業部はサプライチェーン10大移行課題を推進する。
まず、
①汎政府のサプライチェーン対応能力を強化し、②サプライチェーンの危機対応能力の拡充のため、品目別危機対応シナリオの策定、関係省庁合同の危機対応模擬訓練などを実施する。
また、自立化のために
③国内生産の経済性が低い品目に対する支援策を検討し、14品目の「国内生産投資事業」に対する規制、許認可の問題解決を集中支援する。
④サプライチェーン安定品目の研究開発(R&D)を’30年まで大幅に拡大し
⑤先端産業・サプライチェーン分野の戦略的な外国人投資・Uターン誘致も支援する。
⑥代替導入を促進できる多様な誘因体系を設け、代替先の発掘、性能検証など導入の全過程を支援し、輸入保険を優遇する計画だ。
⑦海外合併・買収(M&A)や特定国集中生産施設の第3国移転(Pターン)なども支援する。
さらに、
⑧リチウムなど核心鉱物の備蓄を大幅に増やし⑨海外核心鉱物プロジェクトに対する特別融資、税額控除などの支援を拡大する。
⑩シリコン陰極材などの代替材、廃希土類永久磁石のリサイクルなど再資源化技術も積極的に支援する計画だ。
特に、二次電池正極材・負極材、尿素など8大産業サプライチェーン先導プロジェクトを選定し、自立化、多様化、資源確保などサプライチェーンの3大政策を総合的に支援していく計画だ。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国 産業通商資源部』公式サイト「サプライチェーン安定品目特定国依存度 2030年まで50%以下に下げる」
依存度の高い重要な品目185種を選定し、2022年現在の平均依存度が約70%から2030年に50%に下げるとしています。また、そのために10の施策を行うとしているのですが、これはお題目で、どうせ実現できませんのでどうでもいいのです。
例えば「汎政府のサプライチェーン対応能力を強化」などと①に書いていますが、どう具体化するのかは「これから考えます」なので空証文に過ぎません。
それよりも問題なのは――このプレスリリースを出した産業通商資源部も気付いていないかもしれませんが――恐らく中国を怒らせることになるという点です。
なぜなら、韓国が「特定国に依存している」とする重要品目は、ほとんどが中国産だからです。それら品目の依存度を下げると宣言することは、すなわち韓国政府が「脱中国」を宣言したのと同じです。
「中国からは買いません」とイコールです。
中国は現在「脱中国と言うな」、「デリスキングは脱中国と言っているのと同じだ」とカリカリしているのですが、産業通商資源部はこんな文書を出して、中国からにらまれずに済むと思ったのでしょうか?
「鳥も鳴かずば打たれまい」にならなければいいですね。
いや、もちろん中国と対決する覚悟があればいいのですが。
(吉田ハンチング@dcp)