2024年09月11日、アメリカ合衆国の『民主党』議員126人が、バイデン大統領に「大統領権限を行使して、米国通商法の『低価格免除』条項をできるだけ早く廃止するよう求める共同書簡」を提出しました。
米国通商法における「低価格免除(de minimis Provision:デ・ミニミス プロビジョン)」条項とは、輸入品に対して関税が掛からない金額を定めたもので、800ドル以下の低価格なものを輸入する場合には、基本関税が掛かりません。
なぜこのような条項があるかというと、安価な商品の輸入に対して、いちいち関税を徴収していると、徴収に掛かる費用が徴収できた税収を上回ることがあるからです。
そのため、安価な商品の輸入(個人宛小包)については関税免除措置が設けられているのです。
法律上の抜け穴を利用する中国産イナゴ
スグにお分かりになると思われますが、この法律上の抜け穴を利用しているのが、激安アパレルなどを国際的に販売している中国産激安ECサイトです。
『SHEIN』や『TEMU』が激安で消費者に製品を届けることができるのは、この制度を利用しているからだ――と指摘されてきたのです。
「きた」と書くのは、指摘が今に始まったことではないからです。
例えば『Reuters(ロイター)』は2023年08月には、この問題を取り上げ以下のように書いています。
中国製品を販売する通販サイトが急速に台頭している。
追い風となっているのが、たった10ドル(約1,430円)のドレスなど低価格製品を関税免除で米国の個人消費者のもとに届けることを可能とする、数十年来の「抜け穴」だ。
これは、いわゆる「デミニミス」ルールによって、800ドル以下の個人宛小包は関税を免除されていることが原因だ。
あらゆる小売企業がこの恩恵に浴することができるが、圧倒的にこれを活用しているのは「SHEIN(シーイン)」やPDDホールディングス傘下の「Temu(ティームー)」だ。
中国系の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」が新たに展開するオンライン通販ビジネスも、ここに加わる可能性がある。
(中略)
米下院の委員会が6月に発表した報告書では、「デミニミス」対象となる米国向け出荷のうち、30%以上をシーイン、ティームーの両サイトが占めていた可能性が高いと推測している。
この報告書は「デミニミス」に対する連邦議会の関心が高まっていることを反映している。
中国製品については、強制労働により生産された製品を禁止する法律に基づき、高率関税と税関での検査が課せられているが、この「デミニミス」が、それを回避する抜け道となっているという批判がある。
特にやり玉に挙がっているのが、米国での新規株式公開(IPO)を検討しているシーインだ。
中国で設立されたシーインはロイターに対し、2012年に米国市場に参入して以来、米国の税法・関税法を順守しているとした。
(後略)⇒参照・引用元:『ロイター(日本語版)』「アングル:米関税制度の「抜け穴」、安い中国製品の流入続く」
法律上の抜け穴を使って、自国産の激安商品を世界中に輸出しているのです。
中国産イナゴがネット経由で外国市場を食い荒らす!
これもまた、過剰生産性の他国への押し付けと見ることができます。中国の過剰生産性がECサイト経由、ネット経由でイナゴのように他国市場を食い荒らしているのです。もちろん日本もその被害に遭っています。
イナゴのために日本のアパレルメーカーや小売店、日本のECサイトが立ち行かなくなるのです。
最近、NHGが『SHEIN』や『TEMU』を紹介したとしてネット上で話題になりましたが、NHKはもっと批判されるべきです。
公共放送とは名ばかりの「中共放送」と呼ぶべきで、日本のアパレルメーカーや小売店、ECサイトを潰すつもりなのかと猛攻撃されるのが至当です。
先にも書きましたが、日本を代表する女性下着メーカーである『ワコール』の業績が大きく傾いたのも、中国産イナゴのせいかもしれないのです。
今回の『民主党』議員126人がバイデン大統領に共同で書簡を送ったのは、危機感の表れであり「イナゴである中国産ECサイトを潰せ」という意思表示に他なりません。
ただ、これは難しい問題で、消費者からすれば激安で商品が購入できるというメリットがあり、それを潰そうとするのはいいことなのか?――という議論があります。
しかし程度の問題で、日本企業、日本のお店がひどい目に遭うのなら断固防衛すべきです。それも政治家の仕事でしょう。
「法律の抜け穴なんかに依存していないよ」とうそぶく
上掲の『Reuters(ロイター)』の記事が面白いのは『SHEIN』の中の人に、法律上の抜け穴についてインタビューを行っていることです。以下がその部分です。
(前略)
シーインの戦略担当グローバルヘッドを務めるピーター・ペルノデイ氏は、シーインの成功は「デミニミス」に依存するものではないと語った。成功の理由はむしろ、同社がオンラインでの流行をチェックし、アパレル製品の製造元への初回発注を少量に抑えるという手法をとっていることだという。
その製品ラインの販売が好調な場合だけ発注量を増やすので、過剰在庫による高いコストを回避できている、と同氏は説明した。
(後略)
さあどうでしょう?という言い分なのですが、もし本当に抜け穴に依存していないのなら、中国からの個人宛小荷物に対して重関税を掛けても問題ないでしょう。
2023年の合衆国下院の報告書は、「中国から合衆国に直接発送される荷物の数が毎年10億件以上に急増している」とし、「『SHIEN』『TEMU』の2社は、合衆国に輸入される荷物の3分の1近くを「低価格免除」条項に依存している」と指摘しているのです。
イナゴが日本市場を食い荒らさないために、日本の政治家も動くべきなのです。
(吉田ハンチング@dcp)