2024年09月27日、中国の国家統計局が鉱工業企業の01~08月の業績について公表しました。
冒頭部分を以下に引きます(面倒な方は飛ばしていただいても大丈夫です/数字については後述しますので)。
01月から08月まで、全国の規模以上工業企業の累計利益総額は4兆6,527.3億元で、前年同期比で0.5%の増加(比較可能な基準で計算、詳細は附注二を参照)。
01月から08月まで、規模以上工業企業のうち、国有控股企業は累計利益総額1兆5,490.6億元を達成し、前年同期比で1.3%の減少。
株式制企業は累計利益総額3兆4,430.3億元で1.3%の減少。
外商および香港・マカオ・台湾投資企業は累計利益総額1兆1,777.0億元で6.9%の増加。
私営企業は累計利益総額1兆2,648.3億元で2.6%の増加。
(後略)
01~08月累計で鉱工業企業の利益は0.5%の増加としています。「いいじゃないか」と思われるかもしれませんが、この公表データをよく見ると「そうでもない」ことが分かります。
利益が17%も減少した!
まとめると以下のような点な問題です。
●全体の利益増加はわずかであること
まず「0.5%」という数字です。全国の規模以上の企業で01〜08月累計0.5%しか対前年比で成長していません。控えめに言っても「ずいぶんな緩やかな成長率」です。
中国の統計ですから、鉛筆を舐めて「黒」にしたのではないかとも邪推できます。
●業界間で大きな格差が存在する!
一部の業種は好調に利益を伸ばしていますが、他の業種では著しいマイナスです。
上掲のとおり、例えば非鉄金属製錬・圧延加工業では、対前年同期比の総利益の成長率は「64.2%」、コンピュータ、通信およびその他の電子機器の製造では「22.1%」あります。
しかし一方で、石炭採掘および選炭業では「-20.9%」、採掘関連サービス業では「-332.0%」。
また、上掲のとおり、石油、石炭およびその他の燃料加工業は「-194.4%」、鉄金属精錬・圧延加工業は「-215.9%」と驚くほどのマイナスに転落しています。
現在、中国では「鉄鋼業が瀕死」となっているといわれ、このデータはそれを裏付けるものです。
●コスト増加と利益率低下
営業コストが2.6%増加し、営業収入に対する利益率が前年より0.10%ポイント低下しているのは、企業が利益を確保するために苦労していることを示しています
原材料費の値上がりやサプライチェーンの問題、企業の利益を圧迫していることが考えられます。企業が大リストラを行っているのに営業コストが上昇しているというのは、どこかにオーバーヘッドがあるはずです。
特に注目したいのは以下です。
●08月に利益が急減した
↑特にご注目いただきたいのは黄色のマーカー部分です。
08月単月のデータを見ると、前年同期比で利益が17.8%も減少しています。
これはかなり深刻な事態です。
国家統計局は、この減少は前年同期の「高い基準」(基底効果)による影響としていますが、それ以上に、世界経済や内需の減速が背景にある可能性があります。
なんだか緩やかに成長しているとも見えるかもしれませんが、そのウラでは08月に利益が急激し、鉄鋼業は瀕死という状態になっているのが中国鉱工業企業の現状です。
(吉田ハンチング@dcp)