中国の外貨準備高は2020年01月20日時点で「3兆2,342.20億ドル」となっています。しかし、近年経済の専門家、識者からは中国が保有しているとする外貨準備は、実は脆弱(ぜいじゃく)なのではないかという指摘があります。
先の記事でもご紹介しているとおり、中国人民銀行が公表している外貨準備(「Official Reserve Assets」としています)の内訳は、
Foreign currency reserves(外貨準備)
IMF reserve position(IMFリザーブポジション)
SDRs(SDR・特別引出権)
Gold(金)
Other reserve assets(その他資産)
の5項目となっており、Foreign currency reservesの中身が何か詳細は分かりません。日本や韓国のようにこれが「Deposits(預金)」「Securities(証券類)」と分かれていればまだいいのですが、そうはなっていません。
※上掲の表組の引用は『中国国家統計局』より
1月時点で「Foreign currency reserves:3兆1,154.97億ドル」としていますが、このうち「約1兆1,000億ドル」はアメリカ合衆国公債です。先の記事で触れたとおり、これは合衆国財務省の公表する「合衆国公債保有国とその金額」のデータによって裏が取れます(1月末時点のデータはまだ公表されていないので「約1兆1,000億ドル」はこれまでの推移からのざっくりの数字です)。
つまり、残りの「約2兆ドル」が「Deposit(預金)」と、合衆国公債以外の「Securities(証券類)」となります。
ここで指摘されているのは、実は中国の保有する現金たる「Deposit(預金)」はそれほど多くはないのではないか、という点です。
中国は固定相場制ともいえる為替レート管理国ですので、対ドルレートで人民元が過度に安くならないよう「ドル売り・人民元買い」を行わなければなりません。
この人民元防衛のために突っ込まなければならないドルは大量で、ここまでの「人民元が切り下げられてきた経緯」からすると(さらにドルの流出を抑えにかかっている施策もあり)、現金たる「Deposits(預金)」は実は少ないのではないのか? 盤石ではないのではないか? というわけです。
さらに、かねてより識者から「新興国(中国が進出しているアフリカ・中南米など)に対する融資残高も外貨準備に組み入れているのではないか」と指摘されています。これは当然ながらいざというときに使えるものではありません。
このような点から、中国の外貨準備については「?」であり、実は危機に際しては脆弱(ぜいじゃく)なのではないかとも考えられるのです。
⇒参照・引用元:『中国経済はどこまで崩壊するのか』安達誠司(PHP新書,2016年)
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