2025年06月04日、アメリカ合衆国の司法省が「中国人2名についての容疑」について公表しました。
被告(中国人)であるYunqing JianとZunyong Liuが、農作物に被害を与える可能性がある真菌「Fusarium graminearum(フザリウム・グラミネアラム)」を合衆国に密輸したとして、共謀、密輸、虚偽陳述、ビザ詐欺などの罪で起訴されました。
この真菌は、小麦、トウモロコシ、大麦などの主要作物に「ヘッドブライト病」を引き起こし、作物の品質と収量を低下させるとともに、嘔吐毒素(vomitoxin)などの有害なマイコトキシンを生成し、人間や家畜に健康被害をもたらす可能性と持つものです。
合衆国では年間約10億ドルの農業損失が報告されています。
司法省は、この事件を国家安全保障上の重大な懸念事項と位置づけており、特に大学の研究施設を利用して有害な生物病原体を密輸しようとした点に注目しています。
また、被告の一人が中国共産党の党員であることや、中国政府からの研究資金を受け取っていた可能性があることも指摘されています。
司法省の公示を下掲し、全文を和訳します。URLのリンクも貼りますから、信用ならんという方は、ご自分の目で確認ください。
デトロイト発――
中華人民共和国(中国)の市民であるユンチン・ジアン(Yunqing Jian、33歳)およびズンヨン・リウ(Zunyong Liu、34歳)が、共謀、米国への物品密輸、虚偽陳述、ビザ詐欺の罪で刑事告発されたと、アメリカ合衆国連邦検事ジェローム・F・ゴーゴン・ジュニアが発表した。この発表には、連邦捜査局(FBI)デトロイト支局長チェイヴォリア・ギブソン、および米国税関・国境警備局(CBP)現場業務局長マーティ・C・レイボンも同席した。
FBIは、ジアンおよびリウがFusarium graminearum(フザリウム・グラミネアラム)という真菌を米国に密輸した疑いに関連してジアンを逮捕した。
この真菌は、科学文献上「潜在的な農業テロ兵器」と分類されている。
この有害な真菌は小麦、大麦、トウモロコシ、米に「穂腐病(head blight)」を引き起こし、毎年世界で数十億ドルにのぼる経済的損失をもたらしている。
また、この真菌が産生する毒素は、人間や家畜に対して嘔吐、肝臓損傷、生殖障害を引き起こす。
告発状によれば、ジアンは中国でこの病原体に関する研究に対して中国政府から資金提供を受けていた。
さらに、ジアンの電子機器には、彼女が中国共産党の一員であること、そして党への忠誠を示す情報が記録されていたとされる。
また、告発では、ジアンの交際相手であるリウは、中国の大学に勤務し、同じ病原体に関する研究を行っていること、当初は真菌の密輸を否定していたが、後にデトロイト・メトロポリタン空港を経由して米国に密輸したことを認めたとされている。
その目的は、ジアンが勤務していたミシガン大学の研究室でその真菌について研究するためだったとされている。
合衆国連邦検事ゴーゴンは次のように述べた:
「中国共産党への忠誠を誓う人物を含む、これら中国国民によるとされる行為は、我が国の国家安全保障にとって極めて重大な懸念事項である。
彼ら二人の外国人は、『潜在的な農業テロ兵器』とされる真菌をアメリカの中心部に密輸し、ミシガン大学の研究施設を使って計画を進めようとしていたと見られている」
FBIデトロイト支局長チェイヴォリア・ギブソンは次のように述べた:
「中国籍のユンチン・ジアンおよびズンヨン・リウに対する今回の連邦刑事告発は、われわれが地域社会を守り、国家安全保障を維持する上での極めて重要な一歩である。
彼らは、地元大学の研究施設へのアクセスを悪用して、生物病原体の密輸という行為に及び、それは公衆の安全に対する差し迫った脅威をもたらした。
FBIデトロイト支局カウンターインテリジェンス・タスクフォースによる卓越した捜査努力と、合衆国税関・国境警備局の現場業務局との緊密な連携により、これらの危険な活動は効果的に阻止された。
FBIは、ミシガン州の住民を守り、米国をこの種の重大な脅威から防衛するため、引き続き法執行機関のパートナーと協力していく」
米国税関・国境警備局(CBP)現場業務局長マーティ・C・レイボンは次のように述べた:
「ユンチン・ジアンおよびズンヨン・リウに対する本日の刑事告発は、合衆国民を農業経済を壊滅させ、人々に危害を及ぼしかねない生物学的脅威から守る上で、CBPが果たす重要な役割を示している。
特に、主要大学の研究者が、潜在的に有害な生物材料を密かに合衆国に持ち込もうとした場合にはなおさらである。
今回の捜査は、全米のCBPオフィスと連邦機関との共同による複雑な調査であった。われわれの国境をあらゆる脅威から守り、国家安全保障の利益を確保するため、彼らのたゆまぬ努力に感謝する」
ジアンは本日午後、デトロイトの連邦裁判所に出廷し、告発に対する初回審理を受ける予定である。
なお、刑事告発はあくまで「容疑」であり、被告の有罪を意味するものではない。
刑事告発に基づく重罪裁判は行えず、捜査終了後に大陪審起訴を行うかどうかが判断される。
本件は、FBIおよびCBPが合同で捜査している。
(最終更新:2025年6月4日)
分らないのは、合衆国内にも存在するであろう「Fusarium graminearum(フザリウム・グラミネアラム)」をなぜわざわざ外国から合衆国に持ち込む必要があったのか?――です。
岐阜大学の植物病原ゲノム学研究室によれば、
ムギ類赤かび病菌はムギやイネなどの穂を侵すだけでなく、デオキシニバレノールやゼアラレノンなどかび毒汚染を起こして大きな問題となっている。ムギの主要輸出国である米国では本病害だけで毎年200億円近い被害を受けている。
⇒参照・引用元:『岐阜大学 植物病原ゲノム学研究室』「ムギ類赤かび病について」
とのこと。
病気が発生しているということは、その原因となる菌だっているわけです。なぜ外国から密輸する必要があったのでしょうか? 外国の菌と比較研究するためでしょうか?
司法省の発表にあるとおり、現時点ではまだ「容疑」の段階。有罪が確定したわけではありません。
ただの「研究のためについ。テヘペロ」かもしれませんし、最悪の場合、農業テロが疑われる事案です。
(吉田ハンチング@dcp)