半導体戦争の一環です。
2025年08月29日(現地時間)、『BIS』(米商務省産業安全保障局)が以下のプレスリリースを出しました。
中国にある外国資本の半導体ファブに対する輸出管理の抜け穴を商務省が塞ぐ
2025年08月29日ワシントンD.C. — 本日、商務省産業安全保障局(Bureau of Industry and Security, BIS)は、バイデン政権期の抜け穴を塞いだ。
この抜け穴により、ごく一部の外国企業は中国向けに半導体製造装置と技術をライセンス不要で輸出することが可能になっていた。
今後、これらの企業は自社の技術を輸出するためにライセンスを取得する必要があり、競合他社と同じ条件に置かれることになる。
この抜け穴はValidated End-User(VEU)プログラムとして知られている。
2023年、バイデン政権はVEUプログラムを拡大し、選定された一部の外国の半導体メーカーが中国で半導体を製造するために、合衆国原産の物品、ソフトウェア、技術の大部分をライセンス不要で輸出できるようにした。
合衆国資本のファブにはこの特権は付与されていなかった――そして今回の決定により、外国資本のファブにもこの特権は付与されないことになる。
旧VEU参加企業は、連邦官報に規則が掲載されてから120日の間に、輸出ライセンスを申請・取得しなければならない。
今後、BISは、旧VEU参加企業が中国にある既存のファブを操業できるようにするための輸出ライセンス申請を認める意向である。
もっとも、BISは、中国にあるファブにおける能力拡張や技術のアップグレードのためのライセンスを認める意向はない。
商務省産業安全保障担当次官のジェフリー・ケスラーは次のように述べた。
「トランプ政権は、輸出管理の抜け穴を塞ぐこと――とりわけ米国企業を競争上不利に置く抜け穴を塞ぐこと――にコミットしています。本日の決定は、このコミットメントを果たすための重要な一歩です」
これまで特例措置とされていた「許可」の撤回です。
アメリカ合衆国は中国に半導体を製造させないために、2022年、国務省は半導体製造装置の販売に対する包括的な規制を導入しました。
しかし、この規定に対する抜け道として、『サムスン電子』『SKハイニックス』などのメーカーに対して(事実上の)認可を与えていました。
しかし、この認可を撤回するライセンス制の変更となりました。
今回の変更により、半導体製造装置が中国に導入できなくなりますので、『サムスン電子』『SKハイニックス』の中国本土工場は厳しい状況となります。
ずいぶん前にご紹介したが、『SKハイニックス』は『Intel(インテル)』からファウンドリーを購入してまだ保有しています。

上掲記事でご紹介したとおり、『インテル』から『SKハイニックス』が購入したのはNAND型フラッシュメモリー事業です。
面白いことに、『インテル』は『SKハイニックス』に事業を売却したものの、「大連工場の運営権は2025年03月末まで『SKハイニックス』には譲渡されない」となっていました。
当時の条件がまだ生きているなら、『SKハイニックス』は2025年03月末に『インテル』に対して18億ドルを支払い(第2次クロージング分)、大連工場の運営権を入手したはずです。
2025年08月22日、合衆国政府は『インテル』への投資を公表。
読者の皆さまもご存じのとおり、合衆国政府は『インテル』株式の9.9%相当「4億3,330万株」を、1株当たり「20.47ドル」と市場価格より割安な価格で取得し、筆頭株主となります。
総額約89億ドルの原資は、バイデン前政権下で制定された「CHIPS法」に基づく未支給の補助金57億ドルと、「Secure Enclaveプログラム」で支給が予定されていた補助金32億ドルです。
つまりトランプ政権は、予定された支出を使って『インテル』株式を入手したわけです。なんともゲスいやり口です。
大連工場を『SKハイニックス』に押し付けてしまいましたし、合衆国政府が筆頭株主となった『インテル』は中国本土から足抜けです。
今回の「特例撤回」に基づくライセンス認可によって「120日間以内に新しいライセンスを取得しなければならない」となっています。
ライセンス申請は認める方向ではあるものの、能力拡張や技術のアップグレードは認めない――となっています。
韓国政府はまたぞろトランプ政権に「陳情」しなければなりません。
(吉田ハンチング@dcp)







