2025年09月11日(現地時間10日)、急きょ韓国の趙顕(チョ・ヒョン)外相が渡米し、アメリカ合衆国のマルコ・ルビオ国務長官と会談を行いましたが、結論としては――、
「韓国政府がチャーターした飛行機で、合衆国当局が逮捕拘禁した韓国人300余を、現地時間10日に帰国の途につかせる」
――は実現しませんでした。
またこの会談について、合衆国の国務省は「韓国政府が遺憾の意を表明した“韓国人の拘禁問題”について、まったく言及しないリードアウト」を出しました。
韓国側は「即時釈放」を懇請した!
この不可思議なリードアウトに対して、韓国外交部は以下のようなプレスリリースを出しました。
全文和訳します。非常に興味深い内容です。
趙鉉長官、米国務長官兼国家安全保障補佐官面談(9.10.)結果
合衆国を訪問中の趙鉉(チョ・ヒョン)外交部長官は現地時間9.10.(水)午前、米マルコ・ルビオ(Marco Rubio)国務長官兼国家安全保障補佐官と面談を行い、米当局によりジョージア州で拘禁されているわが国民の状況の迅速な解決と米韓首脳会談(8.25.)の後続措置、韓米の高位級外交日程および北朝鮮問題等について意見を交換した。
趙長官は、トランプ大統領に対する李在明大統領の特別なご挨拶を伝えるとともに、成功的な米韓首脳会談で形成された深い絆関係を土台に、より強力な韓米同盟を発展させていくことを期待するというメッセージを伝えた。
これに対しルビオ長官は謝意を表し、李大統領のご挨拶をトランプ大統領に報告すると述べた。
趙長官は、トランプ政権の合衆国製造業復興の努力に寄与すべく技術とノウハウを伝授するために合衆国に来たわが労働者たちが連行される過程が公開され、わが国民全体が一様に大きな傷と衝撃を受けたことについて深い懸念を伝えた。
特に、犯罪者ではない以上、手錠などによる身体的束縛なしに速やかに合衆国を出国できるようにし、今後の合衆国再訪問にいかなる不利益も受けないよう、合衆国行政府の格別な関心と支援を強く要請した。
併せて、類似事例の再発防止のために新たなビザ・カテゴリーを作ることを含む多様な方策の議論のため、米韓の外交―国務省ワーキンググループの新設を提議した。
これに対し、ルビオ長官は、トランプ大統領としても李大統領と導き出した米韓首脳会談の成果を高く評価しており、当該事案に対する韓国民の敏感性を理解し、特に合衆国経済・製造業復興のための韓国の投資と役割について前向きに見ていると述べた。
これに伴い、トランプ大統領が韓国側が望むとおりに可能な限り実現できるよう、迅速に協議し措置するよう指示したと応じた。
そして、迅速な後続措置のために協力していこうと述べた。
一方、両長官は米韓首脳会談を含む高位級外交日程について議論した。
趙長官は、去る08月の首脳会談の成果文書をできるだけ早期に発表し、関連の後続措置が積極的に履行されるよう努力していこうと述べ、ルビオ長官は内部的に検討し可能な方策を模索してみると述べた。
両長官は、最近の中国戦勝節を契機とした金正恩委員長の訪中の結果と含意について意見を交換した。
趙長官は、わが大統領が言及したペースメーカーとしての役割を積極的に推進していくとし、そのための協力を模索していこうと述べた。
これに対し、ルビオ長官は対北対話に開かれているとし、そのために米韓間で緊密な共助を維持していくと述べた。
本日の面談に基づき、わが政府は現場で合衆国側と行政的な実務協議を積極的に展開しており、必要なすべての手続きを完了して国民ができるだけ早い時期に拘禁から解除され帰国できるよう、あらゆる努力を傾けている。
以上
韓国側は、当然ですが「拘禁された韓国人の解放」を懇請したことが、このプレスリリースから分かります。
国務省が公表した「そんなイシューなどない」といわんばかりのリードアウトとは全く異なっています。

韓国側は、逮捕拘禁された韓国人が手錠をかけられ鎖で腰をつながれた光景が展開されたことについて、問題視しています。
ご注目いただきたいのは、
これに対し、ルビオ長官は、トランプ大統領としても李大統領と導き出した米韓首脳会談の成果を高く評価しており、当該事案に対する韓国民の敏感性を理解し、特に合衆国経済・製造業復興のための韓国の投資と役割について前向きに見ていると述べた。
これに伴い、トランプ大統領が韓国側が望むとおりに可能な限り実現できるよう、迅速に協議し措置するよう指示したと応じた。
――です。韓国メディアでは、
トランプ大統領が「韓国の望むようにしてやれ」と言った
――というふうに報じられていますが、間に「可能な限り」が入っています。字義どおり捉えるなら「韓国が望んでも“できないことはしないよ”」という意味でしょう。
もうひとつ見逃せないのは――、
両長官は、最近の中国戦勝節を契機とした金正恩委員長の訪中の結果と含意について意見を交換した。
――です。
ここで金ちゃんファミリー三代目・金正恩総書記の名前が出るのは、今回の趙顕(チョ・ヒョン)の外交部長官の訪米の意味「拘禁された即時解放」からすれば、かなり唐突です。
先にご紹介したとおり、李在明(イ・ジェミョン)さんは米韓首脳会談の真ウラで、韓国序列No.2の禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長を中国の軍事パレードに参加させています。
李在明(イ・ジェミョン)さんによる「台湾にも謝謝、中国にも謝謝」を体現した、実用外交なるものの発露だったのですが、合衆国政府は見逃してなどいないことを意味しています。
今回の合衆国当局による「韓国人300余の逮捕劇」は、一種の「人質外交」と見ることができます。
合衆国は「合衆国につくのか。それとも中国につくのか。どっちなんだ」と問うているのです。
(吉田ハンチング@dcp)






