アメリカ合衆国のトランプ政権が関税交渉なるもので、日本から5,500億ドルをカツアゲすることにしました。(何を言っているのかまったく分からない)石破茂が首班となった政権はこのカツアゲを「是」としました。
ノーベル経済学省を受賞したことのある、ポール・クルーグマン教授がトランプ政権についてどのように述べているのか――をご紹介します。
ギリシャメディア『Καθημερινή(カティメリニ)』紙が、クルーグマン先生にインタビューを行った記事から一部を以下に引きます。
インタビューが行われたのは、合衆国が中国に大して最大145%の関税を科すとしたときです(記事は2025年04月20日付け)。
(前略)
最近、『カティメリニ』紙は再びクルーグマンに連絡を取り、今回はトランプの中国に対する「貿易戦争」と、トランプが呼んだ「相互的」関税の発動について、彼の第一印象を聞いた。(中略)
――1週間のうちに、トランプはEUとの貿易戦争を引き起こし、それを停滞させ、そして中国に145%の関税を発表した。彼の「新時代」の次なる日は何なのか?
「起きていることは狂気の沙汰であり、われわれは今、歴史上最大の『貿易ショック』について語っているのです。
ご存じのように、これは合衆国の平均関税率の大幅な引き上げであり、これまで一度も起きたことがなく、しかも国際貿易はいままで以上に巨大化している。
だからこそ、これは大きなショックであり、不確実性を生み出しているのです。
加えて、誰も関税が何を引き起こすか、そして(トランプの)次の発表が何になるか分からない。
だから、この分野ではまだ多くのことが起こる可能性があり、また国際貿易はトランプが本当に急進的なことをしている数多の分野のうちの一つに過ぎないことに注目すべきです。
われわれは政府、雇用における急進的な削減や税制政策の巨大な変化を抱えており、それがどこに行き着くのか考えるのは非常に難しい。だからこそ問題は、この環境の中で人々はどうやって自分たちの生活やビジネスを計画できるのか、ということです」
――トランプは「相互的」関税をどう計算したのか?
「狂気の沙汰です。
実際に彼らが使った公式はこうです:二国間貿易不均衡を合衆国の輸入額で割り、それを半分にする。
そして基本的に、その結果が二国間赤字を消滅させるという主張に基づいている。
しかし現実には、これは全く意味を成さない。
ただの公式であり、それを誰か――基本的に無知な人間――が考えたのか、あるいは単にChatGPTに関税の公式を考えさせたのか議論があるほどです。
要するに、これは経済学者が考え出せるような公式ではありません」
――あなたの見解では、なぜ彼は世界的不況を賭けの対象にしているのか?
「彼自身がそれをしていると気付いていないのかもしれません。
つまり、ここに緻密に計算された戦略があると考える人は、おそらくでっちあげているに過ぎない。おそらく実際にはそんなものは存在せず、彼はただ本能に従っているのでしょう。
理解しなければならないのは、彼の周囲には決して彼が間違っていると伝えない人々しかいないということです。
そしてたまたま、合衆国の法律は、大統領に関税に関してほとんど一方的な権限を与えているのです。
だから彼は議会を通して法案を通す必要がない。
非常事態を宣言して好きなように関税を課すことができる。そして過去にはそれが問題になることはなかった。
というのも、これまでは大統領がその権限を慎重に使うと信じられてきたからです。しかし、誰かがただ関税を課したいと思えば、彼はそれを実行できるのです」
(後略)
結び近辺の発言はもっと興味深いものです。以下に引きます。
(前略)
――一方で、ヨーロッパにとっては、より安価なアジア製品の輸入から利益を得ることはできるのでしょうか?「それは起こり得ることです。そのほかにも、不況によって石油価格が下落し、それがヨーロッパを助けるかもしれません。
しかし、実際にどうなるかを見るには待たなければならないでしょう。
もしトランプが現れなければ、ヨーロッパ自体が中国に関税を課していた可能性が高いのです。
なぜなら中国は大きな貿易黒字を抱えており、ほとんどの貿易黒字はその基盤となる経済によって正当化されるものだからです。
だから私は、ヨーロッパが中国からの安い輸入品を歓迎するかどうか確信がありません。反発があるかもしれませんが、その結果はまだ分からないのです。
注目すべきは、誰もが国際貿易をいかに組み立てるかを考える必要があるということです。
合衆国がもはや信頼できる行為主体ではなく、世界システムにおいて「ならず者」的プレーヤーとなっているのですから」
――トランプが「解放の日」と呼んだものは、あなたにとっては「歴史上最大の貿易ショック」でした。現実的に見て、どの学派が勝利するのでしょうか?
「ここには学派など存在しないと思います。
つまり、今起きていることの背後にある経済理論を理解しようとするなら、理論は存在しません。
これはすべて『帝王的大統領』の本能によるものです。
合衆国政治の進化のあり方や法律の書き方の一部によって、彼はほぼ無制限の権限を持ち、やりたい放題ができるのです。
だから、2年後や3年後、人々が『煙を上げる残骸』を見回すときに何が起こっているか、私は本当に分からない。
しかしこれは経済学派同士の対立ではなく、大統領の本能と現実との衝突なのです」
この記事が出てから間もなく半年がたったことになります。
「ならず者的なプレーヤーになった合衆国」を日本人は信用できるのでしょうか。いや、信用すべきなのでしょうか?

:合衆国からその国への輸出
:その国から合衆国への輸入
:価格弾力性
:価格への転嫁率
と定義されています。
パラメータとして輸入需要の価格弾力性「=4」、価格への転嫁率「=0.25」を採用しており、「=1」なので、式は、
「(輸出 – 輸入)/輸入」 = 「赤字の大きさ/輸入」
と簡約されます。クルーグマン先生が上記で「二国間貿易不均衡を合衆国の輸入額で割り、それを半分にする」と指摘しているのはこの点です。
で、この式から得られた比率を「割引」として半分にする――というのがホワイトハウスの説明です。
日本について検算してみると以下のようになります。
『U.S. Census Bureau』(米国国勢調査局)の2024年の「対日“財”貿易データ」によると、
輸入(日本からの輸入)= 1,483億7,050万ドル
バランス(輸出 - 輸入)= −693億9,210万ドル
関税率の基礎数字 = 2国間の貿易不均衡(693.9億ドル)/合衆国の輸入(1,483.7億ドル) = 約46.77%
これを半分にするので「約23.38%」。

トランプ大統領が大威張りで各国の関税率として一覧表を出したとき、日本に科せられる関税率は「Japan 24%」となっていました。
ただし、クルーグマン先生が述べているとおり、このような式や算出された数字には何の意味もありません。どんな式だって勝手に合衆国が作れるからです。
簡単にいえば「政治的な意思を正当化するための“数字遊び”」です。
(吉田ハンチング@dcp)






