2025年11月14日、韓国の産業通商資源部が「米韓の戦略的投資についてのMOU(了解覚書)署名」とし、韓国語版の内容を公表しました(ただし【非公式訳文】となっています)。
全文和訳を下掲します。
大韓民国政府とアメリカ合衆国政府との間の戦略的投資に関する了解覚書
大韓民国政府(以下「韓国」という)とアメリカ合衆国政府(以下「米国」という)は、
強力で協力的な相互関係の重要性を確認し;
2025年07月30日に発表された米国と韓国間の合意を忠実かつ迅速に履行することを約束し;
韓国および韓国企業が、経済および国家安全保障上の利益を増進するために、造船、エネルギー、半導体、医薬品、重要鉱物、人工知能/量子コンピューティング等を含むがこれらに限定されない多様な分野にわたり合衆国に投資することが、両国双方の最善の利益に合致することを認識し;
本了解覚書に基づく総投資には、合衆国が承認した造船分野における1,500億米ドルの投資(以下「承認投資」という)が含まれることを認め;
本了解覚書に基づく総投資には、また韓国が投資することを約定した2,000億米ドルの追加投資(以下「投資」という)も含まれることを認め;
以下のとおり合意する。
投資の選定
1.合衆国大統領は、「投資委員会」の推薦を受けて「投資」を選定する。「投資委員会」は、商業的に合理的(注:別添の定義条項に別途定義される)であると判断される「投資」のみを大統領に推薦することを意図する。投資の実行および運営
2.投資約定(commitment)は、本了解覚書締結日から2029年1月19日まで随時行われなければならない。ただし、特定の日付や時間まで、またはその他の理由により「投資」を清算または処分する義務はない。
3.本了解覚書に基づき、合衆国大統領は「投資」および「承認投資」を推薦し監督するための投資委員会(以下「投資委員会」という)を設立する。
4.「投資委員会」は米国商務長官が委員長を務め、投資委員会が随時選任するその他の委員で構成される。
単一もしくは複数の合衆国連邦省庁または機関の持分または戦略的利益に関連し、またはこれに重大な影響を及ぼす可能性のある潜在的な「投資」または「承認投資」の場合には、「投資委員会」委員長が決定するところに従い、当該省庁または機関が関与する。
5.「投資委員会」は、大統領に「投資」を推薦する前に、韓国と直接、または産業通商部長官を委員長とし、韓国と合衆国が指名した者で構成される協議委員会を通じて韓国と協議する。協議委員会は、特に各国の関連する戦略的・法的考慮事項について、「投資委員会」に意見を提示しなければならない。
6.合衆国投資アクセラレーター(促進官)は、本了解覚書に基づき、「投資」、「承認投資」および投資活動(資金を提供する関連韓国機関との相互調整を含む)を実行・文書化し、「投資」および「承認投資」を管理し
執行する責任を負う。資金調達
7.合衆国は随時、韓国による検討のために「投資」を提示し、韓国は、合衆国大統領が当該「投資」を選定したことを韓国が通知を受けた日から少なくとも45営業日が経過した日に、関連プロジェクトの特定の資金調達および設備投資マイルストーン(資本支出段階別目標)に必要な関連「投資」金額を分割して、合衆国投資アクセラレーター(促進官)が指定した口座に、直ちに使用可能な米ドル建て資金として調達する。8.韓国は、各年ごとに総額200億米ドルを超える「投資」金額の調達を要求されることはない。
9.韓国は、単独の裁量により、特定の「投資」に対する「投資」金額を調達しないと決定することができ、調達しないと決定する前に合衆国と協議する。
合衆国は、本了解覚書に基づく協議手続きの後も、韓国が要請された
日付までに「投資」金額全額を調達しない場合(以下「未調達金額」という)、韓国はみなし配分額(Deemed Allocation Amount)に基づく分配金を受領する権利を失い、その代わりに修正配分額(Revised Allocation Amount)に基づく分配金を受領すること、および第15項(A)号のみなし配分額への言及は修正配分額に置き換えられることを再確認する。合衆国がみなし配分額に基づいて受領したであろう金額と、修正配分額に基づいて実際に受領する金額との差額を「キャッチアップ(Catch-up)金額」という。
米国が「未調達金額」に相当するキャッチアップ金額を受領するまで、修正配分額に基づく分配金が支払われ、合衆国が当該金額を受領した後には、みなし配分額に基づく分配金の支払いが再開される。
韓国が「投資」に対する資金調達を行わないことを決定する場合、合衆国はまた、合衆国大統領が定める税率で韓国産輸入品に対して関税を賦課することができる。
韓国が本了解覚書を忠実に履行し、「投資」金額に対する資金調達に失敗しない限り、合衆国は2025年11月14日付共同説明資料(Joint Fact Sheet)の「核心産業の再建および拡張」項目に記載された約定事項を遵守する方針である。
10.合衆国は、可能な場合には、(A)「投資」および「承認投資」の対象プロジェクトに対して、合衆国連邦政府所有地の賃貸、アクセス、用水、電力および/またはエネルギー供給を提供し、(B)オフテイク契約(off-take arrangements)を取りまとめる方針である。
(下記で定義される)関連法令に従い、米国は「投資」および「承認投資」の対象プロジェクトに関連して適用される関連規制手続を迅速化する方針である。
韓国のベンダー(Vendor)、供給業者およびプロジェクト管理者
11.「投資」特別目的会社(以下「SPV」という)、プロジェクトSPV、「投資」および「投資」対象プロジェクトに商品・サービスを提供するベンダーおよび供給業者の選定にあたり、合衆国は、可能で利用可能である場合には、類似の外国ベンダーおよび供給業者の代わりに韓国のベンダーおよび供給業者を選定しなければならない。韓国はそのようなベンダーおよび供給業者を推薦することができ、米国はその推薦を信義誠実の原則(good faith)に基づき検討する。
12.合衆国は、可能で利用可能である場合には、各プロジェクトについて韓国が推薦するプロジェクトマネージャーを選定しなければならない。
当該プロジェクトマネージャーは、提供されたサービスに対する対価として、当該プロジェクトに合理的な手数料を請求することができる。
キャッシュフローおよび分配
13.合衆国は新たな「投資」SPVを設立する。韓国は投資資金を直接「投資」SPVに調達するか、または韓国の機関もしくはその他の団体が投資資金を直接「投資」SPVに調達するよう取り計らう。
「投資」SPVは、合衆国または合衆国が指名する者が無限責任社員(general partner)の資格で運営・管理する。
「投資」SPVは、本了解覚書第14項から第17項までの内容に合致するような実質的に合意された形態のガバナンスおよび分配規定を備えることになる(「投資」SPVの最終的な企業形態に応じて必要な場合、調整され得る)。
14.合衆国は、投資から生じるすべてのフリーキャッシュフロー(free cash flow)が本了解覚書に従って分配されるようにする。
「投資」対象プロジェクトの運営および管理機関は、随時、当該プロジェクトから発生するフリーキャッシュフローが当該プロジェクトSPVに分配されるようにしなければならず(それぞれ「分配金(Distribution)」)、当該プロジェクトSPVは、さらにこれらの分配金を「投資」SPVに分配しなければならない。
15.第9項に従い、「投資」SPVはプロジェクトSPVから受領したすべての分配金を、毎年、米ドル建てで以下の優先順位に従って分配しなければならない。
(A) まず、みなし配分額に相当する全額が合衆国および韓国にそれぞれ分配されるまで、米国に50%および韓国に50%
(米国税控除後);
(B) その後は、合衆国に90%および韓国に10%(米国税控除後)。16.分配金は現金によるものとし、まず「みなし配分額」定義の(C)号に該当する金額を充当し、その後「みなし配分額」定義上(A)号に該当する金額を充当するものとみなされる。
17.20年以内に韓国が総みなし配分額を受領することが合理的に困難であることが明らかになった場合、合衆国は、第15項(A)号に基づく合衆国と韓国間の分配金の配分(allocation of Distributions)およびそのような配分を公平に調整することについて、信義誠実の原則に基づいて協議することに合意する。
投資紹介義務の不存在
18.合衆国と韓国はともに、潜在的投資機会を「投資委員会」に紹介する義務を負わない。
投資分野
19.合衆国内における「投資」は、経済および国家安全保障上の利益の増進に資するとみなされる分野に重点的に行われる予定であり、そこには造船、エネルギー、半導体、医薬品、重要鉱物、人工知能/量子コンピューティング等が含まれるが、これらに限定されない。
20.「投資委員会」が承認したところに従い、韓国は必要に応じて直接、または協議委員会を通じて「承認投資」を支援(facilitate)することにし、そこには韓国企業による米国造船業分野への直接投資のみならず、米国造船業のための韓国造船企業に対する債務保証その他の手段による金融が含まれる。
韓国が本了解覚書に基づく「承認投資」を支援できない場合、合衆国は合衆国大統領が定める税率で韓国産輸入品に対して関税を賦課することができる。
責任の免除および制限
21.合衆国、韓国、「投資委員会」、協議委員会またはそれらの下部組織、省庁、職員、代理人、被指名人または関係者は、重大な過失または故意の違法行為を除き、いかなる「投資」または「承認投資」と関連して行われた判断の行使、作為または不作為についても、合衆国、韓国またはその他いかなる者に対しても責任を負わない。
本了解覚書の他のいかなる条項または法律上もしくは衡平法上の規定にかかわらず、合衆国と韓国はそれぞれ、本了解覚書、「投資」または「承認投資」に関連し、各国または各国の下部組織、省庁、職員、代理人、被指名人または関係者が各自の役割またはサービス、もしくはその資格において行ったあらゆる作為または不作為について、相手国または第三者に対していかなる信認義務(fiduciary duties)も負わないことに同意する。
費用
22.合衆国と韓国はそれぞれ、「投資」および「承認投資」の組織および運営に関連する費用を各自負担する。
ただし、合衆国と韓国は、「投資」の執行に関連して発生した合理的な実費(out-of-pocket expenses)を、当該プロジェクトSPVの利用可能資金から償還を受けることを模索することができる。
23.合衆国と韓国は、本了解覚書の解釈および/または履行により両国間に生じ得るすべての不一致または紛争を、可能な限り、相互協議(協議委員会の枠組み内での協議を含む)を通じて友好的に解決する方針である。
法的性格
24.合衆国と韓国は、それぞれの国内契約、法律および政策(または後続の契約、法律または政策)(以下総称して「関連法令」という)を遵守する意向を表明する。
25.本了解覚書は、合衆国と韓国間の行政上の合意であり、法的拘束力を有する権利および義務を発生させない。
本了解覚書はいかなる第三者にも権利または利益を付与せず、また合衆国または韓国の「関連法令」もしくは国際法に基づくいかなる権利または義務も発生させない。
26.本了解覚書のいかなる内容も、それぞれの合衆国および韓国の「関連法令」と矛盾してはならない。
改正および中止
27.本了解覚書は最終署名時に効力を生じ、中止されるまで有効である。
合衆国と韓国は、本了解覚書に定める事項を履行する前に、必要な国内法制化手続を履行する必要がある場合があることを認識する。
本了解覚書は、合衆国と韓国の相互の書面合意により、いつでも修正することができる。
各国は、本了解覚書を中止する意向を相手国に書面で通知することにより、いつでも本了解覚書を中止することができ、本了解覚書第23項に基づく不一致や紛争を友好的に解決するよう努めなければならない。
そのような場合、両国は既に行われた既存の「投資」や「承認投資」の取り扱いについて友好的に協議しなければならない。
合衆国と韓国は、それぞれ本了解覚書の運用に影響を与える自国の「関連法令」のすべての変更について、相手国に書面で通知することが期待される。
署名
2025年11月14日、ソウルおよびワシントンD.C.において、それぞれ英文本2部に署名した。
大韓民国政府 アメリカ合衆国政府
※この後に「付録」が続きますが後略とします:引用者注
(吉田ハンチング@dcp)







