韓国政府「税制を使って民間にドルを売らせる」異例の政策を披露。

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2025年12月24日、クリスマスイブの日に駆け込みで韓国の企画財政部がウォン安対策の措置を発表しました。

韓国では12月25日は祝日です。

「国内資本市場活性化および外国為替市場の構造的需給不均衡解消のための国内投資・外国為替安定税制支援方案を発表」という長いタイトルのプレスリリースですが、要点は「ウォン安阻止のために、こんなことを言いだした」です。

以下に一応全文和訳します。長いので面倒くさい方は次の小見出しまで飛ばしていただいても大丈夫です。

国内資本市場活性化および外国為替市場の構造的需給不均衡解消のための国内投資・外国為替安定税制支援方案を発表

– 海外株式売却後に国内長期投資する場合、期限付きで海外株式譲渡所得税の減免を新設 –
– 個人投資家用先物為替の導入および為替ヘッジ時の譲渡所得税控除の新設 –
– 国内親会社の海外子会社受取配当金の益金不算入率の引き上げ –

企画財政部は12月24日(水)、国内資本市場の活性化を促進し、外国為替市場の構造的な需給不均衡を解消するため、国内投資・為替安定の税制支援方案を発表した。

最近、個人投資家の海外投資が急増する中で、投資収益の変動性を緩和するための為替リスク管理の必要性が浮上している。

また、今年の国内株式市場は世界の資本市場の中で最も良好な様相を見せているが、個人投資家の海外株式投資は急増した一方、国内株式投資は減少しており、輸出企業などの海外資産の還流を促進して国内の雇用・投資を誘致すべきだという意見も拡大している。

これにより政府は次の三つの制度改善を推進しようとしている。

➊国内市場復帰口座(RIA:Reshoring Investment Account)に対する税制支援の新設

まず、個人投資家が2025.12.23.までに保有している海外株式を売却した資金をウォンに両替して国内株式に長期投資(例:1年間保有)する場合、海外株式譲渡所得税に対して期限付き(1年)の税制優遇を付与する。

1人当たり一定の売却金額を限度(例:5,000万ウォン)として譲渡所得税を非課税とし、復帰時期によって税額減免の恩恵を差別的に付与する予定である。

*例)’26年第1四半期復帰 100%、第2四半期復帰 80%、下半期復帰 50%

➋個人投資家用先物為替の導入および為替ヘッジ時の譲渡所得税控除の新設

第二に、政府は活用可能な為替リスク管理手段が不足している個人投資家のため、主要証券会社が「個人投資家用先物為替売却商品」を迅速に発売できるよう支援し、2025.12.23.までに保有している海外株式に対して為替ヘッジ(先物為替売却)を実施した場合、譲渡所得税の優遇*を付与する。

例)
➀ 個人別為替ヘッジ認定限度:年平均残高基準 1億ウォン
➁ 為替ヘッジ商品購入額(年平均残高)の5%(最大500万ウォン)を海外株式譲渡所得税計算時に追加所得控除

個人投資家の立場では、保有している海外株式を直接売却しなくても将来の為替下落(ウォン高)による為替損失を最小化でき、外国為替市場ではドルなど外貨供給が即時に増え、安定効果をもたらすと期待される。

➌海外子会社受取配当金の益金不算入率の引き上げ
第三に、国内親会社が海外子会社から受け取る配当金に対する二重課税調整のため、海外子会社受取配当金の益金不算入率を95%から100%に引き上げる。

今回の税制支援により、’25年第3四半期末の個人投資家海外株式保有残高(国際投資対照表基準)1,611億ドルのうち相当部分が国内投資などへ転換されたり、為替ヘッジが行われたりすれば、外貨供給拡大効果が現れるものと予想される。

政府は国内投資拡大、外国為替市場安定のため、速やかに立法(租税特例制限法の議員立法)を推進する予定である。

特に、海外資産の国内還流を奨励するため、➊RIAと➋為替ヘッジ税制は2026.1.1以降RIAおよび個人投資家用先物為替売却商品が発売され次第直ちに恩恵を付与し、➌益金不算入率拡大は2026.1.1以降の配当分から適用する。

⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「国内資本市場活性化および外国為替市場の構造的需給不均衡解消のための国内投資・外国為替安定税制支援方案を発表」

韓国政府が狙っているのは外貨の国内還流とウォン替えること

韓国政府が掲げたお題目は、

「国内資本市場の活性化」
「外国為替市場の構造的な需給不均衡の解消」

――です。つまり、

・個人資金が海外に流れすぎている
・国内市場が空洞化している
・為替市場ではドル需要が過剰

(ウォン売り・ドル買いが多い/これがウォン安を促進する)

という問題を是正したい、というのが目的です。

背景には――、

・ウォンが急落し、1480ウォンに迫った
・個人の海外株投資が過去最大(309億ドル流出)
・国民年金・輸入企業・個人が同時にドル需要を作っている
・外国人は韓国株を買っても為替ヘッジをかけるためドルが戻らない

早い話が「構造的にドルが足りない市場になっている」のです。

政府は「市場で自然にドルが戻ってくる」ことを期待できなくなって、ドルを国内に呼び戻す必要に迫られたという状況なのです。

ウォン売り・ドル買い ⇒ 外国への投資 ⇒ ドル滞留(海外)

という流れを、

外国株売却 ⇒ ドルの国内還流 ⇒ ウォンに両替 ⇒ 韓国株投資

――にしたいというわけです。あるいは、

外国株株の保有を維持したとしても、
⇒ 為替ヘッジのため先物でドル売り
⇒ ドル供給増加 ⇒ 為替安定

を目論んでおり、そのために、

RIA(国内復帰口座)
海外株売却時の税免除
先物為替売却の税控除

――を言い出したのです。

海外株売却税免除 ⇒ ドル売却・ウォン買い誘導
先物為替売却控除 ⇒ 将来ドル供給の前倒し
配当益非課税 ⇒ 外貨収益の国内滞留

――という建付けになっています。

普通、通貨安に対して金融当局が取る手段は――

実弾介入(ドル売り・ウォン買い)
口頭介入
金利政策

――ですが、韓国の場合には、

実弾は外貨準備高を減少させられないので限界
金利は家計負債が多くて上げられない

――ので「税制で民間に代わりにドルを売らせる」という方法を言い出しています。

ゲスい言い方をすれば「国家が直接介入できないなら(介入しても奏功しないなら)、国民に代行させる」というもので、かなり異例のアプローチといえます。

まとめるなら韓国政府の意図は、

税制という「アメ」を使って民間資金の行動を変え、海外に滞留しているドルを国内に還流させ、ウォンへの転換または先物によるドル供給を促進し、実弾介入を使わずに為替市場のドル不足とウォン急落を食い止めること

です。

Money1でも連日ドルウォンのチャートをご紹介していますが、この発表の日、2025年12月24日、「1ドル=1,480ウォン」近辺から一気に「1ドル=1,450ウォン」近辺へと、ほほ30ウォン、ウォン高方向に戻りました。

ただし、駆け込みで公表したこの方策が功を奏したかというと……より詳細に「なぜ一気に30ウォンも為替レートが動いたのか」を見てみないと分かりません。

(吉田ハンチング@dcp)

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