ことの起こりはスパコン問題
アメリカ合衆国商務省(U.S. Department of Commerce)は、2021年04月08日、中国の7つのスーパーコンピューターに関わる企業、組織をエンティティーリストに追加しました。
新たにリストに加えられたのは以下です。
『Shanghai High-Performance Integrated Circuit Design Center』(国家高性能IC上海設計中心)
『Sunway Microelectronics』(信維微電子)
4つの『National SupercomputingCenters』(国立スーパーコンピューティングセンター/山東省済南市、広東省深セン市、江蘇省無錫市、河南省鄭州市)
同省のGina M. Raimondo(ジーナ・M・ライモンド)長官は、以下のような声明を公表しています。
スーパーコンピューティングの能力は、核兵器や極超音速兵器など多くの(恐らくほとんど全ての)現代兵器、国家安全保障システムの開発に不可欠です。
商務省は、中国が合衆国の技術を利用して、これらの不安定な軍事的近代化の取り組みを支援することを防ぐために、その権限を最大限に活用します
7つの企業・組織に合衆国の技術を使った製品を輸出することはできなくなるのですが、もちろん焦点は半導体です。
台湾『TSMC』がエンティティーリスト企業に半導体を輸出していた
この商務省の公表の後、合衆国メディア『Washington Post』の記事が世界を驚かせました。
台湾『TSMC』(Taiwan Semiconductor Manufacturing Companyの略:台湾積体電路製造)が、上掲のリストに含まれた『Tianjin Phytium Information Technology』に半導体を納入していたことが分かったのです。
2021年04月14日付けの『South China Morning Post』の記事によれば、『TSMC』は『Tianjin Phytium Information Technology』からの新規注文の受注を一時停止したとのこと。これは『ファーウェイ』のときと同じで、『TSMC』は取り引きを全面停止せざるを得なくなるでしょう。
スーパーコンピューターは、核兵器や話題の極超音速ミサイルの開発などに使われますので、『TSMC』は半導体を供給することで中国人民解放軍を支援したと捉えること可能です。
しかし、ことの本質は中国の「デュアルユース」(軍民両用)の姿勢にあります。
つまり、中国には中国共産党・中国人民解放軍と関係のない企業などないのです。日本はそのことをきちんと理解しておく必要があります。
ちなみに、合衆国商務省による7つの企業・組織のブラックリスト入りについて、中国商務部は以下のようにコメントしています。
合衆国は、中国の7つの機関を輸出規制のための「エンティティ・リスト」に含めているが、中国はこれに断固として反対する。
合衆国は、いわゆる「国家安全保障」や「中国軍の近代化支援」を理由に輸出管理措置を濫用し、他国の企業や機関に対して国力を行使することを繰り返し、国際的な経済・貿易秩序に深刻な損害を与え、グローバル産業チェーンのサプライチェーンの安全性に深刻な脅威を与えている。
これは、グローバルな産業サプライチェーンの安全性を脅かす深刻な問題だ。
これは、中国にとっても合衆国にとっても、そして世界全体にとっても不利益なことである。
中国は、合衆国側にその不正行為を直ちに停止するように求め、中国企業の合法的な権益を断固として保護するために必要なあらゆる措置を講じる。
文末が例によって「あらゆる措置を講じる」と、報復を示唆する表現となっていますので、合衆国の措置が効いているのは間違いありません。また、中国側にできることは人質外交ぐらいなもので、他にカードはありません。ですので、不要不急の用事がないのであれば、自由主義陣営諸国の皆さんは中国に行かない方がいいのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)