2021年08月20日、『韓国交通公社』の労働組合が「ストライキ実施」について可決しました。
このようなことが起こるのは、韓国の鉄道会社(全部公社です)のいびつな収益構造に原因があります。
人員整理に反対してストライキへの気運高まる!
ソウル・仁川・大邱・釜山など全国6都市の鉄道労働組合でゼネストへの賛否を問う投票が行われたのですが、「賛成」票が圧倒的多数となりました。
例えば、ソウル地下鉄を運営する『ソウル交通公社』の労組では「81.6%」が賛成。大邱の地下鉄労組でも「82.5%」、仁川交通公社 の労組「82.0%」、釜山交通公社労組「68.6%」など、賛成票が集まりました。
これで韓国の大都市の地下鉄はいつでもストライキに突入できる合法性を確保したことになります。
背景にあるのは会社の財政難
労働組合がこのようにスト実施に傾いているのは、コロナ禍によって旅客数が激減し、会社の経営が傾いていることが背景にあります。
2021年02月に韓国6大都市の鉄道を運営する公社の2020年の決算が「全社赤字」なのをご紹介しましたが、再度以下に掲載します。
2020年「当期純利益」
ソウル交通公社:-1兆954億ウォン
釜山交通公社:-2,634億ウォン
大邱都市鉄道公社:-2,062億ウォン
仁川交通公社:-1,591億ウォン
大田広域市都市鉄道公社:-390億ウォン
光州広域市都市鉄道公社:-374億ウォン
小計:-1兆8,005億ウォン⇒データ引用元:『韓国金融監督院DART』公式サイト
当期純損失が計「1兆8,005億ウォン」(約1,674億円)にもなります。
このようにどこをとっても赤字なため、交通公社は人員削減を考えており、構造調整を行う構えです。当然、労働組合は反発。そのため「ストライキだ!」という動きになるのです。
これは経営者が悪い。公社なので政府の責任です
韓国ではとにかく労使間の対立が目立ちますが、この鉄道関連については経営側(公社なので中央政府・地方政府に責任あり)が経済的合理性を無視しているのが原因です。
Money1では何度もご紹介してきましたが、鉄道公社が経営難になるのは、ソウル市の地下鉄のみならず、韓国の鉄道が適正な運賃を旅客から徴収していないからです。
ソウル市を例に取ると、収益構造はざっくり以下のようになります。
旅客1人当たりの売上:1,250ウォン
旅客1人当たりのコスト:2,061ウォン
旅客1人当たりの利益:-811ウォン
お客さんを1人運ぶたびに「811ウォン」ずつ損をするのです。そのくせ「65歳以上の人は無料で乗車できる」サービスを行っています。
こんな会社が黒字になるでしょうか?
つまり、経営方針が根本からおかしいわけで、その責任は経営陣が負うべきです。つまり、中央政府・地方政府のせいです。
そのくせ人員整理を行うというのです。世にもあほらしい話という他ありません。韓国鉄道公社の従業員の皆さんに心より同情申し上げます。
※以下は日本の『東京メトロ』と『ソウル交通公社』を比較した記事です。『ソウル交通公社』は全く売上が足らないということがお分かりいただけると思います。要は、適正な運賃に値上げすることで解決する問題なのです。
(吉田ハンチング@dcp)