小ネタかもしれませんが、韓国の自動車産業・造船業は大変だなぁという話なのでご紹介します。石炭、鉄鉱石などの資源価格が急騰しており、韓国の鉄鋼企業が鋼板の大幅値上げに踏みきりました。
韓国の鉄鋼企業は自動車企業に貢献してきた!
韓国の鉄鋼業最大手といえば『ポスコ』『現代製鉄』となりますが、この両社が『現代自動車』『起亜自動車』と交渉して、上半期の2倍以上の値上げを行ったことが分かりました。
韓国の鉄鋼業は自国の自動車産業をお得意さまにして業績を伸ばしてきた歴史があります。『ポスコ』の大本『浦項総合製鉄』は日本からの技術・資金協力によって初めてまともな製鉄企業となったわけですが、一方の『現代製鉄』はそもそも『現代グループ』傘下の企業からスタートしています(大本は『大韓重工業公社』)。『現代自動車』に自動車用の鋼板を納入して業績を大きく伸ばしました。
韓国の鉄鋼業は自動車産業の成長に伴走してきた歴史があるのです。
製鉄企業からすれば、国内に自分たちの製品を大量に消費してくれるお得意様がいるのは助かりますし、自動車企業からしても安価に材料を納品してくる企業があればありがたい話です。
「もう無理」なので値上げします
しかし、この資源価格の急騰で、『ポスコ』『現代製鉄』も「安価に……」というわけにはいかなくなったのです。
Money1も先にご紹介しましたが、2021年上半期には、以下のような値上げでした。
2021年上半期:5万ウォン値上げ(1トン当たり)
これが、下半期の価格交渉で、
2021年下半期:12万ウォン値上げ(1トン当たり)
となったと報じられています。
実は自動車用鋼板価格は2017年下半期から4年間価格の引き上げが行われていませんでした。
つまり、製鉄企業は安値で自動車企業に我慢して安値で鋼板を納品し続けてきたのです。これは当然韓国自動車の製品価格を安く抑える効果があり、価格戦闘力アップにつながります。
簡単にいえば、鉄鋼企業に泣いてもらって販売価格を安くできる自動車を生産してきのです。
しかし、資源価格の急騰で限界。鉄鋼企業にとっては値上げしてもらわないと「もう無理」となったというわけです。
造船業界も大変なことになります(もうなっています)
どこかで聞いたような話だと思われませんか。
そうなのです。韓国の造船業です。
これも先にご紹介しましたが、2021年07月、『韓国造船海洋』は決算発表の場で「鋼板価格が上がったので赤字に転落した」と述べました。
これは、見積もっていたよりも鋼板価格が急上昇し、その値上がり分を引当金として積んだら赤字になった――という、なんというか「安値で受注しすぎなのが原因では?」という話なのですが、自動車企業と同じく、当然造船企業も鋼板価格の影響を受けます。
ちなみに、業績が赤字に転落した『韓国造船海洋』の「鉄鋼企業のせい」と言わんばかりの恨み節は、鉄鋼業界を激怒させました。
「うちを犠牲にして安値で仕事を取ってきたせいだろうが」というのが鉄鋼業界の主張です。これは怒って当然といえるでしょう。
造船企業にとっては、この先が不安です。この鋼板の値上げ傾向が続くと、せっかく受注ラッシュとなったのに船舶を建造して納品しても赤字――という事態があり得るからです。自動車企業のように「自動車の価格を上げるかぁ」というわけにもいきません。もう取ってきちゃった仕事なので。
というわけで、ずいぶん先のことになりますが(タンカーなどの大型船舶は納品まで2~3年かかるので)、韓国の造船企業が黒字を出すことができるのかにご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)