アメリカ合衆国と中国の半導体におけるデカップリングがますます大きくなって、世界規模でのサプライチェーンの組み換えの真っ最中ですが、韓国では焦りが激しくなっています。
半導体強国と誇ってはいますが、中国からの追い上げは激しく、アメリカ合衆国・日本・台湾が緊密に連携している中、1人だけ蹴り出されそうだからです。
EUも独自の自給自足プランを打ち出した!
その上、ヨーロッパも半導体自給率を上げるぞ!と、2022年末にEU27カ国の担当長官の皆さんは、430億ユーロ(約6兆4,302億円)を投資する「EU半導体法」(Chips Act)に合意しました。これは残すところ欧州議会の承認のみです。
この「EU半導体法」では、EU内で生産される半導体の世界シェアを現在の10%から20%に上げるという野心的な目的を掲げた法案です。
EUは世界で生産された半導体の約20%を使用していますので、簡単にいえば「半導体の自給自足を達成したい」というのが目的といえます(あくまで数字上は)。
日本としては「素材とか装備の方でひとつごひいきに」と商売ができますが、韓国の場合はそうはいきません。「韓国製の半導体も買ってくださいよー」となって、これまでの商売がうまくいかなくなる可能性があります。
つまり、半導体生産はまず「自由主義陣営国 vs 中国」でブロック化され、同じ自由主義陣営国内であっても「合衆国・日本・台湾連合」と「EU自給自足プラン」でまた分かれそうになっているのです。
台湾の『TSMC』は日本に第2工場を建設する意思を明らかにしていますし、またドイツのドレスデンに欧州初のファウンドリーを造るという件をドイツ政府とネゴネゴしています。もっとも『TSMC』の場合には、2023年は投資を控えるのではないかという観測も出ており、あれもこれもと一気に進むかどうかは不明です。
激しく情勢が動く中、「置いていかれる」と韓国は危機感を募らせています。
『SKハイニックス』の構想は4年もほったらかし!
合衆国にファンドリーを建設するという話は進んでいても、韓国内に造ろうという話はとんと進みません。その代表格が『SKハイニックス』が2019年02月に打ち出した龍仁に最先端のメモリー半導体製造基地を造るという構想です。
龍仁はソウルの南西部にあります。構想表明からまもなく4年たったことになりますが、全然進みません。
面白いことに自治体が反対しているのです。環境影響の評価、土地の補償問題、工業用水の許可など、問題山積で着工すらできない有様です。そもそも、2022年07月に尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領臨席の下、着工式が予定されていたのですが、無期限延期となって現在に至っています。
「なにやってんだ」という話ですが、韓国企業が外国へ出て行きたがるのも無理はありません。合衆国からすると、無法者・北朝鮮の火砲の射程圏内にあるファウンドリーなど論外かもしれませんが。
(吉田ハンチング@dcp)