先に国民年金が韓国の私募債ファンド、ベンチャーキャピタルに約1兆ウォンを投入する件をご紹介しましたが、2024年04月13日、『韓国銀行』が興味深い発表を行いました。
韓国外為当局と国民年金公団が350億ドル規模の通貨スワップを締結したのです。
件名 : 外為当局、国民年金との350億ドル規模の為替スワップ取引実施に合意
外国為替当局(『韓国銀行』、企画財政部)は国民年金公団(以下「国民年金」)と2023年末まで350億ドルの限度内で為替スワップ(FX Swap)取引*を実施することに合意した。
*詳細な為替スワップ取引の内容及び構造は次のページを参照。昨年、両機関は為替スワップ取引を通じて外国為替市場の変動性拡大に効果的に対応した経験があり、このような経験を基に今回取引を再推進することになった。
ㅇ国民年金は同取引を通じて、海外投資に伴う為替変動リスクを緩和し、外貨資金管理の効率化を図ることができる。
ㅇ外為当局の立場では、外国為替市場が不安定な場合、国民年金の現物為替購入需要を吸収することで、外国為替市場の需給不均衡の緩和を図ることができる。
□同取引により外貨保有額が契約期間中減少するが、満期時に資金が全額返還されるため、外貨保有額の減少は一時的なものにとどまる。
先にご紹介したとおり、外為当局と国民年金公団は100億ドル規模の為替スワップ契約を締結していたのですが、これは2022年末で切れました。
どのような契約かというと、国民年金公団がウォンを、外為当局が同額のドルを用意し、これを取り替えるというものです。国民年金は国民から徴収した莫大な資産を基金として運用しているのですが、海外に投資する際には、ウォンを売ってドルを買います。
ウォン売りドル買いですから、当然ウォン安を進行させます。現物でそのような巨額取引をされると、状況によってはウォン安が嫌なレベルまで進行するかもしれません。
外為当局が保有するドルを国民年金公団に渡して使うことにすれば、このような変動を抑えることが可能です。
今回、100億ドルから350億ドルに規模を拡大しましたが、問題は「外為当局がその分のキャッシュを持っているのか」です。外貨準備高から見ると……ありません。
03月時点での外貨準備高(4,261億ドル)のうち、現金たるDeposits(預金)は「241億ドル」しかないのです。
『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)の定義によれば、外貨準備高とは金融当局がすぐに投下できる流動性の高い資産――です。
もちろん、スグに国民年金公団が350億ドル分のドルを外為当局から受け取るわけではありませんが、都度都度、外為当局がその分のドルを用立てるとすると……これはかなり面白いことになりそうです。
合衆国公債、あるいは謎のSecurities(証券類)を売却して現金を作ることになるかもしれません。合衆国公債の買い手が少なくなってきた――などという嘆きが合衆国から聞こえている中※、韓国も「売ります!」だと怒られそうな気がしないでもないですが……。
(吉田ハンチング@dcp)