2023年04月28日、韓国の金融監督院が韓国内35の証券会社のCEOを招集し「意思疎通」会議を開催しました(以下は金融監督院が出したプレスリリース)。
「意思疎通」なんて書いていますが、これは事実上の説教であり、指令です。
読者の中にもご存じの方がいらっしゃるでしょうが、2023年04月24日、韓国株式市場はストップ安という銘柄が出ました。特にKOSDAQ市場が目立ち、その安値進行は3日間、26日(水)まで続きました。
銘柄を挙げてみると以下のようになります。
『ソウルガス』『大成ホールディングス』『三千里』『鮮光』は下限まで安値進行(3日連続のストップ安)。
『世邦』:-27.2%
『ダウデータ』:-19.34%
『ダオル投資証券』:-4.89%
『夏林ホールディングス』:-5.04%
これら8銘柄だけで、時価総額が「7兆3,906億ウォン」蒸発しています。
なぜこのような暴落が起こったかというと、フランス『ソシエテ・ジェネラル』系の『韓国SG証券』が震源地――と指弾されています。なぜこのような書き方をするかというと、韓国の金融当局は、これを不法な「株価操作」と見ているからです。
韓国金融委員会と検察の調査がすでに調査に乗り出しており、ソウル南部地検が「株価操作をした」と見られるグループ10人に対し出国禁止措置を下しています。
「ただの空売り」なんじゃないのか――という指摘もありますが、当局は「不法は取引」と見て調査を続けています。
例えば『中央日報(日本語版)』は以下のように書いています。
(前略)
彼らは投資家を集めた後に彼らの名義で開設した口座で「通情取引」をして株価を操作してきたという疑惑を受けている。通情取引とは買う側と売る側が価格と量などを事前に決めておき、これを売買して株価を操作する違法売買行為だ。
(後略)
また、韓国メディアの中には「CFDを用いたレバレッジを効かせた取引だ」などと憎々しげに書いているところもあるのですが、「CFD」は普通に使われるものであって、これを不法などとはいいません。
※CFDは「Contract for Difference」の略で、そのままですが日本語では「差金決済取引」と訳されます。現物での受け渡しを行わずに、反対売買の結果の金額の差額分だけを決済します。広くいえばFXだってCFDの一種であって、不法などではありません。
ともあれ、韓国の金融当局は35社のCEOを集めて、事実上の説教を行いました。以下はプレスリリースにある、金融監督局の事実認定です。
(前略)
信用融資残高は4月26日現在20.1兆ウォンで、前年末16.5兆ウォンに対し21.8%増加し、特にコスダック信用融資残高が急増(10.4兆ウォン)貸出残高は04月26日現在、合計79.3兆ウォンで、前年末61.2兆ウォン比で29.6%増加するなど、過去最大の水準に達している。
一方、最近問題になっている差金決済取引(CFD)残高金額は02月末現在3.5兆ウォンで、前年末比1.2兆ウォン(52.2%)増加
(後略)
だからどうした?みたいな話です。
信用取引金額が増えてるから株価だって上がってますし、CFDの残高がたかだか3.5兆ウォン(少なっ!)になったからなんだというのでしょうか。
よしんば株価が下がったところでそれは自己責任であって、市場参加者はそれを理解した上で投資を行っているはずです。空売りもまたしかりで、仕掛けて反目に出てもそれは市場が決めることです。
このように金融監督院が介入を行うから市場が歪む――そのようには考えられないのでしょうか。
このリリースの中で金融監督院は以下のように結論づけています。
信用融資、差金決済取引(CFD)などに関連する過度のレバレッジ投資は、反対売買が発生した場合、市場変動性の拡大など、証券市場の不安要因として機能する可能性があるとの懸念およびこれに対する対応の必要性を指摘した。
金融監督院は、当該取引の投資リスクを十分に認識し、耐えられる投資家がレバレッジ商品に投資することができるように、
◦投資勧誘の際、より細心の注意を払うとともに、CFD基礎資産のリスクレベルに応じてリスク管理を差別化するなど、証券会社自身もリスク拡散防止に努めるよう要請
◦また、CFD関連の最近の過度な顧客誘致イベント※の運営はできるだけ避けることが望ましい
という意見を伝えた。
※個人投資家の登録時に手数料引き下げ、現金支給イベントなど。
過度のレバレッジなんて書いていますが、韓国の場合、たかだか2倍、2.5倍です。こんな程度で当局が規制をかけなければならないなら、最初からやめておけばいかがでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)