定点観測ですが、当月は面白い話があります。
2023年09月05日、『韓国銀行』が「2023年08月末時点での外貨準備高」を公表しました。
まず以下をご覧ください。
2023年08月
外貨準備高:4,183億ドル(約61兆3,061億円)※
(前月比:-35億ドル)<<内訳>>
⇒Securities:3,790億ドル(約55兆5,462億円)
(証券類)
前月比:+25億ドル⇒Deposits:148億ドル(約2兆1,691億円)
(預金)
前月比:-61億ドル⇒SDRs:150億ドル(約2兆1,984億円)
(IMFのSDR(特別引出権))
前月比:+2億ドル⇒IMF position:46億ドル(約6,742億円)
(IMFリザーブポジション)
前月比:-1億ドル⇒Gold:48億ドル(約7,035億円)
(金)
前月比:増減なし※円換算は2023年09月05日「1ドル=146.56円」のレートで算出
直近1年間の外貨準備高の推移を見ると以下のようになります。
再び4,200億ドルを割り込みました。
当月の注目ポイントは、なんといっても現金たるDeposits(預金)が一気に61億ドルも減少していることです。
同様にDeposits(預金)の推移を見ると以下のようになります。
直近では2022年09月に「142億ドル」という数字がありますが、それ以来の低水準です。
ではなぜ、現金が61億ドルも減ったのか?
当月最も面白いのは『韓国銀行』による変動理由の説明です。以下をご覧ください。
『国民年金公団』と締結した「為替スワップ」(原文の表記に合わせます)が初めて登場しました。
これは、ドルウォンのレートをウォン安方向に変動させないための措置。
『国民年金公団』が市場で「ウォン ⇒ ドル」の両替を行わないように、『韓国銀行』が必要なドルを用立てます。
『国民年金公団』がウォンを出し、『韓国銀行』はドルを渡して交換(スワップ)します。
『国民年金公団』は巨額の資産を運用していますので、これの市場でも売買を阻めば確かにウォン安方向への動きは抑えることが可能でしょう。
しかし、当たり前ですが当局の手持ちのドルが減ります。
今回、61億ドルも現金が減少したのは、『国民年金公団』とのスワップ契約でドルを用立てたためと見られます。
面白いのは、この為替スワップの契約は「350億ドル」規模だということです。
そもそも韓国の外貨準備で、そんなにたくさんDeposits(預金)があったことはないので、『国民年金公団』が「もっとスワップでドルを……」となると、韓国当局はどこかでドルを調達しないといけなくなるのです。
マッチポンプというか何というか……ヘンなドタバタ劇になります。
もっとも政府機関の話なので、突き詰めれば財布は一つ。ウチの中でドルを回しているんだ――と言われれば、それまでですけれども。
(吉田ハンチング@dcp)