中国の『麦可思研究院』が「2023年版雇用青書」のデータを公表しました。
↑『麦可思研究院』の公式サイト。同院は2006年設立で「中国の高等教育管理データとコンサルティング業界のリーダー」としています。ユネスコ文書出版「中国大学生就職報告書」への寄稿者でもあります
これによると、中国の2022年の大学学部卒と高卒の平均月収はそれぞれ5,990元と4,595元に過ぎません。
学部卒:5,990元(約12万579円)
高卒:4,595元(約9万2,479円)
※人民元-円換算は2023年09月09日の「1元=20.13円」
2022年でこの数字で、2023年には景気が厳しくなり、賃金の下げ圧力が増しています。また、若い世代の就職が困難になってもいます。
先にご紹介したとおり、中国の若い世代(16~24歳)の失業率は上昇しており、2023年06月時点では「21.3%」。中国のSNSを見ている所感では、これは低すぎてとても信じられる数字ではありませんが、公的には一応そういうことになっています。
しかし、Money1でもご紹介したとおり、中国の統計局は「07月の若い世代の失業率」の公表を取りやめました。数字の隠蔽です。
『北京大学』国家発展研究院経済学の張丹丹副教授は、「躺平※1」「啃老※2」などの働かない若者1,600万人がいることを考えると、若い世代の失業率は最大46.5%※3に達する可能性がある――としています。
「躺平」は「寝そべる」。競争社会から逃げ、もう頑張るのを諦めて寝そべって最低限の暮らしをする若者といった意味です。
※2
「啃老」は「親をかじる」で、親の脛をかじるという意味。親のお金を頼りに暮らす若者といった意味です。
※3
しかもこの推計は2023年03月時点でのものです。
公式の失業率統計では非労働力人口を除外し、労働力人口の失業率のみを計算しています。躺平族や啃老族の1,600万人は非労働力人口に含まれており、除外されているのです。
ですから、1,600万人を失業者とするなら、失業率はもっと上がるという理屈です。
興味深いのは、「2023年版雇用青書」によれば、民間企業に就職する若者が漸減していることです。また都市部ではなく、地方の公務員などに就職先がシフトしているのです。
ところが――です。
Money1でもご紹介したとおり、中国の地方政府は債務問題が解決できなくなっており、中央政府から「公務員を減らせ」といわれる状況です。
地方の公務員にたとえ就職できたとしても、これからはどの地方にいようが全く安心できません。
このような状況下で中国の若者の不満が高まらないわけがありません。さあ、どうなるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)