毎度毎度の話ではありますが、『韓国電力公社』(以下『韓国電力』と表記)が飛びそうになっており、韓国内で「どうするよ?」と解決法が注目されています。
Money1でもご紹介してきたとおり、これは前文在寅政権の完全な失策です。
いかに愚かだったのかは散々ご紹介してきたので繰り返しませんし、長くなるので端折りますが、要は「電気料金が安すぎる」ということに尽きます。
文在寅前大統領は、クリーンエネルギー政策を推進して「電気を売れば売るほど赤字」という異常事態に『韓国電力』を追い込みました。
今また『韓国電力』の財政難が注目されているのは、2023年度の赤字がまた巨額に膨らむのではないかと懸念されるからです。
このままでは本当に飛ぶぞ!
「『韓国電力』が今度こそ飛びそう」という推測の基になっているのは、国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会所属のヤン・イウォンヨン議員室が企画財政部から入手したデータです。
企画財政部による「2023~2027年公共機関中長期財務管理計画」によれば、『韓国電力』の2023年度の業績は「営業利益:-7兆1,827億ウォン/当期利益:-6兆4,193億ウォン」となっています。
しかし、この予測は、
原油価格:82.8ドル/バレル
という想定でのこと。
Money1でも連日ご紹介しているとおり、ドルウォンのレートは以下のように「1ドル=1,350ウォン」を突破しています(チャートは『Investing.com』より引用:以下同)。
↑2023年09月29日時点で「1ドル=1,352.93ウォン」。
原油価格をWTI先物で確認すると以下のようになります。
現在天井圏の戦いになっていますが、直近2023年09月29日時点で「90.77ドル」です。
2023年の残りの3カ月が想定したドルウォンレート・油価で回るでしょうか?
韓国メディア『NEWSIS』は、想定したドルウォンレートが5%上がり、油価が10%上がったとして計算すると、『韓国電力』の2023年の業績は、
営業利益:-9兆1,000億ウォン
当期純利益:-7兆8,000億ウォン
に達すると予測しています。このままでは2024年、本当に『韓国電力』が飛ぶ可能性がある――とするのは、そのためです。
シーリングの改定を行う必要がある
まあ、親方太極旗の公社ですから現実に飛ぶことはないのですが、ツケは国民が支払うことになります。
では、どうするか?です。
秋夕のお休みが明けたら、すぐに「電気料金をどうしよう」という会議が開催されるでしょうが、それが長びくとキャッシュフローが回らなくなる可能性があります。
日々発電しているので、燃料代は出ていきますし、キャッシュを調達しないといけません。
資金調達といっても一応、一企業ですので、できることは限られます。最も簡単なのは社債を発行して資金を入れることです。
ただし、先にご紹介したとおり、『韓国電力』には「韓国電力法」による縛りがあります。野放図に負債を増やさないように発行限度額が定められているのです。
しかしながら、あまりにもキャッシュがタイトなため、Money1でもご紹介しましたが、2022年末に同法を改正。
社債の発行限度額を「資本金と積立金を合わせた金額の5倍」に拡大し(これまでは2倍)、それでも足らない場合には、産業通商資源部長官の承認を受けて6倍まで発行できるようにしました(2027年12月31日までの暫定措置)。
これで大丈夫になったのかといえば「NO」です。
なぜなら「資本金と積立金を合わせた金額」が減少したからです。
発行限度額が2倍から5倍までOKになったのに、天井は91兆8,000億ウォンから104兆5,000億ウォンと、「12兆7,000億ウォン」しか拡大しませんでした。
しかも、キャッシュフローがタイトで保有資産を売却することを余儀なくされていますので、「資本金と積立金を合わせた金額」はさらに減少していっているのです。
このままでは勝手に天井がどんどん下がって、社債を発行できなくなります。吊り天井みたいなものです。
また、市場にある『韓国電力』債券の規模が、天井を超えているというおかしな事態になる可能性があります。
ではどうするのか? 資金調達だけ考えるなら、最も簡単な方法は「また韓電法を改正」し、さらに借金できるようにすることです。
しかし、この方法は負債をさらに膨らませることになるだけで、根本的な解決になりません。
結局のところ、電気料金を正常な水準にすること――これ以外に道はないのです。
(吉田ハンチング@dcp)