先にご紹介したとおり、韓国は監査シーズンで各委員会が野党議員からギュウギュウ絞られています。『韓国銀行』総裁の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁も例外ではなく、矢面にさらされています。
『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)のアジア太平洋局長まで務めた李昌鏞(イ・チャンヨン)さんに、経済について詳しいかどうかもよく分からない国会議員が詰め寄るのですから……まあ大したものです。
2023年10月23日、(よりにもよって)『韓国銀行』で国会企画財政委員会の国政監査が開催されました。韓国では家計負債が再び増加に転じています。Money1でもご紹介したとおり、09月時点で1,080兆ウォンに達しました。
『共に民主党』議員が(よせばいいのみ)勢い込んでこの点を突っ込んだのですが、あっけなく李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁に返り討ちに遭いました。
以下のような具合でした。
パク・グァンオン議員「金利凍結したことが融資増加(家計負債増加)を招いたのではないのか?」
李総裁「金利をさらに引き上げたら家計ローンを抑えることはできるだろう。しかし、それによって生じる金融市場の安定問題はどうするのか?」
パク・グァンオン議員「……」
李総裁「物価がもし上がり続けていたなら、ずっと(金利を)上げただろう」
何度もご紹介していますが、この李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「はは、オレばか嫌い」という風がある人です。友達は少ないと思われますが、「くせが強い」がゆえに仕事はできる切れ者なのです。
議員からの質問に「そんなこたー分かってんだよ」と怒鳴りつけたかったでしょう。
韓国はいわば三すくみ、四すくみになった身動きの取れない状態なのです。
インフレが急進したら、当然金利は上げないといけないのですが、金利を上げると資金調達コストが上がります。それによって金融機関などからの企業・家計への融資は減るでしょう。金利が高くて借金をするのに躊躇しますから。
負債の増加は防げるかもしれませんが、家計、企業が資金調達できなくなると流動性が枯渇してドボンがあり得ます。それだけ、韓国の企業・家計は負債を抱え込んでいるのです。
ゾンビ企業は借金を回して凌ぎ、増加した多重債務者もまた同じ状態になっているのを考えてみてください。
ですので、インフレがそこまで亢進していないなら、金利を上げるわけにはいきません。つまり、『韓国銀行』は状況に応じて適宜に引くレバーを選択しなければならないのです。
そのような状況が誰よりも分かっている李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁によくこんな質問ができたものです。また、別の『共に民主党』議員との間で以下のようなやりとりもありました。
ヤン・ギョンスク議員「家計負債急増に対して、6連続で金利を凍結したが」
李総裁「この1年の間で負債が増えたのではなく、過去10年の間に増え、不動産価格が高騰した時に最も多く上がった。現時点では、増加したことが問題ではなく、トレンドを変えることが最も重要だ」
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「オレ(現在の金融通貨委員会)のせいかよ!」と言いたかったでしょう。さらにいえば「あんたらが担いだ文在寅政権のときに最大に負債を増やしたんだろーが!」と言いたかったのではないでしょうか。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は就任してから薄氷を踏むような思いで金利状況をコントロールしようとしています。韓国はそれほど脆弱なのです。
文在寅という大統領はとにかくロクでもないことしかしませんでしたが、『韓国銀行』総裁に李昌鏞(イ・チャンヨン)さんを引いてきたのだけは評価できます。よく引き受けてくれたものです。
(吉田ハンチング@dcp)