2023年12月12日、韓国の金融監督院・李卜鉉(イ・ボクヒョン)院長が「銀行持株理事と定例懇談会」を行った後、記者からの質問に答え、「PF(プロジェクトファイナンス)問題」について興味深い発言を行いました。
何度かご紹介していますが、PFについては貸付残高が非常に膨らんで、かつ返済困難になっているのが問題です。以下が直近の金融機関によるPF関連貸付残高の推移です。
2020年末には「92.5兆ウォン」しかなかったのですが、2022年末には「130.3兆ウォン」まで膨らんでいます。
コロナ禍に見舞われた2020年初頭から金利が韓国史上最低まで下がり、お金がじゃぶじゃぶ状態となって、資金が不動産・株式・暗号資産などに向かいました。不動産価格が急騰したのですが、この背景にはPFで資金を調達して「不動産開発」に勤しんだという状況があったわけです。
直近、2023年09月には「134.3兆ウォン」まで積み上がりました。この積み上がりが止まらないというのは、返済が滞っているという理由もあります。
もうひとつの問題「延滞率の上昇」がそれを示唆しています。そもそもPFは、韓国の5大市中銀行、いわゆる第1金融圏はすっかり手を引いており、第2金融圏がお金を突っ込んでいました。特に貯蓄銀行です。
第2金融圏は第1金融圏よりも資金力が大きくありません。PFで巨額の不良債権が発生すると、金融機関の健在性に直結します。
不良債権の問題が表面化しそうな状況が、貯蓄銀行の「PF関連の延滞率」上昇に表れています。以下の主要貯蓄銀行の延滞率をご覧ください(2022年03月から2023年03月への変化です)。
2022年03月 ⇒ 2023年03月
『SBI貯蓄銀行』:6.01% ⇒ 6.21%
『OK貯蓄銀行』:3.64% ⇒ 9.07%
『韓国投資貯蓄銀行』:1.85% ⇒ 6.70%
『ウェルカム貯蓄銀行』:0.03% ⇒ 4.42%
『ペッパー貯蓄銀行』:0% ⇒ 4.93%
※出典:各社公示データ
『OK貯蓄銀行』は延滞率が約2.5倍、『韓国投資貯蓄銀行』は約3.6倍に上昇しています。返せない借り手がいかに増えているのかの証拠です。
金融監督院の李卜鉉(イ・ボクヒョン)院長が述べたのは「玉石の選別」です。つまり「採算性の合わないPF事業や不良債権を順次整理する」ことを意味していると見られます。
するわけにはいかないので、ガスを抜こうというわけです。ハードクラッシュを避けるためのガス抜きですが、問題はどこまでやるか?です。
ポーズだけなら効果はありませんし、やりすぎるとクラッシュの引き金になるかもしれません。韓国金融当局のさじ加減に要注目です。
(吉田ハンチング@dcp)