資源価格の高騰が韓国経済の足元をすくおうとしていますが、企画財政部がこれまでの方針を変更するという動きを見せています。
海外資源開発の大失敗と撤退
Money1でもうんざりするほどご紹介してきましたが、韓国は李明博(イ・ミョンバク)大統領の時代に海外の資源開発に乗り出しました。しかし、山師なんて言葉がありますが、資金を突っ込んだもののどれもこれも惨敗。
このせいで『石油公社』『石炭公社』『ガス公社』『鉱物資源公社』などが軒並み巨額の負債を抱えました。特に『鉱物資源公社』は事実上のデフォルトに陥るなど、大変なことになったのです。
仕方がないので、企画財政部がTF(タスクフォース)を組んで後始末に当たっています(現在のTFは第2次)。
2018年、韓国政府は26の海外資産を全て売却することを決定(このときは民間識者で構成されたTFが決定しました)。
で、26のうちすでに11は売却されており、残っているのは15カ所。
ところが、この全て売却予定が文大統領の鶴の一声で覆ったのです。
文大統領のひと声で 2カ所の売却がペンディング!
2022年02月14日、「対外経済安全保障戦略会議」において、半導体や二次電池の材料となる鉱物資源を確保せよという指示が文大統領が出て……というわけです(以下はプレスリリース)。
(前略)
文大統領は「国内実物経済と金融市場に及ぼす不確実性を減らす努力も強化してほしい」とし「輸出企業と現地進出企業に対する全方位的支援とともに、エネルギー、原材料、穀物などの需給不安に先制的に対処しなければならない」と呼びかけた。
(後略)
韓国という国は、つくづく「トップのひと声で物事が動く」が好きな国民性ですが、売却をペンディングしたのは、Money1でもご紹介したことのある、
パナマ:コブレパナマ鉱山(銅)
の2つです。
「アンバトビー鉱山」の方はニッケル、「コブレパナマ鉱山」の方は銅。両方共価格が高騰している金属で、特にニッケルの方は二次電池の材料になるので「なぜ売却するんだ」と反対の声が上がっていました。
また、アンバトビー鉱山については「日本には売るな」という意見があったことでも知られています(以下の過去記事を参照してください)。
採算が取れないものは売るしかない!
というわけで鉱山2カ所が、とりあえず売却取り止めとなったのですが、「なんで売るんだ」も何も採算が合わないものは損切りするしかないのです。
ペンディングしたからといって黒字になるのか?という話です。
ただ、現在は資源価格が上がっていますので、それを基に「採算が取れる」と強弁する可能性はあります。
大統領の言ったことは絶対に実行しなければならないという韓国ですので、なおさらです。
原発「月城1号機」はまだ使えますよ――と提言した産業通商資源部の職員が上司から「お前は死にたいのか」と言われた、という事例もあります(本当です)。
さあ、この鶴の一声で止まった案件。どうなるのかにご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)