韓国の防衛事業で興味深い動きがありました。
韓国では独自の「韓国型ミサイル防衛システム」(略称「KAMD」)を推進しています。多層的な防空システムを作ることで北朝鮮などのミサイルを防ぐのを目的としています。
Money1でもご紹介したことがありますが「韓国版アイアンドーム」を造る――といった計画もあるのです。どうも技術供与を目論んでいるようで、当時はイスラエルにネゴネゴしていました(いつものすり寄りです)。
2024年04月26日、防衛事業庁(略称「Dapa」)は「第161回防衛事業推進委員会」を開催。以下のような「委員会の結果」というプレスリリースを出しました。
今回ご注目いただきたいのは、④の「海上弾道弾迎撃誘導弾事業推進基本戦略(案)」です。同プレスリリースは以下のように書いています。
□「海上弾道弾迎撃誘導弾事業」は、イージス艦(KDX-Ⅲ Batch-Ⅱ)に搭載する海上弾道弾迎撃誘導弾を国外購入(FMS:Foreign Military Sales)で確保する事業です。
今回の防衛事業推進委員会では事業推進基本戦略を審議議決しました。
ㅇ本事業を通じて海上で発射する弾道弾迎撃誘導弾を確保することで、敵弾道弾の脅威に対して中間段階で実効的対応が可能と期待されます。
*事業期間:「2025~」2030年、総事業費:約8,039億ウォン
敵が発射した弾道ミサイルをイージス艦から発射するミサイルで迎撃しよう――という構想で、この海上から発射されるミサイルを外国から購入すると決めました。
「外国から買う」と決めたミサイルは「SM-3」を指していると推測されます。
読者の皆さんもご存じかと思われますが、2024年04月14日、イランはイスラエルに対して、
中距離弾道ミサイル(IRBM/MRBM):100発
巡航ミサイル:30発
無人機:150機
を放った(アメリカ合衆国側の分析)のですが、イスラエル側はそのほとんどを迎撃したと発表しています。『USNI(合衆国海軍協会)』によると、「イランによるイスラエル攻撃への合衆国の対応では、ミサイル駆逐艦が弾道ミサイルを迎撃するために開発されたミサイルを実戦で初めて発射」したと伝えました。
↑DDG-51:アーレイ・バーク。「Fast and Feared」(速過ぎて怖い)船です。
イスラエル沖に展開したアーレイ・バーク(DDG-51)とカーニー(DDG-64)から発射されたSM-3は、イランの弾道ミサイル少なくとも6発を撃墜した――といわれています。
本当に戦果を挙げたのかは日本も気になるところですが、韓国も「これ買おう」となった模様です。
プレスリリースだけ見ると、「韓国軍は2024年末に海軍に引き渡される次世代イージス艦である正祖大王級(KDX-Ⅲ Batch-Ⅱ)にSM-3を搭載し、運用する計画」のようです。
↑こちらは「DDG-991:世宗大王」。SM-3の搭載を目論んでいるのは「DDG-995:正祖大王」で竣工は2024年12月予定
その「DDG-995:正祖大王」は2022年07月28日に以下のように進水式が行われています。
一応予定では2024年末には完成の予定です。
面白いことに、韓国でSM-3の導入について提起されたのは2013年のことです。ところが、韓国ではそんなもんいらんだろという議論が起こって停止してしまったのです。今回本当に本件が進行するなら実に11年ぶりのことになります。
本件については韓国メディア『中央日報』が面白い記事を出していますので、以下に引用します。「そんなもんいらんだろ」の理由が面白いのです。
(前略)
しかし、SM-3導入の可否をめぐって政治圏など一部では懐疑的な視点が示された。彼我の距離が短い朝鮮半島で、THAADより迎撃高度の高い防御システムであるSM-3を運用する必要があるのかという疑問だった。
「合衆国のミサイル防衛システム(MD)に組み込もうとしているのではないか」という疑惑の目もあった。
文在寅政権時代の2017年、海軍出身のソン・ヨンム国防部長官がSM-3導入を推進すると、『正義党』などは「THAADに続き、中国とロシアの反発を招く可能性がある」と批判した。
1発当たり200億~250億ウォン水準で天文学的な予算がかかる点も障害とされた。
終末段階の下層防御迎撃ミサイルである天弓の1発当たりの運用費用は約15億ウォンだ。
中国とロシアの反発を招くからやめとこう――という極左政党『正義党』の言い分(当時)は傑作です。韓国では中国、ロシアを刺激することはできない――という反対は他からも挙がります。
ことほどさように韓国という国には「自由主義陣営国である」という覚悟などありません。
これは、歴史的には日本の手によって棚ぼた式に中国から独立し、アメリカ合衆国の手によって棚ぼた式に日本から独立したことに原因があります。
日本併合によって朝鮮半島に近代が移植され、南半分にはアメリカ合衆国にって戦後の安全保障がなされました。朝鮮の皆さんがいかに否定しようが歴史的事実です。つまり、韓国という国は「棚ぼた式に国のフレームが決まった国」なのです。
朝鮮人自らの手で「独立国」を勝ち取ったことが史上なく、そのため「自身のアイデンティーが自分でもよく分からない」のです。
だから「自由主義陣営国である」覚悟がいつまでたってもできません。自分たちが勝ち取ったものではないから、自由民主主義が骨がらみになってはいないのです。
尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが大統領就任式で「自由」を連呼した理由はそのためです。韓国の皆さんには響かなかったかもしれませんが、彼は「自由民主主義に立脚しないでどうするのか」と韓国のアイデンティティーを国民に問うたのです。
その尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が韓国で支持を失っています。
先の総選挙で判明したのは――韓国に住む人がいかに近視眼的で、かつ自分たちが立脚している(はずの)自由民主主義を自分たちで守ろうとしなか――ということです。
ポピュリストかつ有罪判決が出ている犯罪者を国会議員に選んでなんら恥じるところがなく、論点が「検察独裁を許すな」や「金建希(キム・ゴンヒ)を特別検察に調査させろ」etcでした。
社会主義者である曹国(チョ・グク)さんを「かわいそう」「検察独裁の被害者(いや家族ぐるみでカンニングをやってるんだってば!)」などという理由で国会議員にしたのがまさに象徴的な所業です。
日本も合衆国も「あてにならない国」を「味方」と認識するのは危険です。合衆国はもちろんそれを理解していますが、日本はどうでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)