イギリスがCPTPPに加盟し、次は中国、台湾の加盟問題について議論しなければなりません。中国がCPTPP加盟を促進しているのは、台湾より先に加盟して台湾の邪魔をしたいからです。
台湾の加盟を邪魔するために中国が姑息な手を使っているという記事を『Radio Free Asia』が出しています。同紙はかなり傾いたメディアなのですが、実際に行っているとすれば中国は姑息という他ありません。
CPTPPに加盟したい国(および地域)は、いきなりCPTPPの議論の俎上に上がるのではなく、前もって加盟各国と議論しておくことを奨励しています。
つまり、CPTPPの全体会議で揉める(しかも長引く)のも面倒なので、先にナシを通しておいてくれ――というわけです。面白いのは、これがあくまでも「奨励」であることです。
『Radio Free Asia』の報道によれば――中国の働きかけによって一部の加盟国が、「全ての加盟国と先に話し合う必要がある」と主張し、台湾との接触を拒否している――というのです。
「全ての加盟国と話し合うべきだが、オレはあんたと話し合いたくない」とされると、その時点で台湾の加盟への話が進まなくなってしまいます。「必須」ではないので、そんな意見は無視してCPTPPが台湾加盟について議論すればいいのですが、中国としては「絶対に負けられない戦い」なので、このような姑息な手をも使うのでしょう(報道が事実だとして)。
今年の議長国はカナダですので、『Radio Free Asia』は「カナダが議長国としてのリーダーシップを発揮しなければならない」と意見しています。
もっとも、中国がいかに台湾加盟を妨害しようが、中国自身が加盟できるとはとても考えられません。CPTPPの原則を全く順守した国ではないからです。
『カナダ国際問題研究所』は「Canada’s CPTPP Leadership in 2024: Managing the Rival Accession Bids of China and Taiwan(2024年のカナダのCPTPPリーダーシップ:ライバルである中国と台湾の加盟入札を管理する)」といリポートの中で、中国加盟の問題点について以下のように書いています。
(前略)
しかし、CPTPP加盟国は中国の加盟を慎重に検討すべきである。CPTPPへの加盟を目指す国は、その高い基準を満たさなければならない。しかし、中国の現在の政策や慣行は、以下のようなCPTPPの条項の多くと相容れない:
・国有企業の活動制限と国有企業への補助金
・国境を越えたデータの流れの保護、データのローカライゼーション要件の制限、市場参入のための企業ソースコードの強制移転の禁止
・政府調達を外国との競争に開放するための要件
・国内企業と外国企業との差別の禁止、外国企業や外国製品の取り扱いの透明性と公平性の要件
・労働権の保護
・有害な漁業補助金の禁止例えば、CPTPPには強制力のある労働者の権利と義務が含まれている。
参加国は、強制労働の禁止を含む国際労働機関の中核的な労働の権利と原則を遵守することが求められる。新疆ウイグル自治区での強制労働を含む中国の深刻な人権侵害を考えると、これは中国が協定に参加するための大きな障壁となる。
中国の現在の慣行とCPTPPの基準には大きな隔たりがある。
中国は、自国の経済運営に対するアプローチを根本的に見直さなければ、CPTPPの要件を満たすことはできないだろう。
また、『WTO』(World Trade Organizationの略:世界貿易機関)のような他の協定を遵守した実績が乏しいことから、北京がその約束を守ることを信頼できるかどうか疑問視するのは当然である。
(後略)
CPTPPが掲げる高い規範について中国はなんら満たしていません。
もう何度だっていいますが、中国は『WTO』加盟時にした約束を一切守っていません。CPTPPについても、『WTO』に加盟したときを同じく、「とにかく加盟しちゃえば後からなんとでもなる」と考えているのです。
絶対に中国をCPTPPに加盟させてはなりません。中国は無法者で覇権主義国家です。CPTPPは『WTO』に代わる重要な貿易規範となる可能性があり、これを『WTO』のような中国に破壊させるわけにはいかないのです。
(吉田ハンチング@dcp)