先の記事で、韓国が現在締結している(としている)通貨スワップ協定が危機時には恐らく足りないと記述しましたが、そう推測できる理由です。
アラン・グリーンスパン元FRB議長が述懐したように、1997年のアジア通貨危機時に韓国はIMFから総額「550億ドル」の金融支援を受けています。
この550億ドルという金額には諸説あるのですが(諸々の手段で追加支援された金額もある)、とりあえずグリーンスパンさんが回顧録『波乱の時代 -わが半生とFRB-』に記した数字をそのまま使います。
このような途方もない金額の支援が必要だったのは、韓国が公表していた外貨準備高がウソで、蓋を開けてみたら「なかった」せいですが、1997年当時の韓国のGDPは5,575億ドルでした。この経済規模の国の危機を救うために550億ドルが必要だったのです。
GDP比で計算するだけでも全然足りないんですよ
しかし、現在韓国のGDPは2018年で1兆6,194.24億ドルです(データ出典は『世界銀行』統計/2019年の数字は2020年02月05日現在なし)。乱暴な計算ですが、1997年と2018年では経済規模が2.90倍に拡大しています。
単純にGDP比で考えても、経済危機がまた韓国を襲った場合必要になる支援金額は、550億ドルの2.90倍で「約1,597億ドル」です。ざっくり1,600億ドルですね。
韓国メディアは通貨スワップ協定によって(最大融通枠で)「約1,328億ドル」調達可能と号していますが、先の記事でもご紹介したとおり緊急時になんとかなる金額は「約973.42億ドル」です(ただし時価なので変動することに注意してください/プラス筆者(バカ)の計算によります)。
必要な金額:約1,597億ドル
調達可能額:約973.42億ドル
なので、この時点で約623.58億ドル足りませんね。
では韓国の外貨準備がアテになるかというと、先の記事でもご紹介しましたが、2020年01月末時点で現金たるDeposit(預金)は「203億ドル」しかないのです。
ですから、
必要な金額:約1,597億ドル
調達可能額:約973.42億ドル
外貨準備のDeposit(預金):約203億ドル
で「約420億ドル足りない」に戻ります。
この足りない分は、外貨準備で保有しているアメリカ合衆国公債「1,172億ドル」(11月末時点の数字です)で何とかしなければならないわけですが、さあ果たして合衆国は売却させてくれるでしょうか?
不可能です。このような巨額な合衆国公債が売りに出されたら世界的に市場が大混乱しますから。大賢人エミン・ユルマズさんが指摘するとおり、合衆国公債を購入するというのは「合衆国と仲良くしてもらう」ためのデポジットのようなものと考えるのが至当です。
ですから、保有する合衆国公債を担保にしてお金を調達するしか韓国政府にはありません。このような交渉が(金額も大きいので)緊急時にスグまとまるわけはありません。
では、外貨準備に含めている合衆国公債以外の約2,700億ドル分のSecurities(証券類)は使えるでしょうか? こちらこそ中身が何なのか全く分からないもの(韓国銀行が内訳を公表していないため中身が不明)で緊急時にすぐにお金に換えられるかどうか分かりません。
ですから先ほどの「約420億ドル」に戻ります。
ね、全然足りませんでしょう?
韓国政府が危機時に自前でなんとかしたいと思うなら、恐らくあと1,000億ドル分ぐらいは調達できるスキームが必要です。
2017年09月に韓国の『毎日経済新聞』に「危機の時に必要な外貨を緊急カバーするには概ね1,000億ドル以上不足している」という識者の発言を取り上げた記事が掲載されましたが、韓国の危機時への備えはその時から変わってはいないのです。
脆弱(ぜいじゃく)なままなのです。恐らく。
⇒参照・引用元:『news.naver.com』「外貨準備高3,848億ドル 金融危機近づく時は安心できず ドル中心決済の構造変えるべき(原文韓国語:筆者意訳)」
https://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=101&oid=009&aid=0004023313
追記その02
1997年に通貨危機時に韓国が必要としたお金はIMFなど国際期間による支援パッケージだけではありません。上記の計算はあくまでもIMF支援によるものだけですが、実際には20兆円以上が必要だったのではないか、という記事を制作いたしました。
もしご興味がありましたら以下の記事もご覧いただけたら、と存じます。何卒よろしくお願いいたします。
追記その01
上の『毎日経済新聞』の記事に出てくる識者の意見について以下の記事にまとめました。併せて読んでいただければ幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
(柏ケミカル@dcp)