こういうも一種の取り付け騒ぎというのでしょうか。
2024年07月26日、『TMON』というインターネット通販会社の韓国本社に多くの人が抗議に詰めかけました。
この『TMON』は、『Qoo10』というシンガポールに本拠地を置く企業の関連会社です。
今回、韓国で問題になっているのは通販サイト『TMON』と『ウィメプ』(wemakeprice)で決済が遅延したため※です。両方とも上記『Qoo10』関連会社で、『Qoo10』の創業者はク・ヨンベという韓国人です(下掲写真)。
※2024年07月23日夕刻からクレジットカードによる決済・払い戻しが全て中断。銀行圏では『TMON』『ウィメプ』の取引先に対する「販売代金の先払いサービス(融資)」を停止しました。
これらの通販サイトはどちらも通販仲介業者であって、実際の通販を行うのは「販売業者」です。つまり、通販サイトに出店した販売業者は消費者に商品を購入してもらい商品を発送、『TMON』と『ウィメプ』は仲介手数料を抜くというビジネスモデルです。
また、このク・ヨンベという人物は韓国のEコマースを発展させた立志伝中の人物となっています。――というのは、1998年に韓国内初のインターネットオークションサイトを設立、これが『Gmarket』につながり成功させた実績を持つからです(Gmarketは2000年に設立)。
2007年には『Gmarket』は韓国初のモバイルショッピングをオープンしています。しかし、『Gmarket』は後に売却されています(『eBay』へ売却し、その後『新世界グループ』へ売却されています)。
今回の『TMON』『ウィメプ』の決済遅延は、ひとえに『Qoo10』が資金不足に陥っているためです。
ク・ヨンベさんは事業を拡大するのにご執心で国内外Eコマース事業を相次いで買収してきました。そのために資金がありません。
『TMON』『ウィメプ』は共に資本総計がマイナスで債務超過状況です。『TMON』は2024年04月締め切りだった2023年度の監査報告書も提出していません。
700億ぐらい調達しても焼け石に水
決済が遅延すると、販売業者、消費者の両方に迷惑が掛かります。決済金額を受け取っていない一部の販売者および購入したはずの商品が一方的にキャンセルされ、払い戻しを受けとっていない消費者は怒り心頭です。
販売業者からすれば「金払え」ですし、消費者からすれば「金返せ」です。
世にもあほらしい話ですが、(仕方がないので)韓国の金融当局も事態を注視しています。韓国メディア『朝鮮日報』は、韓国当局者からの談話を取ったとして、以下のよう書いています。
(前略)
金融業界によると、『Qoo10』側は今回の事態を解決するため、来月中に5,000万ドルを海外系列会社である『Wish』を通じて調達するという案を金融当局に提示したという。『Wish』は北米地域に基盤を置いたeコマース企業で、『Qoo10』は去る2月に2,300億ウォンを投じて同社を買収した。
しかし、このように700億ウォンを調達しても事態を収拾するには不十分な見通しだ。
22日現在、金融当局が把握した未決済額は『TMON』1,097億ウォン(750社)、『ウィメプ』565億ウォン(195社)水準だ。
これは05月に発生した取引代金で、08~09月中に決済が予定されている06~07月の取引代金と消費者への返金額まで考慮すると、数千億ウォンの資金が必要になると予想される。
金融当局の関係者は「そもそも『Qoo10』が具体的な資金調達計画を明らかにしたわけでもなく、たとえ700億ウォンを調達しても当然解決できない」と話した。
(後略)
未決済額が、
2024年05月時点
『TMON』:1,097億ウォン
『ウィメプ』:565億ウォン
小計:1,667億ウォン
と当局が把握しているとのこと。調達するという「5,000万ドル」は、2024年07月28日のレートで「約692億4,350万ウォン」ですから、05月時点での未決済金額の「約41.5%」に過ぎず、全然足りません。
もうすでに07月が終わりかけていますが、当局関係者のいうとおり「06・07月の取引代金」まで考慮するなら、さらなる資金が調達できないと、とてもではないですが未決済分は解消できないでしょう。
――ということで韓国の『Qoo10』『ウィメプ』は事実上の破綻ではないのか――というわけです。
※念のために付記しますが、日本で営業されている『Qoo10』については2018年08月01日から『eBay』グループの100%出資子会社となっているため、資本関係が切れており韓国の騒動とは関係ありません。2024年07月26日12:42付けで『eBayJapan合同会社』が以下のようにプレスリリースを出しています。
一緒にしないでくださいね――というわけです。
(吉田ハンチング@dcp)