2025年02月25日、韓国通過金融委員会が基準金利を0.25%下げ、「2.75%」にすると決定しました。
毎度おなじみですが、『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が会合後の記者会見に出席。記者からの質問に応じました。
この記者との質疑応答の中に非常に面白い発言があります。以下に引用してみます。
↑李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の「オレ、バカ嫌い」の顔。
質問:成長回復のために財政政策の支援が必要だと考えるか
李総裁:1.5%今年の経済成長率予測にはすでに金利低下を反映しているので、1.5%以上の経済成長率が必要であれば、財政政策との協調が当然必要だ。
財政政策がないからといって、金利を予想以上に下げれば、為替レートや物価、家計負債など、私たちが大切にしてきた金融安定基調が脅かされる可能性がある。
金利だけですべての景気問題を解決することは望ましくない。
質問:李総裁が20兆ウォンの補正予算を提案したが、これを超えると金利政策にも影響するのか。
李総裁:15兆~20兆ウォン程度(補正予算で財政出動)すれば、経済成長率を0.2%ポイント程度上げる効果がある。
今年の成長率見通しの1.5%が1.7%程度になる効果だ。
それ以上の規模で行うのは財政の健全性を考慮すると、副作用がより大きい。
補正予算は短期的に成長率が低下したときに補完する役割であって、鎮痛剤(補正予算)を使って昔のように飛び跳ねさせるのは多くの副作用を引き起こすと思う。
財政政策で景気を浮揚させる効果は、来年になればマイナス(-)になる。成長率が低下した原因は構造的に解決するべきだという哲学を持って補正予算を組んでほしい。
質問:市場には今年の成長率を韓銀の見通し(1.5%)よりも低く見る見方もある。
李総裁:1.5%はかなりニュートラル(中立的)な成長率だと思う。
海外の投資銀行(IB:Invest Bank)のうち、1.5%より低く予測したところを見ると、アメリカ合衆国の関税効果などを反映している。
補正予算も数カ月以内に発表すれば成長率の上方要因として作用する可能性があり、トランプ政策も成長率に上下のリスクがある。1.5%の見通しは上下の要因もあり、不確実性が大きい。
質問:来年の経済成長率の見通しは1.8%だが、非常に低い。
李総裁:来年度の経済成長率1.8%はまともな成長率だ。
世界的に景気が難しいのに、私たちの潜在成長率が単独で成長できるとは思わない。
今、私たちは構造調整を行わず、既存の産業だけに依存しているが、その産業が中国に多くの競争力を持っている。
高齢化している社会で海外労働者は流入せず、労働力は減少し続ける。1.8%の成長率は受け入れなければならないし、これが私たちの実力だ。
より高い成長をするには構造調整をしなければならない。
質問:合衆国の関税政策が韓国の潜在成長率に及ぼす影響は構造的なものか。
李総裁:過去3~4年間、純輸出の経済への貢献度はほぼゼロだった。
輸出競争力の低下により、かつてのような輸出中心の『トリクルダウン効果(波及効果)』は期待できない時代となった。新産業の導入を怠った結果、問題が深刻化している。
新しい産業が登場しない限り、既存産業に対する関税効果に非常に大きな影響を受ける可能性がある。
新しい産業が登場しない限り、解決方法がない。
韓国政府が最も痛感しなければならないのは、過去10年間、新しい産業が導入されなかったことだ。
新しい産業を導入するには創造的な破壊が必要で、誰かが苦痛を受けなければならないが、その社会的な葛藤に耐えられず、あれこれ避けていたら、新しい産業が一つも導入されなかった。
問題を解決しない限り、このような問題は繰り返される。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、捨てるところのない非常に示唆に富む回答をしています。
この質疑応答のは白眉は「2025年のGDP成長率が1.8%は低すぎないか?」という質問に対して、「これが韓国の実力だ」ときっぱり切って捨てた点です。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、さすが『IMF』でアジア太平洋局長を務めただけあって、韓国人にありがちな「韓国スゴイ・自画自賛病」ではありません。
「(いくら低いと思おうが)受け入れなければならない」としました。
また「韓国政府が最も痛感しなければならないのは、過去10年間、新しい産業が導入されなかったことだ」という指摘がいかに急所を突いたものであることか――です。
しかも「痛くないように」と「創造のための破壊」を避けてきたために、新しいものが全く生まれなかったじゃないか!――というのは痛烈な指摘です。
これは経済だけではなく、韓国政治にもハマる指摘でしょう。現在韓国の国会で行われているのは、まさに「これ」です。
韓国メディアは気づかないかもしれませんが、実は李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の「過去3~4年間、純輸出の経済への貢献度はほぼゼロだった」という言及こそ、韓国人が最も考えなければならない点です。
純輸出が経済に貢献しないとすれば、何をすればいいのでしょうか? これこそが「現在も輸出も依存している韓国」が解かねばならない問題なのです。
こういう頭のイイ人こそが、本当に貴重な宝物です。李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の任期も残り少なくなってきました。韓国にとってはとても残念なことですね。
(吉田ハンチング@dcp)