韓国ウォッチャーからすると「まだやっているのか」な案件です。
韓国は昔から(よせばいいのに)外国のインフラ事業にいっちょがみしては「おから工事」を行い、その国に迷惑をかけてきた歴史があります。
事業費を中抜きしては自国の不動産にお金を突っ込んで懐を温めるというのが伝統芸です。
これは70年代からやっていて、Money1でもご紹介したとおり、最初は中東建設ブームでした。
今回ご紹介するのは、「ベトナム」における「ダナン~クアンガイ高速道路」。「ああ。アレか」と思われるのは古参の方でしょう。
ベトナムから高速道路建設を一部請け負って……
2024年09月、韓国の最大手と言っても建設会社『ロッテ建設』『ポスコ E&C』が大変な目に遭っており、大変愉快な状況です。
この案件も古く、2013年にさかのぼります。
2013年
『VEC』(Vietnam Expressway Corporationの略:ベトナム高速道路公社)から受注
『ロッテ建設』6,200万ドル/『ポスコ E&C』4,869万ドル
2018年
開通
「ダナン~クアンガイ高速道路」は、非常に重要な幹線道路で、全長は139km。
第1期(ダナン~同地方クアンナム省タムキー市区間):65km
第2期(タムキー市~クアンガイ省区間):74km
で構成され、2018年に全線が開通しています。
開通後1年たっておから工事が発覚!
↑メインのレーンの横の部分が妙にぐにゃぐにゃしていると思われないでしょうか?
ところが開通、運行開始直後から「!」という箇所が発覚し、14カ月後には「あまりにも工事の品質が低すぎないか」というオンボロぶりが発覚。
↑高速道路にできたポットホールを埋めるベトナム作業員の皆さん。
路面に多数のポットホール(道路の表面にできた壺状のくぼみ)が発生した他、雨季に橋梁で漏水などによる損傷が相次いで見つかり、建設と検収の段階で深刻な違反があったことが確認されました。
あまりにひどいので、ベトナム公安省(Ministry of Public Security)が調査を行った結果、2020年に「路面の低品質」などをポットホールや漏水の原因としました。つまり「おから工事」認定です。
ベトナム政府は建設費を支払わず賠償金を取るつもり!
ベトナム政府は、このおから工事の責任を取らせることにして、請負会社を告訴。
2023年10月27日、民事責任について、裁判所は第2期の請負業者5社に対し、VECに4,600億ベトナムドン(約28億円)の賠償を支払うよう命じました。5社というのは――、
『第1建設』(CC1:Construction Corporation No1)
中国・山東省の建設会社
中国・江蘇省の建設会社
『ロッテ建設』
『POSCO建設』(ポスコ E&C)
――です。きっちり韓国企業も入っていますね。
この「おから工事」に頭にきたベトナム側は建設費を支払わず、賠償金を要求。
韓国企業は「これは堪らん」と、2021年に『ICC』(国際商業会議所)に国際仲裁を申請しました。結果、韓国企業に建設費を支払うべし――という以下のように判断を下しました。
『ICC』の判決
2023年10月
「『VEC』は『ロッテ建設』に86億ウォンを支払うべき」2024年02月
「『VEC』が『ポスコ』に99億ウォンを支払うべき」
ところが、ベトナムはこの『ICC』判決をガン無視(笑)。
2023年10月、ベトナムの裁判所の一審では『VEC』が勝訴します。韓国企業は賠償金を支払わなくてはならなくなりました。
ここまでは韓国ウォッチャーの皆さんならご存じかもしれません。
さらに2024年06月、ベトナムの裁判所は二審でも『VEC』の勝訴判決を出しました。
また敗訴したのです。
『ICC』の判決はどうなったかというと――ベトナム大使館が仲裁判決文に対する領事認証を拒否しているので、『ICC』の判決がベトナム国内で効力を発揮できない――のです。
傑作としかいいようがない事態です。
発注元の『VCE』は建設費をびた一文払っていません。つまり、『ロッテ建設』『ポスコ E&C』にとっては未収金です。その上、賠償金までむしられそうなのです。
ベトナムはどこまで突っぱねられるか?
――で、2024年09月、韓国メディアにも「『ロッテ建設』と『ポスコ E&C』が苦境に陥っている」という記事が出た次第です。
本件のステータスがどうなっているかというと――「韓国の建設会社と『VEC』の間で、ICC仲裁件–ベトナム裁判所判決について詳細な処理方法を協議中」――とのこと。
おから工事のオンボロ高速道路をつかまされたベトナムの気持ちも分かりますが、国同士の関係もありますので、ベトナム側がどこまで『ICC』の判決を突っぱねられるかが見ものです。
(吉田ハンチング@dcp)