「韓国経済をひどい目に遭わせた人物」がいまだ政府系のシンクタンクのTopにいるのはいかがなものか、と首相がお怒りです。
2022年06月30日、韓国の韓悳洙(ハン・ドクス)国務総理(=首相)が「所得主導成長を打ち立てた人物が『韓国開発研究院』(以降、KDI)院長の座に就いているのはあり得ない」とコメント。
韓悳洙(ハン・ドクス)首相が政府系シンクタンクのトップに「遠まわし」(?)ながら辞任を求めた、として注目を集めました。
前政権で経済政策に失敗した洪長杓
この「所得主導成長を打ち立てた人物」は洪長杓(ホン・チャンピョ)という人です。
洪さんはもともとは学者ですが、文在寅前大統領時代に経済主席秘書官に就任し経済政策の立案や補佐を担当。文政権が展開した「所得主導成長」なる政策は、洪氏の理論に裏付けされたものでした。
ところが、皆さんもご存じのとおり「所得主導成長」は大失敗に終わります。
それもそのはず。一般的に所得を引き上げるには、まず賃金を支払う企業が潤わないといけません。企業が十分なお金を支払えるようになって、初めてお給料も上がるのです。
ところが、洪氏の理論は「まず何よりも所得アップだー!」と、賃金アップを先に行うという常識破りのものいでした。所得が上がれば消費が増え、企業が潤う。
企業が潤えば景気も良くなり、賃金も増え……という具合に良いサイクルが回ると見込んだのです。
しかし、これは考え落ちな理論でした。
台所事情は変わらないのに、高い賃金だけ要求されては企業はたまったものではありません。
「賃金を上げろ!」と最低賃金を無理やりに上げた結果……雇用が激減しました。これは当然のことで、その最低賃金を支払えない企業が雇用を切らざるを得なかったからです。
洪さんの理論には「因果関係が逆だろ」と識者から総ツッコミが入りましたが、構わずに政策を推し進めた結果、韓国経済を混乱させる大惨事を引き起こしました。
この政策で何が起こったのかは以下の記事で詳しくまとめています。
韓首相は遠まわしに辞任を求める
洪さんは政策失敗の責任を負う形(政権内部での主導権争いもあった)で退官しますが、その行き先が先述のように『KDI』の院長でした。
政府系シンクタンクのトップに就いた洪さんですが、就任後のインタビューで「所得主導経済」について「それなりの成果は収めた」「半分は成功した」「結果を出すのは簡単ではない」などと、政策を擁護。
挙げ句の果てには「あの政策は私の設計ではない。設計に参加しただけ」と、他人事のように語り話題となりました。まったく反省の色がありません(以下記事を参照してください)。
話は冒頭に戻りますが、このような人物が、いまだに政府系シンクタンクの院長を務めるのはおかしいと、韓首相は苦言を呈したのです。
これは当たり前のことでしょう。
新政権としても、前政権時の「負の遺産」はできるだけ排除したいのかもしれません。首相からの圧力に対し、洪さんがどのように反応するのか注目です。
(大西トタン@dcp)