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ロシアは新しい国際決済システム「BRICs Bridge」を進めたい。SWIFTから蹴り出されたから

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2024年10月22~24日の日程で、BRICs首脳会議が開催されました。場所は、ロシア中部タタルスタン共和国のカザンです。

今回の参加国は、

ブラジル
ロシア
インド
中国
南アフリカ
イラン
エジプト
UAE
エチオピア

の9カ国です。


↑なんだかCGみたな肌つやのプーチン大統領。

今回は、ロシアのお膝元ということで、プーチン大統領も逮捕の心配なく参加しています。

注目されているのは、ロシアがプッシュしている「BRICs Bridge(ブリックス・ブリッジ)」という国際間の決済システムが進められるか?――です。

ウクライナに無法に攻め込んだロシアは、その制裁として国際決済システムSWIFT(スイフト)から蹴り出されました(2022年02月26日)。

【速報】ロシアをSWIFTから排除! ロシアの輸出入を遮断し、外貨準備6,300億ドルも麻痺させる
詰め用の大駒が繰り出されました。2022年02月26日、アメリカ合衆国、イギリス、EUなどは共同声明を発表。『ロシア連邦中央銀行』を含む複数の銀行をSWIFTから排除するとしました。ウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエン欧州委員会委...

これによって、ロシアの銀行は基本的にSWIFTを通じた国際間決済ができなくなりました。

1.ロシアの輸出入を事実上遮断
2.ロシアの中央銀行の資産を麻痺させる
(取引は凍結、中央銀行が資産を清算することを不可能にする)
3.ロシアのオリガルヒが欧米市場で金融資産を利用することを禁止

という狙いがあった措置でした。

ロシアは確かに金融面で苦境に立たされ、今も困っていますが、この封鎖によってロシアの継戦能力を完全に奪うことはできていません。

そこでロシアが進めたいプランが、新たな国際間の決済システムを(少なくとも)BIRCs内で構築して、資金の移動を自由に行いたい――という目論見。これが「BRICs Bridge」です。

「BRICs Bridge」って何?

「BRICs Bridge」は、『ロシア連邦中央銀行』の「ロシアは2024年BRICS議長国」HPによると、

「中央銀行デジタル通貨(CBDC)や非現金資金、デジタル金融資産を使用して国境を越えた決済を実行するために、ISO20022規格を実装するプラットフォームを確立する」もの

となっています。

また同HPによれば、加盟各国の中央銀行は2024年04月に「BRICs Bridge」の創設に向け調整会議を開催。

この会議において、

1.「BRICs Bridge」による決済
2.決済のインフラ造成
3.加盟各国の通貨準備メカニズム改善
4.マクロ経済
5.情報セキュリティー
5.フィンテック
etc.
などを議論したとのこと。

ロシア側は早くなんとかしたい――と焦っている様子が伺えます。

上掲のとおり、2024年08月01日付の『タス通信』によると、以下のように書いています。

「もしこれがうまくいけば、世界にとって、最高の意味での衝撃となるだろう」とロシア連邦議会のワレンチナ・マトビエンコ上院議長は指摘した。

彼女は、この問題が10月にカザンで開催されるBRICs首脳会議で検討されることを希望していると述べた。

恐らくその時承認されるだろう。

あるいは少なくとも議論はいつ、どのような形式で最終決定すべきかの決定につながるだろう。

つまり、これはもはや単なるアイデアではなく、実際に前進しているということだ」と彼女は強調した。
(後略)

という具合に、今回のBRICs首脳会議で「BRICs Bridge」創設が決定されることを希望しているのです。

中国、インドなどの反応はどうなるか?

SWIFTから蹴り出され、現在も無法な戦争を続けている侵略者ロシアは「早くしてくれ」なのですが、他の国はどうるか?――です。

Money1でも以前に少しだけご紹介したことがありますが、中国は中国で独自の人民元ベース国際決済システム「CIPS」を推進してきました。

このCIPSは、「Cross-Border Interbank Payment System」の略で「中国人民元国際決済システム」と訳されます。

2015年に中国が立ち上げたこのシステムは、人民元による国際決済の促進を目的としています。主な役割は、人民元での貿易決済や資金移動を効率化することで、ドルへの依存を軽減し、中国の金融主権を強化することです。

人民元の国際化」の旗印の下、推進されたものといえます。CIPSは、SWIFTとの連携も可能で、現在多くの海外銀行が参加しています。

「BRICs Bridge」が成立してもCIPSは同様に補完システムとして機能することになりそうです。

「BRICs Bridge」がどういうシステムになるのか、詳細はまだ不明ですが、BRICs内で使うにしても、人民元、ルーブル、インドルピー、ブラジル・レアル、ランドが入り乱れて決済されることになります。

「BRICs Bridge」ができるとして、決済通貨の重みはけっこう重要で、経済規模からいっても人民元決済が大きくなると予測できます。なにせ中国は、世界からハミ子にされたロシアにつけこんで(ポンコツな)電気自動車などを大量輸出し、ホクホクしています。

人民元が支配的通貨になるのを忌避する国も出るでしょう。恐らく「脱ドル化」についてはどの国も異論はないのですが、「決済通貨は人民元で」というふうに縛られるのは御免なはず。

インドはその代表格です。国境を接し、何かと揉め事の多い中国の通貨が決済通貨になったりしたら最悪ですから、これを避けるのは当然です。

そのため「利用通貨については、BRICSの決定が拘束力を持たないようにする(すなわち、決済通貨を選択可能にする)ことを目論んでいる節がある――とのこと(『JETRO』調査部・大久保敦主幹の分析より引用)。

もちろん、このような動きは金融覇権を握っているアメリカ合衆国などにとっては愉快なものではありません。

――というわけですので、ぜひ「BRICs Bridge」にもご注目ください。

(吉田ハンチング@dcp)

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