韓国の「潜在成長率」は年々低下してきている――といわれます。
潜在成長率とは――、
「労働力・資本・生産性を活用して、インフレ(物価上昇)を誘発することなく、最大限に達成できる経済成長率の見通し」
――をいいます。
潜在成長率が下がるということは、経済が「持続可能な成長を遂げる能力」が低下していることを意味します。そもそも経済成長が難しくなってきたことを示しています。
2024年12月19日に『韓国銀行』が「BOKイシューノート[第2024-33号]韓国経済の潜在成長率と今後の展望」を公開しています。
これは『韓国銀行』の公式なプレスリリースではなく論文で、『韓国銀行』経済モデリング室 モデリング予測チームのイ・ウングョン課長、同チョン・ドンミン課長、キム・ジョンウク調査員、イ・ドンジェ調査員が執筆したものです。
このリポートは、「人口及び労働市場の構造変化などを考慮して、韓国経済の潜在成長率を再推定した」ものです。
『韓国銀行』経済モデリング室の現役メンバーが予測した、最新の「韓国の潜在成長率」というわけです。
以下が最も注目すべき「結論」です。
まず、紫色の潜在成長率のラインをご覧ください。
この最新の推計によっても、韓国の潜在成長率は確実な下落傾向にあります。
2001~2005年には「5.0%」あったものが、ずんずん下がった2024~2026年には「2.0%」まで下落すると予測されています。
6割減です。
興味深いのは、
・労働力
・資本
・生産性
の貢献度です。
2024~2026年には潜在成長率のうち資本投入が「55%」を占めます。2001~2005年は資本投入の占める割合は「44%」ですので、資本の投入が成長率を左右する割合が上がるのです。
労働力の投入の貢献度は、「2001~2005年:14%」から「2024~2026年:10%」に低下、全要素生産性は「2001~2005年:42%」から「2024~2026年:35%」に低下します。
韓国の人口はこれから急速に下落していくので、労働力を投入したくでもできなくなっていきます。
つまり、韓国経済の成長率を上げるためには、お金を突っ込んで、生産性を上げるしかない――というわけです。
このリポートは――、
改善された方法論を用いて推定した結果、我が国経済の潜在成長率は継続的に低下していることが明らかになった。
2000年代初頭には約5%に達していた潜在成長率は、2010年代に入ると3%台前半にまで低下し、さらに2016~2020年には2%台半ばに下がり、2024~2026年には約2%程度になると推定された。
このように潜在成長率が持続的に低下しているのは、生産可能人口の減少といった構造的な要因に加え、総要素生産性(TFP)および資本投資の増加傾向がいずれも鈍化していることが原因である。
※引用元は同上。
――と書いています。
また、処方箋として同リポートは以下のように述べています。
今後、潜在成長率を効果的に引き上げるためには、経済全体の構造改革を通じて生産性を向上させると同時に、予想される将来の経済構造の変化にも先手を打って対応していく必要がある。
そのためには、これまで進めてきた構造改革に関する研究結果を参考に、労働市場の非効率性を改善し、資源の効率的な配分を促進するとともに、企業の投資環境を改善し、革新的な企業を育成するなどして、経済全般の生産性を高めることが重要である。
また、少子化や高齢化による労働供給の鈍化速度を緩和するため、首都圏への集中を緩和し、仕事と家庭の両立を支援する政策を積極的に実施する必要がある。さらに、女性や高齢者の生産性向上に向けた多角的な政策的努力を行うことも求められる。
※引用元は同上。
「革新的な企業を育成するなど」と書いていますが、育成してできるか――は分かりません。また、外華内貧で外面が格好いいところばかりに特化したため、日本のように基礎技術の蓄積が企業にはないのです。そんなに都合良く革新的な企業など出るでしょうか。
また韓国というのは、全く協力的でない労働組合などのため、そもそも生産性が高い国ではないのです。
生産性を「これから」高めるというのは可能でしょうか。お手並み拝見です。
(吉田ハンチング@dcp)