「友達は友達をアメリカには行かせない」

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ノーベル経済学賞を受賞したことのあるポール・クルーグマン先生が大変に面白い原稿を書いていらっしゃいます。タイトルは「無法国家 友達は友達をアメリカには行かせない」です。

一部を以下に引いてみます。

今日は比較的短い投稿で、皆さんが聞いたことがないかもしれない話に関するものです。

しかしこれは非常に重要な話であり、事実上、重大な国際的危機に相当する可能性すらあります。

ご存じのとおり、ゼネラル・モーターズ(GM)はメキシコで工場コンプレックスを建設していました。

しかし先週、メキシコ政府の捜査官がその施設に押し入り、プロジェクトに従事していた数百人の合衆国市民を逮捕し、彼らがメキシコに不法滞在していると主張しました。

多く、恐らく大半は実際には合法的にそこにいたのですが、捜査官が英語を話さなかったために、それを説明するのに苦労したのです。

その結果、これらの合衆国市民は逮捕されました。

そして逮捕されただけでなく、彼らは鎖につながれ、劣悪な環境の下で投獄されたのです。

メキシコ政府がようやく自らの過ちに気付いたとき、合衆国市民を帰国させましたが、出発空港に到着するまで彼らを鎖につないだままでした。

信じられないことに、メキシコ大統領は当初この摘発を支持し、その後も起きたことについて全面的な謝罪をする礼儀を見せたことは一度もありません。


さて、この話に聞き覚えがないとすれば、私がいくつか事実を入れ替えたからかもしれません。

これはゼネラル・モーターズのプロジェクトではなく、韓国の自動車会社『現代』が建設していたバッテリー工場でした。

出来事はメキシコではなく、合衆国、それもジョージア州で起きました。

逮捕された従業員は合衆国の市民ではなく韓国市民であり、襲撃を行った『ICE』(移民・関税執行局)の職員が韓国語を話さなかったため、意思疎通ができなかったのです。

しかしそれ以外の点は、私が説明した通りのことが実際に起きたのです。

私がこの“身元入れ替え”をした理由は、もし海外でビジネスを行おうとしている合衆国人にこうしたことが起きたら、われわれはどのように反応するかを読者に想像してもらいたかったからです。

そこには憤激の波が起こり、報復を求める声が上がり―もしかするとメキシコに侵攻せよという要求すらあったかもしれません。

そして、多くの企業――合衆国企業だけでなく世界中の企業が、メキシコに投資する計画を再考したことでしょう。

誰が、訪問者が鎖につながれ投獄される危険に晒されるような無法国家でビジネスをしたいと思うでしょうか?
(後略)

⇒参照・引用元:「Friends don’t let friends visit America(友達は友達をアメリカに行かせない)」

メキシコの『GM』の工場で合衆国の市民が逮捕され……で始めて、メキシコ大統領は全面的な謝罪を全くしませんでした――と綴り、「あれ、そんな話あったっけ?」と思わせて、実は韓国『現代自動車』の工場でした――とひっくり返す。

皮肉屋のクルーグマン先生らしい書きっぷりです。

クルーグマン先生が指摘しているのは合衆国トランプ政権の欺瞞性です。

「トランプ政権が外国にしていることが、外国が合衆国にしていることだったら、どうだろうか?」と問うているのです。

クルーグマン先生は以下のようにも書いています。

(前略)
韓国はドナルド・トランプが言うところの「クソみたいな国(shithole country)」ではありません。事実、歴史上最大級の経済成功物語の一つであり、1960年代初頭にはハイチより貧しかった国が、今ではヨーロッパ並みの生活水準を持つに至ったのです。

(中略)

さらに韓国は、かつては重要な合衆国の同盟国でした。

つい最近まで両国関係は良好で、自由貿易協定を締結したほどでした。

しかしトランプはその協定を一方的に破棄し、なぜ合衆国の厳粛な約束がもはや意味を持たないのかの説明をしようともしませんでした。
(後略)

⇒参照・引用元:「Friends don’t let friends visit America(友達は友達をアメリカに行かせない)」

これは韓国だけにではありません。なぜEUや日本は、合衆国からカツアゲをされなければならないのでしょうか。

もはや合衆国とはどんな約束をしても無駄で、大統領の気まぐれでいつひっくり返されるか分からない――と不安にかられても当然です。

クルーグマン先生は以下のように結んでいます。

(前略)
しかし外交的・経済的余波は甚大なものになるでしょう。

トランプは、自らの政策によって「17マスク兆ドル」の外国投資を呼び込んだと主張していますが、これは合衆国が法治国家として正常に振る舞っていたとしても馬鹿げた数字です。

原文は“17 Musks trillion”で、Elon Musk(イーロン・マスク)さんを単位に使って皮肉を込めています。

『現代』の事件を考えれば、なおさら馬鹿げています。

私は経営者ではありませんが、もし多国籍企業の意思決定を担っていたとしたら、外国人が政府所属を名乗る覆面暴漢によって事実上誘拐されるかもしれない国に大規模投資をすることなど、極めて躊躇するでしょう。

あなたはどうか知りませんが、私ならそのような国を強く「クソみたいな国(shithole country)」と見なしたくなるでしょう。

⇒参照・引用元:「Friends don’t let friends visit America(友達は友達をアメリカに行かせない)」

クルーグマン先生はトランプ政権のやり口には批判的です。

(吉田ハンチング@dcp)

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