韓国は国政監査シーズンになっていますが、例によって政治の方は呆れるばかりの惨状で、恐らく読者の皆さまも気持ちが悪くなりますから、そちらは端折ります。
『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が、左派・進歩系アンポンタン集団が牛耳る国会でピシャリとやりましたので、そちらをご紹介します。
2025年10月20日、『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、国会企画財政委員会の韓『韓国銀行』に対する国政監査に出席。
この席で国会議員から「短期国債導入の必要性」を提起されましたが、これを即座に否定。
短期国債というのは満期が1年未満の政府発行の国庫債券(国債)です。政府は金利管理と財政調達の安定性を確保するために長期物を中心に発行してきました。
この短期国債発行について、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、
「短期国債を導入すれば、韓国銀行の通貨安定証券(通安債)と競合し、市場が分断される恐れがある」
「現在は短期債券の管理を通貨安定証券(通安債)を中心に運用し、政府の流動性管理は『韓国銀行』との借り入れを通じて解決するのが望ましい」
「構造上、1年・3年物の債券は通安債の後に中長期国債として区分されているため、技術的改善を通じて外部から同一の信用等級として認識されるよう制度改善が必要だ」
――と答えました。
簡単にいえば「ばっかじゃねーの」と言ったわけです。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の「短期は『韓国銀行』が管理する」の方が筋が通っています。確かに短期国債を導入するメリットのありますが、現段階で拙速に導入するのはやめた方がいい主な理由は以下の3点です。
1.市場分断と流動性希薄化の回避
短期国債を新設すると、同じ国家信用でも「政府=短期国債」と「中央銀行=通安債」で流動性が二分化します。
ベンチマークや先物・レポ担保、指値オペの対象が割れてしまい、マージン要求や在庫負担が増え、結局は調達コストを押し上げかねません。
2.財政コスト「見かけの」低下に注意が必要
通安債の利払いは『韓国銀行』の損益に反映され、最終的に国庫納付(剰余金)で相殺されます。
短期国債ができると利払いが「政府の表面コスト」になりますが、統合政府ベースでは必ずしも得になりません。単に負担の表示部分が移るだけ――というリスクがあります。
3.金融政策の即応性・明確性が損なわれる
通安債は準備過剰・不足の吸収に直結するツールです。
季節要因やショック時に、財政当局の発行計画と無関係に微調整できるのは金融政策の透明性・即応性の面で有利です。短期国債併存だと、短期金利シグナルが「誰の意図か」分かりにくくなります。
そもそも、なぜこんなことを言い出したのかに疑問があります。「資金調達に四苦八苦している韓国政府がより簡単に(短期の)資金を入手できる」ように言ってるのではあるまいな――です。
なにせ、何度もご紹介しているとおり、中央銀行から短借を繰り返してアップアップしているのが韓国政府です(そんな先進国はねえよ!なのです)。
いずれにせよ、資金調達で火の車な政府が短期債券を導入するというのなら、どのような建て付けで行うのか、発行ルールなどの厳格なフレームづくりが先でしょう。
そもそも発行目的を「流動性調整」なのか、「資金繰り支援」なのかを明確にしないと、短期債が恒常的な赤字補填手段に転落する可能性があります。
(吉田ハンチング@dcp)






